新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて開幕が約1ヵ月遅れ、大会形式を変更して2月20日に始まった今シーズンの戦いは、レッドとホワイトの2つのカンファレンスに分かれたファーストステージが終了。レッドカンファレンスでは、2017年度以来6度目の優勝を目指すサントリーサンゴリアスが、全16チームで唯一、無傷の7戦全勝でプレーオフに進出した。

最終節4月11日のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦では14トライの猛攻で、WTB江見翔太選手、HO中村駿太選手、途中出場のSOボーデン・バレット選手がそれぞれハットトリックを決めて94-31で快勝。7試合の総得点はリーグ最多の420となった。

バレット選手は後半22分からの出場で3トライ5コンバージョンを決めて25得点を叩き出す活躍で、今季通算得点を7戦で128得点としてリーグ得点王を獲得した。

同僚のWTBテビタ・リー選手は、ヤマハのWTBマロ・ツイタマ選手とともに今季通算10トライをマークして、最多トライゲッターとなった。WTB江見選手、HO中村選手は先日、日本代表候補に選出されている。

一方、ホワイトカンファレンスの首位通過は、5度目のタイトル獲得を目指すパナソニック・ワイルドナイツ。10日のヤマハ発動機ジュビロ戦で55-19と大勝して6勝1分け無敗だった。

パナソニックのCTBディラン・ライリー選手が今季初得点でハットトリック。中盤での果敢な動きで守備でも存在感を発揮したライリー選手は、週明けの日本代表候補発表で52人のリストに名を連ねた。今季限りで引退して医学の道に進むWTB福岡堅樹選手も、今季7本目となるトライを決めた。

パナソニックの堅守は総失点数を見ても明らかで、76失点は7試合でリーグ最少。次点のサントリーの129を見ると、堅守ぶりが数字でも際立っている。ヤマハ戦で許したトライは、前半終盤の2本と後半半ばの1本にとどめて反撃を阻止。この試合でボーナスポイントも獲得して、同じ勝率で追従していた神戸製鋼コベルコスティーラーズを勝点2差で退けた。

躍進のドコモ、台風の目に

2位を死守したのはディフェンディング・チャンピオンの神戸製鋼。NTTドコモ・レッドハリケーンズとの関西ダービーで、緊迫したエキサイティングな試合を展開して、見る者を魅了した。

ニュージーランド代表SHのTJ・ペレナラ選手を中心としたドコモの激しい抵抗を受けて5度のリードを許す苦しい戦いになったが、26-29で追う試合終了間際に、途中出場の松岡賢太選手が今季初トライを決めて、31-29で6勝1敗として2位をキープした。

ドコモは今季、大きな変化と躍進を見せたチームの一つで、その立役者となっているのがペレナラ選手だ。昨季はリーグ史上最多得点差の0-97で完敗した神戸に一歩も譲らないタフな戦いを見せ、3度目のリーグ優勝を目指している強豪神戸を追い詰めたが、試合終盤になって自陣で反則。これを得点に結びつけられて万事休した。

最後にあと一歩及ばず、4勝3敗でホワイトカンファレンス3位でのプレーオフ進出となったが、選手の反応は前向きで、ここまでの戦いに今季の手ごたえを感じている様子が見える。

途中出場でPG3本とコンバージョン1本を決めたSOマーティ・バンクス選手は、「こんなにもチームは変われるものなのか。みんなのことを誇りに思う」と感慨深げだ。「昨年の神戸戦での苦い思いをしたが、今日は最後の最後まで我々がリードしていた」と今季3年目の31歳は言う。

昨季はダン・カーター選手を擁した神戸戦に完敗しただけでなく、パナソニック戦(3-40)やヤマハ発動機戦(7-82)でも大敗していた。今季は、新任のヨハン・アッカーマンヘッドコーチの下で厳しい姿勢でプレシーズンから準備を重ねてきた。

「今季はプレシーズンが長く、ハードな練習をやってきて、選手はより自信を持っている、と述べて、「新しい選手が入ってきてチームの雰囲気が変わった。TJは経験も自信もあって、ヨハンが巧くコントロールしている。プレーを重ねればもっと良くなる」指摘した。

