ラグビーワールドカップ2019日本大会の成功を追い風に、今年1月下旬に新リーグ設立の骨子が公表されてから約4カ月。新たに日本の最高峰となるリーグの姿が見えてきた。

 これまでのジャパントップリーグとの大きな違いの一つは、チームには活動の中心となるエリアとホームスタジアムを確保させて、その地域との結びつきを求めている点だ。メインだけでなく準本拠地を認めることで、新たな地域での試合展開だけでなく、アカデミーなど下部組織の活動を通して選手育成や競技の普及につながることが期待されている。

 日本ラグビーフットボール協会で新リーグ法人準備室室長を務める谷口真由美氏は、従来のトップリーグのチームの活動エリア以外にも展開することで、「より多くの人がラグビーに接することができるようにしたい」と話し、「日本全国でラグビーを楽しめるリーグにしたい」と意気込む。

 ホームスタジアムの規模は15,000人収容以上とし、本拠とするチームが主催するホストゲームの開催率を最初の3年間は50%とする猶予期間を設け、4年目以降は80%とし、開催率には準本拠地を含めての展開も認めるとしている。

 しかし、日本の多くのスタジアムは自治体が管理しているとはいえ、すでにサッカーのJリーグなどで定期的に使用されているスタジアムが多く、参入希望チームにはホームスタジアムの確保が課題となりそうだ。

 この点について谷口氏は、Jリーグとの協力体制を築くべく非公式ながら協議を進めていることを明かし、各自治体にも理解を求めるために説明に出向く意向を示している。

 

3部制を想定

 新リーグのディビジョン構成は3部制を想定し、参入条件すべてに同意したチームが上位2部に、一部同意のチームが3部に入る予定。1~3部それぞれのディビジョンのチーム構成数は、今後行われる参入審査を経て決まる。審査はスタジアムなどの参入条件や競技力のほか、代表チームへの選手派遣の協力度なども加味される予定で、総合的に判断される。

谷口氏は1部と2部のチーム分けについて、「前シーズンが強かったというだけにはならない。1シーズン、おもしろいリーグとして戦い抜けるかも考えないとならない」と話し、ファンの興味を引く構成を考えている様子だ。

 選手の契約形態はラグビー専属のプロ選手だけでなく、トップリーグの経緯を考慮して正社員選手も認め、年俸の高騰化を防ぐためにサラリーキャップ制の導入も検討されている。

 

2021年秋開幕に遅れも

ただ、今年1月の新リーグ骨子発表以降の4カ月で、新型コロナウィルス感染症が世界的に流行。日本でも感染拡大防止のために外出自粛が求められ、トップリーグをはじめ様々な競技で大会や活動が延期や中止となり、政府の緊急事態宣言を受けて社会経済活動も大きく停滞する状況が続く。

影響は新リーグ設立準備にも及んでいる。4月末で一度終了していた参入チームの申請が、政府の緊急事態宣言の終了後1か月(現時点では6月末)まで、再び受付けられることになった。

緊急事態宣言が延長されるなど感染拡大が収束しない中、ホームスタジアムの確保を示す自治体の協定書など、参入申請に必要な書類の用意に各チームで時間がかかっていることを考慮した対応だ。谷口氏は、「やりたいという限りは待とうということで、チームと合意している」と話す。現在のトップリーグとトップチャレンジリーグ所属チーム以外に、新規の参入も期待している。

そして、当初は2021年秋に予定していた新リーグの開幕も、東京オリンピック・パラリンピック開催が1年延期された影響で、数か月先送りになる可能性が出てきている。

 谷口氏は、来年7月開幕のオリンピックに続いて行われるパラリンピックが9月まで開催されることに触れ、「直後のスタートは現実的ではない」と指摘。「2021年初秋は難しい。年明けの可能性もある」とする見方を示した。

 準備は思わぬ形で新型コロナウィルス感染拡大の影響も受けているものの、新リーグという形で日本のラグビーを新たなステージに押し上げたいとする思惑に、陰りや揺るぎは感じられない。参入チームが出揃えば、新リーグ設立の準備は次の段階に入る。