ワールドラグビー会長
サー・ビル・ボーモント

ラグビーは、チームワーク、勤勉さ、仲間意識、そして何よりもレジリエンス(弾力性)といった、人生の重要なスキルを数多く教えてくれます。2021年は、ラグビーはレジリエンスに尽きた一年でした。

ラグビーは、多くのスポーツと同様、世界中で起きた新型コロナウィルス感染拡大による第1次、第2次、第3次ロックダウンの暗黒の日々を経て、あらゆるレベルで復活を遂げました。私たちは皆、笑顔を取り戻した試合や瞬間を思い浮かべることができます。ラグビーが再開されたときに、私のクラブであるファイルドで旧友に会えたことが、私にとってまさにハイライトでしたし、東京オリンピックでセブンズのスターたちが輝く姿を目の当たりにできたこと、11月に行われた男子・女子の魅惑的なテストマッチプログラムもハイライトでした。

新型コロナウィルスの大流行がもたらした大きな試練は試合のあらゆるレベルで感じられましたが、その試練に正面から取り組み、より強くなるために団結し、私たちのスポーツとその価値の高さを証明しました。私は、私たちの行動を誇りに思うと同時に、プレーヤー、コーチ、マッチオフィシャル、管理者、そしてファンの皆さまの揺るぎない熱意に感謝したいと思います。

ピッチの外では、引退した元選手から若年性認知症に対する不安や懸念について、感動的な証言を引き続き聞くことができました。このような話を聞くのはつらいことですが、勇気を持って発言した彼らを賞賛します。ラグビーファミリーは、常にその仲間を支えてきました。ブーツを脱いでも、そのファミリーから引退することはありません。だからこそ、2022年がラグビーにおけるプレーヤーウェルフェア年となることはこれまで以上に重要なのです。

私はかつて選手であり、コーチであり、管理者であり、ツアーマネージャーでありましたし、今はラグビーをする息子を持つ誇らしい親であり、祖父であり、ファンです。多くのスポーツがそうであるように、ラグビーもリスクのないゲームではありません。しかし、ラグビーはプレーヤーを深く気遣い、プレーヤーを第1に考え、特に脳震盪や頭部外傷に関連する優先的に扱うスポーツであり、今後もそれは変わりません。しかし私たちは、ラグビーを可能な限り身近で楽しく、安全なスポーツにするという使命を胸に、立ち止まることなく、私たちがラグビーファミリーのことを深く考え、科学とエビデンスに沿った行動をとり、あらゆるレベルでプレーヤーのことを第一に考えているスポーツであると保護者や参加者に安心してもらうため、努力を続けていきます。

ワールドラグビーは、7月にラグビーがプレーヤーウェルフェアにおいて最も進歩的なスポーツであることを確固たるものにするための新たなコミットメントを発表しました。6つの明確な行動領域のもとで、現在、過去、未来のすべてのプレーヤーのための福祉を、スポーツ競技として私たちがどのように進めていくかを定めています。これは、ラグビーによるラグビーのための計画です。私たちは、これまでの6ヶ月間でこの計画に対して順調な進展を遂げました。

  • ウェルフェアに焦点を当てた試験的競技規則を世界的に実施し、損傷予防を目的としたコミュニティゲームに向けた競技規則のバリエーションを策定した。また、タックルの高さの低減と交代要員が損傷に与える影響の評価を継続的に実施。
  • エビデンスに基づいたコンタクトトレーニングでの負荷ガイダンスを作成し、ウェルフェアとパフォーマンスにおけるベストプラクティスを促進させるため、コンタクト負荷の推奨限度を定めた。
  • ブレインヘルスクリニック設立へのコミットメントに着手し、外部の第一人者専門家と提携し、より広範なブレインヘルス(脳の健康)に関する教育を行っている。
  • ラグビーゲームの全レベルにおける頭部衝撃の頻度と性質について理解を深めるため、Prevent Biometrics社の計測センサー付きマウスガード技術を用いた画期的な研究で提携。このデータは、全ての人々にとってより安全なスポーツを実現することが可能となる。
  • 女子ゲームに特化した研究を委任し、史上初の女子ウェルフェア・アドバイザリーグループを立ち上げ、ラグビーワールドカップ2021、ラグビーワールドカップ・セブンズ2022、コモンウェルスゲームズ・セブンス大会、と女子ラグビーにとって重要な年になることを踏まえ、女子に特化した研究と損傷防止プログラムを進めている。
  • 私たちは、ラグビーを最高のスポーツにするという共通の目的のために、プレーヤー、医療専門家、科学者、ロビー団体の意見に常に耳を傾けている。英国では、ラグビーにおける脳震盪に関する政府の調査に、ワールドラグビー、RFU、WRUが積極的に関与。

