「立ち上がりから近鉄に勢いがあり、前半はプレッシャーを感じたが、後半は風上に立って、徐々に自分たちのラグビーができるようになった」

パナソニックのゲーム主将を務めたコーネルセン選手は、近鉄との2回戦をそう振り返った。

リーグ戦6勝1分けでホワイト・カンファレンスを首位で突破したパナソニックだが、下部のチャレンジリーグから唯一2回戦へ勝ち進んできた近鉄のタフな守備に直面。前半15分にWTBジョシュア・ノーラ選手のトライとCTBステイリンパトリック選手のコンバージョンで先制を許した。

ジリジリとした展開になったが、前半30分を前にコーネルセン選手がトライ。SO松田力也選手のコンバージョンも決まって同点で折り返すと、パナソニックは後半に入って違いを見せつけた。

後半開始早々に、敵陣深い位置での相手のキックにイングランド代表45キャップのLOジョージ・クルーズ選手がチャージ。これに鋭く反応したコーネルセン選手がインゴールで押さえて均衡を破ると、松田選手のPGやFL大西樹選手のトライなど、その後の10分弱で得点を畳みかけて、相手を引き離してペースをつかみ、後半だけで合計6トライとPG3本を決めた。

そのうちの2トライは、医師を目指して今季限りで引退する福岡選手によるものだ。試合終盤、相手3人を振り切る快足でタッチライン沿いを駆け抜け、その直後には相手パスのインターセプトから5点を加えた。

これにより、福岡選手は自身の今季トライ数は9。神戸製鋼コベルコスティーラーズのナエアタ選手らリーグトップとの差を1としたが、「トライ数にはあまりこだわったことがない」とそっけない。「チームが勝てればいい。その結果としてトライ数が一番というのであればいい」と淡々と話した。

一方、近鉄はチームが目標とした8強入りを逃したが、日本代表候補入りした近鉄CTBシオサイア・フィフィタ選手は、「何回かいいところもあったが、もっとできたかと思う」と悔しさを滲ませ、チェイスや周囲とのコミュニケーションを課題に挙げた。

近鉄のゲーム主将を務めたLOマイケル・ストーバーク選手は、前半の健闘には手ごたえを覚えたようで、「前半はタイトに戦えたが、後半は厳しさが足りなかった。セットピースやアタック、ディフェンスそれぞれで厳しい選択をできるようになれば、トップ8を達成できる」と話した。

 日本代表入りを目指すコーネルセン選手

コーネルセン選手は「前半、相手を1トライに抑えたが、今後へ改善すべき課題がある」と振り返り、残り3試合を勝ち進んでタイトル獲得への静かな意欲を漂わせた。

 父はオーストラリア代表で25キャップを保持し、オールブラックスから4トライを挙げたことで有名だが、今季パナソニックで4季目となる26歳の息子ジャックは、先日発表された日本代表候補リストに名を連ねたばかりだ。

 2018年8月のリーグ開幕戦のクボタ戦でトップリーグにNO8で先発デビューし、ほどなく主力として定着。昨季リーグ戦は打ち切りまでの全6試合に出場(5試合で先発)し、チームの6勝に貢献した。今季はここまでの8試合全てに先発して5トライをマークしているが、豊富な運動量で守備での存在感も大きい。

 コーネルセン選手は「日本代表は今年の大きな目標の一つ」と話し、父とは異なる国での代表を目指すことにも「特に迷いはない。父も僕が目標とすることを応援してくれる」と言う。

「代表候補に選出されたことは誇りに思う」としながらも、本当の代表入りはまだこれからだとして、「まずパナソニックで残りの試合をベストパフォーマンスで戦って、最終スコッドに選ばれるようにしたい」と話している。

 4連勝のキヤノン、試合ごとに成長

 そのパナソニックが4強入りをかけて次に戦う相手はキヤノン・イーグルス。25日の2回戦でNTTコミュニケーションズ・シャイニングアークスに43-13で勝利した。

 日本代表SO田村優選手、今季途中加入で古巣対決となったNO8アマナキ・レレイ・マフィ選手らが存在感を発揮して試合の主導権を握り、NTTコミュニケーションズを元スコットランド代表SHクレイグ・レイドロー選手の2PGと1コンバージョン、SO前田土芽選手の1トライに抑えた。

