ワールドラグビー は、トランスジェンダー選手に関する既存のガイドラインの包括的かつインクルーシブな共同レビューを行った結果、その改訂版を策定承認しました。

新たなガイドライン[ここからアクセスしてご覧いただけます]は、安全かつ公平なプレーが可能であることを前提に、コンタクトスポーツである男子・女子ラグビーに参加するトランスジェンダーのアスリートに適用されます。

多くのスポーツと同様、安全とパフォーマンス上、男女の身体的な違いに基づき、ラグビーも男子ラグビーと女子ラグビーにそれぞれ分ける必要があります。トランスジェンダー女性のテストストロン量を抑えることによる男性としての身体的特徴への影響に関する最善のエビデンスを考慮し、トランスジェンダー 女性とラグビーで競う上での女性の安全と公正性は、現在においては保証できないという結論に達しました。

その結果、この改訂版ガイドラインでは、体格、力、パワー、そしてスピードが危険度やパフォーマンス左右する決め手となる国際レベルの女子ラグビーへのトランスジェンダー女性の 選手の参加を推奨していません。とは言っても、コミュニティーレベルのラグビーにおいて加盟協会がこのガイドラインを臨機応変に適用することを阻むものではありません。またトランスジェンダー 男性が男子ラグビーに参加することは許されています。

ワールドラグビー はガイダンスの定期的なレビューを行なっており、新たな証拠や研究結果に関して包括的かつ協働的な考察を行なっています。このレビューには、ラグビーにおける損傷リスクに関する研究など、ラグビー特有のトランスジェンダー 研究への資金援助やサポートも行っています。

このガイドラインは、DRアラバ・チントー率いる包括的かつインクルーシブなレビュープロセスを通じ、これまでのトランスジェンダー に関する規則が規定するテストストロン量抑制で、筋肉量、筋力、そしてパワーへの大きな影響は見られないという証拠が増えている中、包含(インクルーシビティー)と安全・公平とのバランスを取ることが可能かどうか検討した結果、改定策の承認となりました。

ワールドラグビー は3段階でレビューを行いました。

  1. 医学、生理学、心理学、リスク、社会倫理及びスポーツなど様々な環境についての理解を深める目的で、初めて多分野から専門家を集めた画期的なワークショップを開催し、トランスジェンダー コミュニティーの代表者や、プレーヤー、医学・研究専門家、またラグビーエキスパートらが参加。
  2. プレーヤーの身の安全が損なわれない形でのインクルーシビティーを目指すガイドライン策定への情報提供を行うため、ワークショップで得た結論や知識を包括的にレビューした。
  3. トランスジェンダー のアドボカシー団体や選手代表者、そして加盟協会からフィードバックを集めた。

 このレビュープロセスを終え、利用できる証拠に基づき、トランス女性が女子ラグビーに参加する際、安全と公平とインクルージョンとのバランスを取ることが不可能であるとの結論に達しました。

DRチントーは次のように述べました。「レビュープロセスは複雑かつ感情的なプロセスでしたが、やらなければならないプロセスでした。利用可能な研究結果やエビデンスに基づき、また、筋力、パワー、スピード、耐久力、そして衝突などラグビー特有の背景を鑑み、ラグビーにおけるインクルージョンを維持することが可能かどうかについて検討しました。この包括的かつインクルーシブなレビューを進める中で、強力なエビデンスが示す安全上無視できない問題が明らかになりました。」

「コミュニティーレベルのラグビーに関しては、加盟協会が自らの責任において個別の状況に応じ柔軟な検討を行うことができ、一方ワールドラグビー は、トランスコミュニティーがラグビーファミリーにとって歓迎される大切なファミリーの一員として今後も活発な活動を続けられるよう、インクルージョン戦略を優先事項の一つとして取り上げていきます。」

ワールドラグビー のサー・ビル・ボーモント会長も次のように述べました。「ラグビーは、あらゆる人を受け入れるインクルーシブなスポーツであり、今回の承認に関しては難しい決断となりましたが、それは損傷リスクという正当な理由から包括的な協議の末に下した決断です。しかし科学は常に進化しており、我々はインクルーシビティーを目指しこれらのガイドラインを定期的にレビューしていく所存です。」

 

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