今年から始まった女子の国際大会で、WXV2でプレーするサクラフィフティーン女子日本がサモアに勝って初勝利を挙げた。

 一週間前の初戦を落として初勝利を目指す両チームの対戦で、日本は大型FWが揃う重量級のサモアを相手に守備で相手の出足を止める一方で、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれたSH阿部恵が「ボールを動かし続けて、テンポを意識していた」というボールさばきで、試合の流れを掴んだ。

 試合開始9分、サモアがSO Cassie SiatagaのPGで先制。20分に日本がSO大塚朱紗PGで追いついたが、サモアはその5分後にゴール前のラックからPR Rereglory Aionoが体格差を活かして突進すると、日本のダブルタックルをものともせずにトライを決め、コンバージョンも成功させて10-3とリードを奪った。

 しかし、日本は即座に反撃。FL長田いろはがステップで相手をかわしてインゴールに持ち込んでポスト裏で押さえ、大塚がコンバージョンを決めて同点とすると、前半終了目前に大塚がPGを成功させて13-10とリードを奪って前半を終えた。

後半は日本が立ち上がりから押し込む展開でトライチャンスを作り、後半6分にFL向来桜子がトライを決めて18-10と点差を広げた。

 サモアはペナルティが増え、後半15分にはFBのKarla Wright-Akeli、17分にはWTB Linda Fiafiaがそれぞれイエローカードを受けて13人に。数的不利のなかで粘りを見せたが、日本は後半24分にCTB弘津悠、同30分に途中出場の安藤菜緒がトライを決め、大塚のコンバージョンも決まって引き離した。

  キャプテンの長田は、「勝ち切れてうれしい。アタックでもディフェンスでも選手一人ひとりがチームに貢献して、特に守備で前に出て大きな相手を止めた」と笑顔を見せた。

重さと大きさのある相手に対して、「マインドの部分でしっかり前に出る、相手の勢いが出る前に止める、そして自分たちがやってきたことを徹底してやろうとチームで話していた」と明かし、「一人ひとりの貢献がチームに勢いを与えた」と喜んだ。

HO谷口琴美も重量差のある相手と組むスクラムについて、「ヒットスピードを意識して自分たちの強みの低さで組むことができた」と手ごたえを口にした。

 谷口は同時に、ラインアウトの修正点にも言及。後半21分までプレーして切れのある配給でチームの攻撃のペースを作った阿部も、「テンポ良くパスを出せたが、前回よりパスミスが多かった」と反省点に触れて、次の試合へ視線を向けていた。

レスリー・マッケンジー女子日本代表ヘッドコーチは、「守備は本当に良かったし、勝ちにふさわしい試合をした」と選手たちの戦いを称え、「先週のイタリア戦はナイーブさで自滅したところがあったが、そこから今週は準備してきたこと、特に守備の部分で良く発揮して我慢強く戦い抜いてくれた」と述べた。

一方、サモア代表のRamsey Tomokinoヘッドコーチは、「日本が圧倒してきて、我々がやりたいプレーをできなかった。期待したスクラムで相手を圧倒できず、ペナルティも多かった。ペナルティが多くては勝てない。それに、HIAで我々のキャプテンを早い時間で失って、リーダーシップを欠いたのも痛かった」と嘆いた。

南アフリカとの最終戦へ向けて、サモア指揮官は「大きな試合になる。改善して臨まなければならない」と話した。

 初勝利を手にした日本は4トライでボーナスポイントも獲得。勝点を5としてアメリカと並んだが、得失点差でアメリカを上回って3位に浮上した。アメリカはスコットランドに14-24で敗れて1勝1敗となり、スコットランドは2連勝で勝点を10として2位に付けている。

 スコットランドはWTB Francesca McGhie、LO Emma Wassell、WTB Rhona Llyodがそれぞれトライを決めて前半で17-7とリードを奪い、後半にもFB Chloe Rolieが5点を加えてアメリカの反撃を2トライ、2コンバージョンに抑えて勝利した。

 

イタリアがWXV2首位に

首位はイタリアで、南アフリカに36-18と勝利して、スコットランドとともにボーナスポイントを得ての2連勝となったが、得失点差で上回って首位に立った。5位のサモア、6位の南アフリカはともに2連敗となった。