 ペレナラ選手は、「今日のようなビックゲームは自信になる。最後のあと一歩のところを改善すれば、どんなチームにも勝てるようになる。1つ1つ丁寧に戦って、その上で結果が出ればいい」と話した。

トヨタは終了間際に逆転で2位通過に

1点を争う激闘はレッドカンファレンスの2位争いでも見られ、ハラハラ・ドキドキの展開となった。

5勝1敗の勝点24で並び、得失点でわずかに6点上回って2位につけていたクボタスピアーズと3位のトヨタ自動車ヴェルブリッツの対戦で、試合は25-24でトヨタがものにした。

クボタは前半終盤にPR山本剣士選手とFLピーター・ラブスカフニ選手が相次いでイエローカードをもらう苦しい状況に。その間に1トライ1PGでトヨタに15-14とリードを許したものの、後半半ばにマルコム・マークス選手のトライとゲラード・ファンデンヒーファー選手のコンバージョンで再び24-18とする粘りを見せた。だが、トヨタが終了間際にWTB高橋汰地選手のトライで1点差とし、SOライオネル・クロニエ選手がコンバージョンを成功させて逆転。この勝利でトヨタが入れ替わりで2位に入った。

このほか、ホワイトカンファレンスでは、リコーブラックラムズが最終節に日野レッドドルフィンズを41-19で下して4位に浮上した。

キヤノンイーグルスもNECグリーンロケッツに71-24の快勝を収めて5位に食い込んだ。キヤノンSO田村優選手はこの試合8本中7本のコンバージョンを決めて14得点を挙げ、ファーストステージでのキック成功率を87%として、ベストキッカーに選ばれた。

なお、キヤノンと日野は、4月4日第6節の両者の対戦が日野に感染症陽性者が出たことを受けて中止となり、規定で両チームそれぞれ勝点2を手にした。

 一方、レッドカンファレンスでは、宗像サニックスブルースに49-14で勝利した東芝ブレイブルーパスが5位に入り、ホンダヒートはFBマット・ダフィー選手のハットトリックなどで三菱重工相模原ダイナボアーズに55-7で大勝。今季初白星を得て最下位から6位に順位を上げた。

一発勝負の戦いへ

 17日からのプレーオフには下部のトップチャレンジリーグ(TCL)から、上位4チームが出場。1回戦で豊田自動織機シャトルズ(TCL1位)はNECグリーンロケッツ(ホワイト8位)、近鉄ライナーズ(TCL2位)は宗像サニックスブルース(レッド8位)、コカ・コーラレッドスパークス(TCL3位)は三菱重工相模原ダイナボアーズ(レッド7位)、清水建設ブルーシャークス(TCL4位)は日野レッドドルフィンズ(ホワイト7位)と対戦する。

 近鉄は日本代表候補入りした、今季1年目のシオサイア・フィフィタ選手の13番での先発起用を発表。宗像には、2019年ラグビーワールドカップで活躍し、今回の日本代表候補にも名を連ねているジェームズ・ムーア選手が6番で出場する。

 トップリーグ各カンファレンスの上位6位チームは、4月24、25日からの2回戦から出場。サントリーは24日に豊田自動織機とNECの勝者、パナソニックは25日に宗像と近鉄の勝者と対戦する。

このほか、24日には神戸製鋼が三菱重工とコカ・コーラの勝者と、東芝がリコー、クボタがヤマハ発動機と対戦し、25日にはトヨタ自動車が清水建設と日野の勝者、NTTコミュニケーションズはキヤノン、NTTドコモはホンダと顔を会わせる。

準々決勝は5月8、9日に、準決勝は5月15、16日に行われ、決勝は5月23日に東京の秩父宮で開催。準決勝と決勝は、日本選手権を兼ねての開催となる。

 来年1月からは新リーグがスタートする予定で、トップリーグは今季が最後。今季の成績が新リーグのディヴィジョン分けの判断材料として考慮される予定になっている。