新型コロナウィルス感染拡大が、1月16日に予定されていたジャパントップリーグ2021シーズンの開幕を妨げることになった。

この日までにリーグ戦出場16チーム中6チームで感染者が確認され、その数は62人を数えている。

日本協会では今月12日の時点で、トヨタ自動車13人、サントリー7人、キヤノンに24人の感染陽性者が出たことを受けて、16~17日に開催予定だった開幕節のトヨタ自動車対サントリー、リコー対キヤノンの中止を決めていた。

だがその後、東芝(5人)、神戸製鋼(10人)、NEC(3人)でも相次いで選手・スタッフに感染陽性が判明。開幕を2日後に控えて、濃厚接触者の判定に時間がかかることや、現行の大会形式では実施予定試合数の75%をクリアできずに大会成立基準に満たない可能性が高まったことなどから、日本協会では今季の開幕を遅らせ、大会形式を変更して大会成立を目指すことを決めた。

 日本協会の岩渕健輔専務理事は、「この数日で大きく状況が変わった」と指摘して、「リーグを成立させるための最善の考え方ということで決断した。現状のフォーマットでは75%を満たす可能性が非常に低くなっている。この早いタイミングで決断し、フォーマットを変更した上で選手や関係者の安心安全を担保してリーグ運営をする」と説明した。

 当初の予定では、今季は参加16チームを2つのカンファレンスに分けてファーストステージを戦い、その成績に応じてセカンドステージを行い、上位4チームがシーズン最後を飾るプレーオフへ進出して優勝を争う予定だった。

新たな大会方式では、ファーストステージの後にトップチャレンジリーグ上位チームを加えたトーナメント方式での実施を検討しているが、感染状況次第でさらに開幕が遅れた場合も想定して別の方式も用意し、大会成立を目指している。

新たなシーズン開幕は2月上旬から中旬のスタートを目途とし、5月23日に予定されているプレーオフ決勝は変更しない方針。詳細は後日決定し、発表される。

 今回の開幕が延期されたことで、サントリーのニュージーランド代表SO/FBボーデン・バレット選手をはじめ、NTTコミュニケーションズのスコットランド代表SHグレイグ・レイドロー選手やNTTドコモの南アフリカ代表WTBマカゾレ・マピンピ選手、神戸製鋼のニュージーランド代表のSOアーロン・クルーデン選手とFB/CTBベン・スミス選手ら、2019年ラグビーワールドカップでも活躍し、世界的にも注目される顔ぶれのトップリーグデビューも先送りとなった。

感染対策の強化へ

トップリーグでは昨年2020シーズンも新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、1月の開幕から6節で中断し、その後、打ち切りを余儀なくされた。2019年ラグビーワールドカップの日本大会開催成功を受けて、大きな関心を集め、観客動員も記録的な伸びを見せていただけに残念なリーグ戦中止となっていた。

それだけに関係者は今シーズンのリーグ成立へ強い意欲を見せており、岩渕専務理事は、「状況によっては一度立ち止まることも、前へ進めていくための一歩。今日の延期も、後退ではなく、しっかりとリーグを成立させて前へ進むための決断と捉えていただきたい」と強調した。

加えて、2022年1月からは新リーグ発足が予定されており、現トップリーグの16チームとチャレンジリーグ9チームが参加を申請。各チームにとっては、今季の成績が来季の新リーグでのディビジョン振り分けの基準の一つとなっており、その点でも今季の役割は大きい。

一方、各チームでの感染拡大の要因について、トップリーグの太田治チェアマンは、詳しい状況を各チームにヒアリング中であるとしたが、ラグビー競技そのものに起因するものではなく、プライベートでの行動によるものという認識を示した。その上で今後へ向けた対策として、健康チェックや行動記録、PCR検査の頻度など、感染防止ガイドラインの厳格化を進めるとしている。

岩渕専務理事は、「感染者が全く出ていないチームの方が多い。(感染者が)出たチームと出ていないチームの差を見極めて、ガイドラインの徹底を進めていきたい」と話した。

なお、下位リーグにあたるトップチャレンジリーグでも豊田自動織機で選手8人に感染が確認され、これを受けて同チームは17日に行う予定だった中国電力との開幕戦出場を辞退していた。

日本国内では年末年始から感染が急拡大を続けており、これを受けて今月7日には政府が東京など首都圏の1都3県に緊急事態宣言を発令し、13日には大阪や兵庫、愛知など7府県を対象区域に追加した。宣言の適用期間は2月7日までで、不要不急の外出や飲食店などの時短要請を行い、スポーツなどの大規模イベントでは観客動員を最大5000人または収容人数50%上限とする少ない方での実施が求められている。