初戦で日本に勝ったイタリアは、この試合でも好調を維持。試合開始4分でFB Vittoria Ostuni Minuzziが先制トライを奪うと、12分にはAura Muzzo、24分にはFL Alisa Ranucciniがそれぞれ5点ずつを加えるなどで前半で22-10のリードを奪い、後半にもHO Vittoria VecchiniとWTB Alyssa D’Incaが1トライずつをマーク。CTBのBeatrice Capomaggiがコンバージョン4本とPG1本を成功させた。

南アフリカは前後半に1トライずつを返したが、前半17分にCTB Veroeshka Grainがイエローカードを受け、後半10分にはNO8 Aseza Heleがレッドカードを受けて数的不利になる時間が長かった。

最終戦では日本は27日にスコットランドと、南アフリカとサモアはともに初勝利を懸けて対戦。イタリアはアメリカと28日に対戦する。

 

イングランドがオーストラリアに圧勝

WXV2と3に1週間遅れて、WXV1がニュージーランドで始まり、開幕戦に登場したイングランドがオーストラリアに42-7と圧勝で首位スタートを切った。

イングランドはキャプテンでFLのMarlie Packerの2トライなどFWを起点に攻撃を展開し、PR Hannah Botterman、SH Ella Wyrwas、WTB Jess Breach、CTB Megan Jones が5点ずつをマーク。SO Holly Aitchisonがすべてのコンバージョンを成功させた。

オーストラリアは後半14分に途中出場のAshley Marstersがトライを決めて、コンバージョンも成功させて7点を返したが、前半29分にイエローカードを受けたLO Annabelle Codeyが後半17分にも再びイエローカードを受けて退場となり、苦戦した。

カナダもウェールズに6トライを奪う猛攻で42-22と勝利で2位につけた。前半4分のNO8 Sophie de Goedeのトライを皮切りに、FL Sara SvobodaとFB Madison Grantが前半終了前に5点ずつ加点し、後半もPR McKinley Hunt、交代出場のGillian Boag、WTB Sarah-Maude Lachanceがトライを決めた。De Goedeは6本すべてのコンバージョンを成功させて、17得点を挙げる活躍でチームに貢献した。

 

ニュージーランドが黒星スタート

しかし、ホスト国のニュージーランドがフランスに17-18で敗れる波乱となった。

試合開始5分、モールで敵陣22メートル内に押し込んでいたニュージーランドだったが、パスをインターセプトしたフランスのWTB Emilie Boulardがインゴールまで走り切って先制した。

ニュージーランドは11分にFWで押し込んでNO8 Liana Mikaele-Tu’uが抑えて同点にしたが、フランスは再びバックスが躍動。ハーフウェイライン付近でパスを受けたWTB Cyrielle Banetが足を活かして5点を決めた。

このあとフランスはFB Morgane Bourgeoisが2本のPGを決め、ニュージーランドもFB Renee HolmesがPG 1本を成功させて点差を詰めたが、後半22分に交代出場していたChryss Vilikoが危険なプレーでレッドカードを受けて退場となり、一人少ない状況に。それでも後半30分にパスをつなぎ、WTB Ruby TuiのパスをWTB Katelyn Vahaakoloがインゴールで押さえてトライ。SO Ruahei Demantのコンバージョンも成功して1点差まで詰めたが、逆転には至らなかった。

フランスが勝点4で3位につけ、勝点1を手にしたニュージーランドは4位スタート。ウェールズが5位、オーストラリアは6位となった。

次戦は10月27日にイングランドとカナダが対戦。28日にニュージーランドとウェールズ、フランスとオーストラリアが対戦する。

 

WXV3はアイルランドがリード

 UAEのドバイで開催のWXV3は、アイルランドがコロンビアに64-3と圧勝し、スペインもフィジーに26-19で2連勝をマーク。カザフスタンはケニアに18-12で競り勝って今大会初勝利を手にした。

 この結果、2連勝で再びボーナスポイントも獲得したアイルランドが勝点を10に伸ばして首位に立ち、スペインが勝点9で2位。フィジーが勝点6で3位につけ、同じく1勝1敗としたカザフスタンは勝点4で4位。カザフスタンに敗れて2連敗となったものの勝点1を手にしたケニアが5位、コロンビアが6位となった。

 最終節では10月27日にカザフスタンとフィジー、ケニアとコロンビアが対戦し、28日にアイルランドとスペインが1位の座とWXV2昇格を懸けて対戦する。