サクラフィフティーン女子日本代表と女子フィジー代表の2連戦は、来月から新たに始まるWXVへの参戦を控える両チームにとってチームの準備状況を確かめる貴重な実戦機会になった。

 9月16日に東京の秩父宮ラグビー場で行われた第2戦で、日本が41-36で勝利。一週間前の10日に福岡で行われた第1戦の29-24勝利に続いて2連勝となった。WXV2への参戦権を獲得した今年5月のアジアラグビーチャンピオンシップ決勝以降、テストマッチ連勝記録を5に伸ばした。

 日本はフィジーとの第1戦から先発5人を入れ替え、バックスには代表戦経験の浅い顔ぶれを多く起用。試合開始8分でCTB小林花奈子選手の2戦連続トライで先制したが、その後フィジーが反撃。12分にヌニア・ダウニモアラ選手、17分にはドリーン・ナロケテ選手が立て続けに55点ずつを加えて逆転した。

第1戦から多くのメンバーを入れ替えて臨んだフィジーはしかし、その後ペナルティが続き、これを機に日本はラインアウトからのモール攻撃で25分にHO谷口琴美選手がトライ。SO大塚朱紗選手のコンバージョンも決まって再びリードを奪った。

 日本は相手にプレッシャーをかけてペナルティを誘い、31分には粘り強く攻め、ゴール前のラックから素早く持ち出したFL齊藤聖奈選手が2戦連続トライを決めた。

 フィジーは前半35分に危険なタックルがあったとしてCTBメレウィリタ・ネイヴォサ選手をイエローカードで10分間欠き、このペナルティで日本は3点を加えた。だが、粘るフィジーは前半終了間際に一人少ないなか、LOヌニア・ダウニモアラ選手が抜け出してオフロードでつなぎ、SOジェニファー・ラヴティア選手がトライ。コンバージョンも成功させて19-24の1トライ差で前半を折り返した。

 しかし、後半9分、日本はキャプテンFL長田いろは選手のトライで29-19として再び流れを引き寄せると、7分後にはWTB松村美咲選手がキックパスに反応してインゴールで押さえ、代表デビューとなった第1戦に続いて2戦連続トライ。34-19と引き離した。

 フィジーも粘りを見せて、後半24分にネイヴォサ選手が右サイドを抜けだして1トライを返し、日本が直後に長田選手の2本目のトライと大塚選手のコンバージョンで41-24としたあとも、後半31分にFLスリタ・ワイセガ選手、その3分後にラヴティア選手のこの日2本目のトライで36-41と追い上げたが、日本が逃げ切り、2連勝で今シリーズを終えた。

 

フィジアナ主将、「この対戦をWXVへ活かす」

 日本に敗れたフィジアナこと、女子フィジー代表のセレイマ・レヴェニギラ主将は、「望んでいた結果ではなかったが、いくつかミスが響いて試合を落とすことになった。チームは最後まで戦ったが、日本のような良いチームにミスをすればこういう結果になる」と振り返り、WXVへ向けて、「質の高い日本との対戦で多くの収穫があった。レビューをしっかりして、今回の対戦を活かして来月の大会へ臨みたい」と話した。

フィジー代表のイノケ・マレヘッドコーチも、「選手たちは良く戦った。この2試合は来月のドバイでの大会へ向けてとても良い準備になった。ここから修正してWXVでは良い試合をして、そこで得たものを持ち帰って力をつけられるようにしたい」と話した。

親切のWXVではフィジーはWXV3に参戦。6チームが2つのプールに分かれ、別プールの3チームと対戦し、フィジーは10月13日にコロンビア、20日にスペイン、27日にカザフスタンと戦う。最多勝点を獲得してWXV3で1位になれば、WXV2へ昇格となる。

レヴェニギラ主将はテストマッチの機会が限られてきたフィジー女子ラグビーにとって、WXVは新たな機会をもたらすと期待する。

「フィジーはこれまでテストマッチをする機会がなかなかなかった。新しい大会は今回の日本のように質のあるチーム、将来的にはティア1やティア2の国との対戦する扉を開いてくれる。フィジー女子にとって重要なものになる」と語った。

 

サクラフィフティーン、チームの成長を確認

両チームともに6トライを挙げた試合で、4本のコンバージョンとPG1本を成功させて勝利に貢献した女子日本代表の大塚選手は、「同じ相手に2度勝つのは難しいと分かっていたので、もう1段階ギアを挙げて『絶対にフィジーに勝つ』と言って(この1週間)取り組んで、実際にチームもそれを体現していたと思う」と振り返り、相手の強みのオフロードをさせないディフェンスに取り組んできたと明かし、「粘り強く、勝ててよかった」と笑顔を見せた。

 長田キャプテンは、「この1週間で先週の課題をしっかり修正して、前半それを出すことができた。セットプレーで少しプレッシャーがかかったところがあったが、敵陣で自分たちの粘り強いアタックができてトライにつながった」と述べて、「これからに向けて、もう一度精度を高くして、サクラフィフティーンのラグビーを表現できるようにしたい」と話した。

チームを率いるレスリー・マッケンジー女子日本代表ヘッドコーチは「非常に戦いにくい相手」というフィジーからの2連勝を喜びつつ、チームの成長にも手ごたえを覚えている。

「ホームでテストマッチ2連戦を戦うことができて、自分たちの存在と現在地を確認することができた。このチームは勝ち方と試合マネジメントを学んでいて、そこにこだわりながら、試合マネジメントの理解という点でも成長している。こういう積み上げをすることで、海外の定期的にテストマッチをこなしているチームにも追いついていけるようになる」と語った。

 日本が参戦するWXV2は南アフリカのケープタウンで10月13-28日に開催され、3チームずつ2つのプールに組み分けられ、それぞれが別プールの3チームと対戦し、全試合終了時に獲得しているポイントに応じて順位が決まる。最下位6位のチームはWXV3の1位チームと入れ替えとなり、2024年WXV3へ降格となるが、初年度はWXV1と2の入れ替えは行われない。

日本は今回、アメリカ、南アフリカとともにプールAに入り、プールBのイタリアと10月13日、サモアと21日、スコットランドと27日に対戦する。

 

女子日本代表、次はイタリアとWXV2前哨戦へ

 女子日本代表は次に、9月30日にイタリアのパルマで女子イタリア代表とのテストマッチに臨む。日本がWXV2初戦で対戦する相手でもある。

対戦成績は日本の1分け4敗。2019年11月の欧州遠征での対戦では17-17で引き分けたが、昨年10月のラグビーワールドカップでは8-21で敗れており、今回はそれ以来の顔合わせとなる。

 女子日本代表のマッケンジーヘッドコーチは、「イタリアは非常にスタイリッシュなプレーで、現在の女子ラグビーの中で最も連携の摂れたバックスラインを特徴としている」と敬意を表しつつ、「私たちは、前回ニュージーランドで対戦したときとは少し違う試合をお見せすることになるだろう。ケープタウンへ向かうための貴重な準備となる」と話している。