 キヤノンはリーグ戦3戦目でパナソニックに0-47と完敗で3連敗を喫していたが、次のヤマハ発動機ジュビロ戦以後はチームを立て直して、ここまで4連勝だ。

 田村選手は、「最初はトーナメント初戦で緊張した固さがあったが、それは10-15分で、あとは自分たちのペースで戦えていた」と振り返り、不利な判定があっても冷静さを失わずに戦えた点を評価。「自分たちのゲームプランを信じてしっかり戦えていたので、チームとして成長したと思う」と話した。

今季からチームを率いる沢木敬介監督も、「毎週試合を重ねるたびに成長できている感覚がある。次のパナソニック戦へ向けていい準備をして、いい試合をしたい」と話していた。

クボタのラブスカフニ選手が3トライ

このほか、クボタ・スピアーズがヤマハ発動機に46-12で勝利。日本代表FLピーター・ラブスカフニ選手が後半だけでハットトリックをマークし、オーストラリア代表SOバーナード・フォーリー選手も1トライ2コンバージョン2PGで15得点を生み出した。

今季限りでの引退を表明していたヤマハ発動機FB五郎丸歩選手は、負傷のためにスタンドでチームの今季最後の試合を見守った。

神戸製鋼は24日に花園で行われた三菱重工相模原ダイナボアーズ戦に50-17で勝って、2018-2019年シーズンに続くタイトル獲得へ向けて一歩前進した。NO8ナエアタルイ選手が前半半ばに今季リーグトップタイとなる10トライ目をマークした。

6度目の優勝を目指しているサントリー・サンゴリアスは、NECグリーンロケッツを76-31で下した。ニュージーランド代表SOボーデン・バレット選手が先制トライ、今季初先発のWTB中鶴隆彰選手が前半半ばに2連続トライを決めるなど、11トライの猛攻だった。

トヨタ自動車ヴェルブリッツは粘る日野レッドドルフィンズを49-29で退けた。日野は後半半ばにFB川井太貴選手のトライとSO東郷太朗丸選手のコンバージョンで24-28と詰めたが、トヨタはその直後に交代出場のロブ・トンプソン選手がトライを決め、終盤にも2トライを追加して8強入りを決めた。

リコー・ブラックラムズは東芝ブレイブルーパスに27-24で競り勝った。後半半ばには20-17と3点差に詰められたが、試合終盤に交代出場の山本昌太選手のトライとFBマット・マッガーン選手のコンバージョンで点差を広げて逃げ切った。

NTTドコモ・レッドハリケーンズはホンダ・ヒートに21-13で勝利。WTBマカゾレ・マピンピ選手、LOローレンス・エラスマス選手、ニュージーランド代表SHのTJ・ペレナラ選手のトライなどで後半半ばまでに奪った21-3のリードを最後まで活かした。

準々決勝は、5月8日(土)に熊谷でキヤノン対パナソニック、熊本でトヨタ自動車対NTTドコモ、9日(日)に静岡でクボタ対神戸製鋼、大分でサントリー対リコーの対戦となった。

緊急事態宣言下で

なお、4月25日は大阪、東京など4都府県に新型コロナウィルス感染防止対策として緊急事態宣言発出初日だったが、宣言発令決定が2日前で、周知期間が短く、すでにチケットを購入していたファンの混乱を避けるために観客を入れて開催。宣言適応地域となる大阪の花園での近鉄-パナソニック戦には3989人、東京の秩父宮でのトヨタ自動車-日野戦には3849人の観客が足を運び、拍手で選手たちのプレーを後押しした。

 近鉄のストーバーク選手は、「サポーターは特別な存在。いつも情熱的で僕らにエネルギーをくれる。3900人以上が来てくれたことに感謝したい」と語り、フィフィタ選手も「次のシーズンはファンの前でもっといいプレーができるように頑張りたい」と話していた。