2019年ラグビーワールドカップで日本代表がアイルランド代表に勝利した静岡エコパスタジアムで、またエキサイティングなラグビーが展開された。

 リーグ戦を6勝1分の負けなしでホワイトカンファレンスを2位で突破し、大会連覇を目指す神戸製鋼に対して、クボタはレッドカンファレンスを5勝2敗の3位で勝ち進み、過去の成績も2019年の7位が最高だった。

だが、今季はリーグ戦からタフな試合を展開し、この試合でも前回王者に対しても、立ち上がりから出足も鋭く挑み、神戸製鋼SH日和佐篤選手に「予想以上に激しくきた」と言わしめるプレッシャーで相手を圧倒。試合開始10分でNO8バツベイシオネ選手、タウモハバイホネティ選手のトライとオーストラリア代表SOバーナード・フォーリー選手のキックで17-0とリードを奪った。

 ところが、前半29分にフォーリー選手が危険なタックルでレッドカードの判定を受けて退場となり、クボタは14人の劣勢に。そこから神戸に後半31分までに3トライ3コンバージョンを許し、残り時間10分を切って21-20のリードを奪われた。

 しかし、立川選手が代わりにチームをけん引。2015年ワールドカップを含めて日本代表55キャップを誇る31歳は、「10番のキーマンがいなくなったのは痛かったが、基本的にやることは変えず、14人で1人分をハードワークすると話していた」と冷静な対応を見せた。

 そして後半35分、1点差を追うクボタは敵陣に攻め込んだところでFWペナルティを獲得。これをWTBゲラード・ファンデンヒーファー選手が成功させて、23-21と逆転に成功した。最後は、南アフリカ代表HOマルコム・マークス選手や日本代表FLピーター・ラブスカフニ選手らを擁するFWでボールキープを続けて逃げ切り、勝利で初のベスト4進出を手にした。

立川主将は、「前半レッドカードが出てからかなり厳しい状態だったが、全員がワードワークした。FWがよく頑張ってくれたし、14人がよく戦った」と振り返った。

ファンデンヒーファー選手も、リーグ戦でのトヨタ自動車ヴェルブリッツ戦で逆転負けにつながったキックの不成功を反省して、「あの日から毎日、自分が納得のいくまで練習を続けてきた」という成果を披露。「決めることができてよかった」と安堵の表情を見せた。

試合開始前にも先発に予定していた9番の選手が体調不良のために急遽入れ替えとなるアクシデントもあったが、初先発となった谷口和洋選手がテンポよくボールを裁くなど、安定したプレーでチームの勝利に貢献した。

 チームを率いるフラン・ルディケヘッドコーチは、「シーズンを通してチームでやってきたことで結果が出た」と選手たちを評価。立川選手についても「大事なところでチームを一つによくまとめてくれた」と労った。

 初の決勝進出をかけて、次は5月16日にサントリーサンゴリアスと対戦する。今季リーグ戦ではクボタはサントリーに前半で23-7のリードを許し、後半3トライなどで同点に追いついたが、終盤にボーデン・バレット選手にトライとコンバージョンを決められて26-33で敗れた。

立川選手は、「ここが終わりではない。チームは一つずつ新しい歴史を刻んでいるところ。しっかり自分たちで勝利を勝ち取れるような、いい準備をしていきたい」と話している。

なお、サントリーは、準々決勝は不戦勝。対戦相手のリコーブラックラムズに新型コロナウィルス感染陽性者が出た影響で試合ができなくなったことによる。サントリーは2017-2018シーズン以来、通算6度目の優勝を目指している。

トヨタ自動車、ドコモとの接戦を制す

 5月8日に行われたトヨタ自動車とNTTドコモレッドハリケーンズとの対戦は、シーソーゲームの接戦となり、トヨタのWTBヘンリージェイミー選手が試合終盤にこの日2本目となるトライを決めて33-29で逆転勝利を収めた。今季、快進撃を見せてきたドコモだったが、4強進出はならなかった。

 初の8強入りとなったドコモはこの試合でも勢いを維持。SOマーティ・バンクス選手のPGで試合開始早々に先制すると、FBトム・マーシャル選手、CTBパエアミフィポセチ選手のトライなどで前半半ば過ぎまでに15-6とリードを奪った。

 初優勝を目指すトヨタはSOライオネル・クロニエ選手のPG 2本とWTB高橋汰地選手のトライで点差を詰めて前半を11-15で折り返すと、後半開始早々に主将でNO8のキアラン・リード選手がラインを越えて18-15と逆転した。

 この後、ドコモに1トライ1コンバージョンを返されて再びリードを許した直後の後半6分にトヨタはFLフェツアニラウタイミ選手がイエローカードを受けて1人マイナスの時間帯ができた。さらに、後半12分にはWTB茂野洸気選手のトライで29-21と点差を広げられた。

 しかし、後半22分にヘンリージェイミー選手のトライとクロニエ選手のコンバージョンで1点差に詰め寄ると、後半31分にフェーズを重ねて忍耐強く攻め、最後に外へ振ってヘンリージェイミー選手がインゴールに飛び込んで5点を追加し、33-29と逆転した。

 そこから最後の10分は激しい競り合いが続き、フルタイムのホーンが鳴った直後にはドコモがボールを保持して攻め込んだ。しかし、トライを取り切ることはできず、ペナルティを取られて万事休した。

 敗れはしたが、チームとして過去最高の成績を残したドコモを率いるヨハン・アッカーマンヘッドコーチは、「今日の試合だけでなく、今季ここまで努力してきた選手をとても誇らしく思う。こういう試合は小さいこと1つが違いを生む」と話した。

TJ・ペレナラ選手も「準決勝に行けずに非常に残念。自分たちにはチャンスが何度もあったが活かしきれず、しっかりモノにしたトヨタが結果を得た。ただ、我々のチームはハードワークしたし、成長したと思う」と語った。

 トップリーグの試合について、ニュージーランド代表SHは「トップリーグでは毎週、内容が良くてレベルの高い、ファンが喜ぶような試合をしている。今日もそういう試合になったし、来シーズンもきっといい戦いになると思う」と話した。

 ドコモ主将のLOローレンス・エラスマス選手は「チームカルチャーとして、お互いのために最後まで戦いきる集団になった。そこがこれまでと今季の一番の違いだと思う」と振り返った。

 トヨタのサイモン・クロンヘッドコーチは、「戦争のような試合になると思っていたが、その通りの展開になった」と言い、終盤の攻防についても「選手たちは71分以降もパニックにならず、全員が集中してやれていたし、それぞれが役割を考えてやれたことが結果につながった」と話した。

 トヨタ自動車は5月15日の準決勝で、キヤノンイーグルスを32-17で下したパナソニックワイルドナイツと対戦する。

 5シーズンぶりのタイトル獲得を目指しているパナソニックは、試合開始2分でCTBディラン・ライリー選手がラインを越えて先制し、SH内田啓介選手のトライ、SO松田力也選手のPG2本、コンバージョン2本を加えて、キヤノンをSO田村優選手のPG1本に抑えて、前半で20-3と大きくリードする。

 後半、キヤノンの田村選手がトライ&コンバージョンを決めて点差を詰めたが、パナソニックはWTB福岡堅樹選手が後半半ばに今季10本目のトライをマーク。交代出場の福井翔大選手も今季4トライ目を決めるなど、後半半ばまでに32-10とリードを奪い、試合を優位に進め、終盤にキヤノンに1トライ1コンバージョンを返されたが、4強入りを決めた。

 なお、準決勝はいずれも大阪・花園ラグビー場にて開催され、準決勝以降は日本選手権を兼ねて行われる。