ラグビーの試合には、誰が勝ったか負けたか、獲得したスコアは何点だったか、誰が最後のトライを決めたか、そのようなこと以上の意味を持つ試合があります。

ラグビーワールドカップ2019で果たしたスコットランド戦での日本の勝利は、まさにそんな試合の一つでした。傷ついた日本に元気を取り戻し、ブレイブブロッサムズが世界の強豪入りを果たした一戦だったのです。

そしてこの試合は中止になっていたかもしれない試合でした。

横浜国際総合競技場で予定されていたプールAの対戦のこの日、史上最強と恐れられた台風19号(ハギビス)が列島を襲っていたのです。

台風は日本の東部を襲い、大洪水を引き起こし、悲しくも79人の命を奪い、莫大な被害を与えました。

被災に苦しむ日本で、日本代表チームのヘッドコーチ、ジェイミー·ジョセフは選手たちにただ一つの仕事に集中させました。日本ラグビー史上初めてスコットランドを破り、念願の喜びを日本国民に届けるということです。

大雨によりトレーニング場が浸水していたにもかかわらず、日本代表チームが準備を怠ることはありませんでした。

「日本チームが行ったことの一つは、雪が降ろうが雨が降ろうが、嵐が来ようが、何があっても一貫してトレーニングを続けたことです。」日本代表主将、マイケル·リーチ氏はワールドラグビーに語りました。

「ジェイミーにとっては大きな決断でした。彼が「いや、ブーツを履け」と言って、チームは雨の中、一日中トレーニングしたことが最終的に勝利を勝ち取る上で鍵となる重要な準備だったと思います。」

最悪の雨が上がり、横浜国際総合競技場のグランドスタッフの見事な仕事ぶりのおかげで、日曜日の朝、試合は予定通り行うという決断が下されました。

キックオフ前のスタジアムの雰囲気は最高潮に達していました。日本は史上初の準々決勝進出の瀬戸際に立っており、観客は期待に胸を膨らませていました。

しかし、予定通りにはいきませんでした。わずか7分後、スコットランドのフィン·ラッセルが最初のトライを決めたのです。

ファンが静まり返る中、日本チームは弱気になったかも知れません。しかしリーチがそうはさせませんでした。

「リーダーシップグループとして、こういう状況について話をしてきました。試合の前日に、もしもスコットランドが先に得点したら、キーメッセージは何か、どのようにして選手たちが集中力を失わないようにするか、ということについて議論していました。」と主将は説明します。

「どちらかというと、これはまず守りからスタートして、そこから這い上がらなければならないという多少チャレンジングな状況を生みました。」

ブレイブブロッサムズは単に這い上がる以上のことをしました。彼らは吠えて報復を開始しました。

日本は、よりスリリングなトライを次から次へと決め、センセーショナルな4トライを奪いました。日本独特のスピード感あふれる流れで攻めるラグビーで、スコットランドを圧倒しました。

ウィンガーの松島幸太郎、プロップの稲垣啓太、そしてフライングの福岡堅樹は2回のトライを決め、スコットランドを動揺させました。

「日本は自分たちがどうプレーしたいかとても明確に確信していました。一方私たちはなかなか自分たちのゲームに持っていけず苦しんでいました。」スコットランドのグレイグ·レイドロー主将はワールドラグビーに語りました。

「本当に悔しいです。この試合では私たちのディフェンスが全く機能しませんでした。日本がどのように攻撃してくるか、あのルーズなラグビーで攻めてくるということを私たちはわかっていました。そしてしっかり防衛すれば試合は僕たちの流れになると感じていました。でも全くそれができなかったのです。」

やはり日本にとって、準備がこの攻撃の鍵となっていました。

「福岡堅樹が誰かの手からボール剥ぎ取ってラインを超えてトライした時です。」一番気に入っているトライについて聞かれたリーチ主将は答えました。

「私たちはプレシーズンでボールを叩き取ったり剥ぎ取ったりする練習をたくさんしていました。そしてその練習の成果が出たのはとても満足のいくものでした。」

後半、スコットランドの猛烈な反撃があったにもかかわらず、日本は歴史的な勝利を手にするために辛抱強く戦い続けてスコットランドを破り、プールAのトップに躍り出てラグビーワールドカップ史上初めて準々決勝に進出しました。

 

しかしこの結果の意味が単に次のラウンドに進むというだけではありませんでした。日本の勝利、そして勝利までに繰り広げたスリル満点の戦いは、台風にも負けない日本人の強さを表すものでもありました。

ジョゼフ、リーチをはじめとするブレイブブロッサムズは難局を乗り越えました。

「あの試合はとてもプレッシャーがかかっていましたが、逆にこの機会を日本の皆さんに、また世界の皆さんに私たちの力を見てもらうチャンスだと捉え直したのです。」とリーチ選手は語ります。

「日本はほぼ全てがストップし、全国民は僕らのチームに注目していました。僕らの力の全てを皆さんに披露し、僕らの魅力を知ってもらう最高のチャンスだと思ったのです。」

「僕らはあの試合では特に、ノリにのっていました。」

日本ラグビーは、東京2020オリンピック大会でラグビーが再び東京スタジアムに帰るとき、日本の男子·女子セブンズチームが同様にスリル満点で感動的な試合を見せたいと望んでいます。男子大会は7月26日から28日まで、続いて女子大会が7月29日から31日まで開催されます。2019年のブレイブブロッサムズの感動的な大活躍のおかげで、ラグビーセブンズもオリンピック大会では最も期待の大きい競技の一つとして注目を集めています。