「ここに来られてとても嬉しい。日本での生活を楽しんでいる」

ワールドラグビーの年間最優秀選手に2度選出され、2019年のラグビーワールドカップでもニュージーランド中心選手として活躍したバレット選手は、都内のホテルでの会見に集まった多くの報道陣を前に満面の笑みで、そう言った。

 過去にオールブラックスとして6回の来日経験があり、7回目となった今回は、ニュージーランド協会と締結した4年契約の中で、1年間海外でプレーできるサバティカル制度を適用して、「大好きな国」である日本でサントリーの一員としてトップリーグでプレーすることを選択した。

そこには2023年ラグビーワールドカップへの思いがある。

「いろいろなオプションを検討したが、自分が重視したのは2023年ラグビーワールドカップに出ること。そこから起算して考えた」と29歳の世界的バックスは明かし、フランスからもオファーがあったが「自分が求めるものとは少し違うと感じた」と言った。

 すでに12月に来日して14日間の自主待機を経てチームに合流。プレシーズンマッチにも出場して存在感を示している。12月末の東芝ブレイブルーパスとの試合では後半途中から出場してトライを決め、年明けのパナソニック・ワイルドナイツとの対戦では先発でチームの勝利に貢献した。

 バレット選手は、「日本のラグビーのスキルレベルとインテンシティの高さに驚いた」と話し、「選手として自分の目標は、ここにいる間に成長すること。チームメイトとともに成長したい」と語る。

 2015年ラグビーワールドカップでは連覇にも貢献したバレット選手は、オールブラックスでのキャップ数は88。最近はフルバックでのプレーが多いが、本人はサントリーではSOでのプレーを希望している。

 「ここ2年は15番でプレーしていたから10番でのプレーに戻って楽しんでいる。SOでの役割や9番や中盤との関係を築くことはもう少し必要だが、自分が一番楽しめるポジションなので、ニュージーランドに戻ったときにオールブラックスでのプレーに役立てばと思っている」と語った。

 2021シーズンのトップリーグは1月16日に開幕し、16チームが2つのカンファレンスに分かれて3月6日までのファーストステージを実施。その成績に応じたプール分けで3月26日からセカンドステージを行い、各プール上位2チームが5月8日からのプレーオフに進出する。6度目の優勝を狙うサントリーは、ファーストステージではトヨタ自動車、NTTコミュニケーションズ・シャイニングアークス、クボタ・スピアーズ、ホンダ・ヒート、東芝、宗像サニックス・ブルース、三菱重工相模原ダイナボアーズと同組だ。

 バレット選手は、ニュージーランド代表で馴染みのブロディ・レタリックとベン・スミス(ともに神戸製鋼コベルコスティーラーズ)、TJ・ペレナラ(NTTドコモレッドハリケーンズ)、チームでは神戸製鋼、パナソニックとの対戦を心待ちにしていると話す。

 「いつもベストにチャレンジしたいと思っていて、いいチャレンジになると思う。簡単な試合などない。毎週しっかりとハードワークして臨みたい。難しい大会だからこそ、ワクワクしている。」

 サンゴリアスの土田雅人シニアディレクターは、「頼もしい選手。日々の行動が素晴らしく、ほかの選手への影響も大きい」と目を細める。

刺身や寿司、とんこつラーメン、焼肉が好きだというバレット選手。日本での生活はまだ1か月ほどだが、家族ともども楽しんでいるという。

「日本での生活はまだ短いけど、チームメイトとの関係もいいし、家族ともども日本での生活を楽しんでいる」と話し、1年のみとされている日本でのプレーについては、「いつか戻って来たいと思っている。シーズン後のことは分からないけど、機会は巡ってくるものだから」と話した。

サントリーは1月16日のシーズン開幕初戦では、アウェイでトヨタ自動車と対戦する。

 「チームは今、トヨタとの試合に向けて集中している。メンバー入り?もちろん狙っている」とサントリー新司令塔は語り、「次のプレーの選択をギリギリまで待って判断する。予測できない試合をしたい」と、プレーのイメージを膨らませている。

そしてこう言った。

「最終目標は2023年ラグビーワールドカップでオールブラックスとして貢献することだけど、まずは今シーズン、サントリーでトップリーグに優勝が目標だ。」

 バレット選手の新しいシーズンが始まろうとしている。