日本にとっては2019年ラグビーワールドカップ以来2年ぶりの国内でのテストマッチ。世界ランキング3位のオーストラリアに、同10位の日本はプレッシャーをかけられながらもタフに食い下がり、チーム基盤のレベルアップと可能性を示した。

「7月以来の試合だったが、いい試合をしたと思う」と日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは振り返った。

だが、立ち上がりは苦戦した。

今年7月のダブリンでのアイルランド戦以来の試合という日本に対して、8月から10月までのラグビーチャンピオンシップで南アフリカとアルゼンチンに連勝して現在4連勝中のオーストラリアが試合感覚の良さを示して、WTBトム・ライト選手のトライで試合序盤に先制した。

2度のワールドカップ優勝経験のあるワラビーズは、前半半ばには、試合序盤に負傷離脱したFBリース・ホッジ選手に代わった入ったジョーダン・ペタイア選手がラインアウトからの展開で5点を追加。SOクエイド・クーパー選手がコンバージョンを決めて24分には14-3とリードを奪った。

日本はラインアウトでプレッシャーをかけられて苦戦しながらも、しぶとさを発揮。26分には左サイドで粘り強くつないで相手を引き付け、SO松田力也選手が右サイドへキックパスを展開。ジョセフ指揮官が「成長を感じた」と評したキックを受けたWTBレメキロマノラヴァ選手が、相手をかわしてトライをマーク。33分には松田選手がPGを成功させて13-14と追い上げた。

日本はさらに前半終盤にターンオーバーから速攻を展開したが、攻め込んだところで反則を取られて得点には結びつかない。その後、ハーフタイム直前にオーストラリアにPGを決められて4点差で前半を折り返した。

 後半に入ると、オーストラリアが早々にトライを奪う。ラインアウトからPRタニエラ・トゥポウ選手がインゴールで押さえた。

ワラビーズは日本が後半8分のレメキ選手へのイエローカードで数的不利な中、後半10分にFLロブ・レオタ選手が左サイドを抜けて27-13とリードを広げた。

 しかし、日本はその直後の後半15分に、CTB中村亮土選手が相手のパスをインターセプトしてゴールポスト間に運び、交代出場のSO田村優選手がコンバージョンを決めて20-27と追い上げる。さらに、後半34分には田村選手がハーフウェイライン付近からのロングレンジのPGを成功させて23-27の4点差に詰め寄り、17,004人の観衆を沸かせた。

 日本はその後、相手ボールを奪って反撃を仕掛けたが、そこで再び痛恨のペナルティを取られる。オーストラリアは、そのペナルティからラインアウトにするとモールで押し込み、最後は交代出場のコナル・マキナニー選手が代表デビューを飾るトライ。32-23で試合を終えた。

5連勝のワラビーズ、日本の成長を認める

この結果、日本のオーストラリアとの対戦記録は6戦全敗となったが、前回2017年の横浜での30-63の敗戦から4年を経て点差は縮めた。

オーストラリアのデイブ・レニーヘッドコーチは「うまく行かないところもあって、イライラする試合だった。日本がかなり良くて、キックがうまく機能しなかった」と、やや憮然とした表情を見せた。

だが、日本についてラグビーチャンピオンシップへの参戦の可能性を訊かれると、レニーヘッドコーチは「いい話だと思う。日本はいいチームだしスタッフもいいし、どんどんいいチームなってきている。ティア1の協会と言っていい。十分強くなっていると思う」と述べた。

 ワラビーズ主将で昨季はトヨタ自動車でプレーしたマイケル・フーパ―選手も、「日本はこの2年の間にとても早い成長を遂げている。ボールをリサイクルする能力、フィールドのあらゆるエリアで脅威となり得る力がある。今日の試合でも僕らは結構プレッシャーをかけたが、日本はそれに解決策を見出して向かってきた」と話した。

2017年の横浜での対戦も経験しているフーパ―選手は、日本が今回見せた変化に触れて、ブレークダウンやセットプレーの向上、スピード感、攻撃陣の充実を指摘。「ラグビーを楽しんでプレーしている」と対戦相手の成長を認めた。

 ワラビーズはラグビーチャンピオンシップから続く5連勝でイギリスへ渡り、11月に入ってスコットランド、イングランド、ウェールズと対戦する。

フーパ―選手は「異なるタイプの相手と戦って結果を手にすることは素晴らしいし、チームには伸び代がまだまだある。このグループでいいチャレンジになる」と、今後へ目を向けていた。

反則の多さを問題視

 日本代表のジョセフヘッドコーチは、「選手たちはベストのパフォーマンスをしようと、高いモチベーションで臨んでくれた。いいところも見られたし、相手の勢いも良く止めた」と評価した。

3年ぶりの日本代表戦先発で活躍した松田選手は、トライにつながったレメキ選手へのキックパスについて、「レメキ選手のコールを信じて、いいキックを蹴れば絶対にスコアしてくれることは練習から分かっていた。やってきたことが出せた」と安堵の表情を見せた。

27歳のスタンドオフは、角度の厳しいところからのキックを決め、後半途中から田村選手が試合に出るとFBにシフトしたが、試合の流れを見ながらポジションを柔軟にカバーした。

 4年前のオーストラリア戦にも先発で出場した松田選手は、「当時に比べて、いろいろ経験させてもらったし、より落ち着いてゲームを進めることができた」と、2度目のワラビーズ戦で得た手ごたえを口にした。

 また、日本で5年目のシーズンを迎えているオーストラリア出身のFLベン・ガンター選手は先発で、埼玉パナソニックで同僚のCTBディラン・ライリー選手は途中出場で、それぞれ代表初キャップを獲得した。

 ガンター選手は、「自分の初キャップの試合で、ワラビーズを相手に戦うことは特別」と笑顔。今後へ向けて「まだまだやるべきことが多いことは分かっている。ステップバイステップでやっていきたい。(ワールドカップのある)2023年までには素早く学んで、よりよい選手になっていたい」と前を向いた。

 だが一方で、日本は反則の多さが目についた。

ジョセフヘッドコーチは、「世界王者を倒したチームを相手にペナルティ17回(公式記録は14)とイエローカードを出せば難しくなる。ミスの起こったタイミングも結果に影響した」と述べて、改善ポイントに挙げた。

 選手もシビアに受け止めている。

 今遠征の主将を務めるFLピーター・ラブスカフニ選手は、「チームの一体感を感じたが、自分たちのミスでチャンスをふいにした」と振り返った。

PR稲垣啓太選手も、「負けたので全然いいゲームじゃない。反則が多かった。これでは勝てない」と話し、「全員がいろいろなチャレンジをした故の反則だと思うが、判断のスピード、判断のために必要なコミュニケーションをもっと上げていかないとならない」と語った。

 日本はこの後、欧州遠征へ出かけ、11月6日(土)にダブリンでアイルランド、13日(土)にコインブラでポルトガル代表、20日(土)にエジンバラでスコットランド代表と対戦する。