昨年のラグビーワールドカップで初のベスト8入りをした日本代表が、その成果と勢いの下で更なるステップアップを期待していた2020シーズンだったが、新型コロナウィルス感染の世界的流行がその道を阻むことになった。

 当初、日本は11月にスコットランドとアイルランドとアウェイで対戦する予定だった。それが、感染拡大の影響で6~7月のウェールズとイングランドとの国内での対戦に続いて中止になっていた。また、欧州8ヵ国による国際大会が今年終盤に開催される話が持ち上がり、日本の参加も期待されていたが、それも渡航制限など制約が多く、参加困難として見送りとなっていた。

 9月14日のオンライン会見で日本ラグビーフットボール協会の岩渕健輔専務理事は、「2020年秋の代表戦については行わない、あるいは行えないという結論に至った」と述べた。

 秋の代表戦の実施については前向きに検討を進めた中で、対戦相手は昨秋のワールドカップの成績を受けてティア1レベルの国々を求めたことを明かした。

だが、日本代表の選手たちは新型コロナウィルス感染拡大を受けて、活動自粛から所属チームでの練習再開後も制約がある中での練習を余儀なくされてきている。特にジャパントップリーグが中断(その後打ち切り)となった3月以降、選手たちは試合から遠ざかっているのが実情だ。

岩渕専務理事は、「これらの国との対戦には最低限の準備が必要になる。その中でどういうトレーニングができるか、国内や海外でのトレーニングの可能性もオプションとして考えて、状況が変わるのを待ったが、想定した環境を作り出すことができなかった」と説明。「選手には十分な準備をした上でプレーしてもらう必要がある」と重ねて述べて、選手のコンディションと安全性を考慮した上での決定だと語った。

昨年のワールドカップでは日本代表の活躍に、新たなファンも増えて大きな盛り上がりを見せた。今年の代表戦へのファンの期待も大きくなっていた中で、一戦も行うことができずに終えることについて訊かれると、岩渕専務理事は、「問題意識は強く持っている。来年以降、みんなが見たいと思うような、ワクワクするような試合を組まないといけない」と答え、試合以外で「なにか、代表チーム、日本ラグビーが前に進む姿をお見せできるような」機会を作りたいと語った。

ジョセフHCはポジティブ面を強調

ニュージーランドからオンライン会見に出席したジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「今年試合ができないことは非常に残念だが、選手の安全を最優先すべきで、決断は正しい」と理解を示し、「新型コロナウィルス感染症はコントロールできるものではない。フラストレーションは感じていない」と淡々と話した。

その一方で、「ポジティブな面もある」として、選手たちが昨年のワールドカップまでタイトなスケジュールの中で多忙に過ごしてきたことに言及。「一息つく時間になった」と指摘した。

また、ワールドカップという大きな大会後にありがちな、選手の気持ちが萎えることもなく、「非常に高いモチベーションを見せていた。そのこともポジティブな点だ」と語った。

次の2023年ラグビーワールドカップへ向けた準備に影響がないか、気になるところだが、ジョセフ指揮官は、「2023年まではまだまだ時間は十分ある。もっと強くなった日本代表を見せたい」と述べた。

「来年のトップリーグ終了後にテストマッチがある。そこからの活動を目指したい。今年の秋がない分、大事な試合になる。その後、合宿を重ねて秋のテストシリーズに臨みたい。これまでの日本代表と変わらない」と話した。