新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、昨シーズンは序盤6節でリーグ戦が中止となり、今シーズンも3チームで多くの感染者が出たために当初の予定より5週間遅れて開幕したトップリーグだが、感染対策を徹底した中で観客を迎えて約1年ぶりに公式戦が行われた。

 「やっと開幕してサントリーのチームメイトと一緒にプレーできたことが感慨深い。ファンの前でプレーできることが嬉しい」

 そう話したのは世界最優秀選手に2度選ばれた、ニュージーランド代表のボーデン・バレット選手だ。

 「一番プレーしたいポジションはスタンドオフ」と開幕前に話していた通り、最近の代表戦ではフルバックでのプレーが続いていたが、21日のレッドカンファレンスの三菱重工相模原ダイナボアーズ戦で10番を付けてプレー。攻守で鮮やかなプレーを披露してゲームを組み立て、サントリーの75-7での快勝に貢献した。

 バレット選手は試合開始5分、パスを受けてCTB中村亮土選手へオフロードパスでつなぎ、SH流大選手のチーム2本目のトライをお膳立て。33-7で迎えた前半終了直前には相手陣内でのスクラムから攻め込み、流選手のパスを受けてゴールに飛び込んで初トライもマークした。さらに、キックでも8本のコンバージョンを決めて、後半20分に交代するまでに、計21得点を叩きだした。

 好守にペースをつかみ主導権を握ったサントリーは、WTBテビタ・リー選手が5トライを挙げ、ルーキーWTB中野将伍選手もデビュー戦でトライを決めるなど、3シーズンぶり6度目の優勝へ向けて好スタートを切った。

 三菱重工は、ニュージーランド代表が2011年と2015年のワールドカップ連覇達成メンバーのSOコリン・スレイド選手を中心に粘り強く攻めたが、サントリーの鋭く厚い防御に苦戦。前半11分にCTBマイケル・リトル選手がパワフルなプレーでトライを決め、スレイド選手もコンバージョンを成功させたが、リトル選手は直後に負傷交代となり、追加点を挙げることはできなかった。

 試合後、「チームとして良いスタートが切れた」というサントリー主将の中村亮土選手はバレット選手について、「10番としてしっかりゲームをコントロールしてくれる。ランナーとしても非常に優秀。彼について行きながら、お互いにサポートしながらチームをリードしていければと思ってプレーしていた。それが全体を通してよくできていた」と話し、十分な手ごたえを掴んだ様子だ。

バレット選手は日本でのシーズンについて、「チームとして優勝という目標はあるが、選手としては日々、向上したいと思っているし、チームメイトとの経験を楽しんで共有したい」と話した。

 一方、スレイド選手は、「開幕が1ヵ月伸びて準備期間が長くなって、大変なところもあった。今日は待ち望んだ試合だったが、残念な結果になってサポーターには申し訳なかった。今日の試合を活かして、次の試合へ改善していきたい」と話した。

フーパ―選手、途中出場でデビュー

 20日に行われた試合では、リーグ初制覇を目指すトヨタ自動車ヴェルブリッツに加入したオーストラリア代表主将のFLマイケル・フーパ―選手も、東芝ブレイブルーパス戦に後半10分から出場。ニュージーランド代表主将を務めたNO8キアラン・リード選手とトヨタのバックローを組み、日本代表主将のリーチマイケル選手を擁する東芝の反撃を抑えて、チームは34-33で逃げ切った。

 前半で7-24のリードを許した東芝は後半追い上げ、残り5分でリーチ選手がトライを決め、コンバージョンも決まって1点差に詰め寄ったが、最後の攻撃でボールを失い、トヨタに時間を使われて万事休した。

 今季トヨタで共同主将を務めるリード選手は、「試合に来て応援してくれた観客に感謝している。ずっと試合を待ち望んでいた。タイトな試合で東芝の反撃は強かっただけに、最後にしっかりと勝ち切れたチームを誇らしく思う」と述べた。

フーパ―選手との共闘には「マイケル・フーパ―と一緒にプレーできるのはエキサイティングだ。チームに大きなインパクトを与えてくれたし、試合が進むにつれてレフェリーのコールにも慣れてきたようだ」と語った。

フーパ―選手は、「ハードワークで疲れた。オープンプレーが多くて、思っていたよりもフィジカルだったが、勝ち切れてよかった」と振り返り、リード選手とのプレーに「一緒にプレーできて、しかも勝ち試合で終えられて、満足感を覚えている」と話した。

トヨタのSH茂野海人選手はコロナ禍での開幕について、「こういう環境でラグビーができることに感謝の気持ちでいっぱい。いいプレー、魅力あるプレーで見ている人に勇気や元気を与えられるようにしたい」と語った。

 このほかのレッドカンファレンスの試合では、NTTコミュニケーションズ・シャイニングアークスはホンダヒートと対戦。アークスの新戦力、元スコットランド代表主将でSHグレイグ・レイドロー選手が1トライを含めた12得点を叩き出し、チームは41-13で勝利した。

クボタ・スピアーズは2年目のオーストラリア代表SOバーナード・フォーリー選手が1トライを含めて18得点を挙げ、今季NTTコミュニケーションズから移籍の南アフリカ代表HOマルコム・マークス選手が2トライを決めるなどで、宗像サニックスブルースに43-17で白星スタートを切った。

神戸製鋼、パナソニックも勝利

一方のホワイトカンファレンスでは、2018-2019大会優勝の神戸製鋼コベルコスティーラーズはNECグリーンロケッツと対戦。28-26で後半に入ると、早々にニュージーランド代表WTBベン・スミス選手がトライを決めてリードを広げ、チームはさらに2トライを加えて、47-38で勝利した。

 2015年度以来5シーズンぶり5度目の優勝を目指しているパナソニックは、55-14でリコーブラックラムズに勝利。試合当日に大学の医学部合格が判明したWTB福岡堅樹選手は、後半半ばにインターセプトからゴールまで走り抜いてトライをマークした。

パナソニックSO松田力也選手がコンバージョン7本とPG2本のすべてのキックを成功させて20点を加え、ウェールズ代表CTBハドレー・パークス選手は12番でフル出場し、試合終了間際にダメ押しの1トライでデビュー戦を締め括った。

 キヤノンイーグルスと対戦したNTTドコモレッドハリケーンズではニュージーランド代表TJ・ペレナラ選手が先発し、後半19分にトライを決めるなどフル出場。チームは試合終了間際に川向瑛選手がPGを決めて26-24で逆転勝利した。

ヤマハ発動機ジュビロは、20歳のオーストラリア出身LOフレッド・ヒュートレル選手と24歳のニュージーランド出身WTBマロ・ツイタマ選手が3トライずつをマークするなど若手が活躍し、日野レッドドルフィンズに52-17で勝利した。

今季のトップリーグは来年1月の新リーグ発足を控えて現行体制で最後のシーズンとなる。4月11日までのリーグ戦では16チームが2つのカンファレンスに分かれて1回戦総当たりを実施。その成績に応じて4月17日からのノックアウト方式のプレーオフ・トーナメントで、下部のトップチャレンジリーグ上位4チームを加えて戦い、優勝を目指す。