余談ですが、ラグビーの先進的な頭部損傷評価との脳振盪プロトコルのいくつかが、サッカーからサイクリング、クリケットまで他のスポーツで採用されていることは喜ばしいことであり、他のコンタクトスポーツや著名な専門家、また関連政府機関と協力し、草の根レベルからエリートレベルまで、模範となるようなケアの基準の実施を続けていきます。

私たちは立ち止まってはならないし、立ち止まるつもりもありません。スポーツとしてラグビーは、ゲームへの参加者を拡大するために、有意義な変革を示し、保護者やプレーヤーからの負託を更新し続けなければならないのです。このコミットメントは、ワールドラグビーと128カ国の加盟協会の全員が共有するものです。そして、不安に苛まれている元選手の皆さんに申し上げたいと思います。ラグビーファミリーは皆さんのことを深く気遣っており、ラグビーを可能な限り安全な競技にするための理解を深めるまで、私は休むことはありません。引退した選手も誰一人として置き去りにすることはありません。

2022年、私たちはプレーヤーウェルフェアにおけるサポートをさらに次のレベルへキックオンします。ブレインヘルスのアクションプランの実施、頭部外傷の特定と管理の改善、頭部外傷受傷後における個々のリスクに応じたリハビリテーションの推進、脳の健康について悩む元選手をクリニックでサポートし、専門家のサポートや情報にアクセスできるようにし、ゲームと神経変性疾患の関連性をさらに理解するために投資していきます。また、革新的な技術や研究パートナーシップを締結し、有意義な変化をもたらすよう努めます。

さらに、プレーヤーウェルフェアへのアプローチは、ファン、プレーヤー、コーチ、医療スタッフに至るまで、ゲームに関わるすべての人々によって形作られるものでありたいと思います。そのために、私たちはプレーヤーウェルフェアに関するラグビー史上最も広範な協議を行い、その中間結果をシックス・ネーションズ前に発表するつもりでいます。開かれたエンゲージメントの精神に則り、ベルナール・ラポルテ副会長、アラン・ギルピン最高経営責任者(CEO)と私は、世界中のコミュニティクラブを訪問し、皆さんの声を聞き、耳を傾け、あらゆる疑問にお答えします。すべては私たちみんなのスポーツであり、みんなで良いアイデアを出し合っていければと思います。

元プレーヤーとの活動や学校での教育、「Tackle Ready」や「Activate」といったエビデンスに基づいた損傷予防プログラムの世界的展開まで、プレーヤーウェルフェアに力を入れ続けていきます。私は、世界中の保護者の皆さまが、ラグビーがもたらす多くのベネフィットを知り、自分の息子や娘にプレーさせたい競技の一つとして見なしてほしいと思います。新型コロナウィルスの大流行時にラグビーがなかったことで、これらのベネフィットがはっきりと浮き彫りになりました。

来年の今頃は、オミクロンもデルタも、そして新型コロナウィルスの話は誰もしたがらなくなるでしょう。私たちは、ニュージーランドでの女子ラグビーワールドカップの成功を振り返り、また、男子ラグビーワールドカップ・フランス大会を見据えている状況にいたいと願っています。しかし、願わくば新型コロナウィルスが私たちの記憶から消え去った時も、プレーヤーウェルフェアは話題の一部であり続けなければならなりません。