昨秋にアジア初開催となったラグビーワールドカップは南アフリカの優勝で幕を閉じたが、開催国の日本代表もアジア勢初の8強進出を達成し、大きな盛り上がりを見せた。ニールセンスポーツDNAの調査によれば、2019年日本大会はテレビ視聴率や試合チケット販売などで多くの好記録が生み出され、大会の成功が数値で確認されている。

 特に、日本在住の10人中9人が、ラグビーワールドカップ開催によって国を誇りに思う気持ちやワクワク感、絆といった意識を深めたと受け止めており、日本人の74%が大会開催で、より多くの子供たちがラグビーをプレーする機会になったと考えていると回答。ワールドカップ開催が、ホスト国の競技人気や発展にとって重要な役割を担っていることを示す結果となった。

興味深いのは、大会をフォローした人の50%が開催のその年になってラグビーに興味を持ったという点だ。大会への興味も、開催前年の26%から開催年には44%に大幅アップし、大会中には「にわかファン」という言葉も登場して、新しいファンの増加が注目を集めていたが、その傾向が改めて数字で示された格好だ。

また、日本代表を応援した54%の人々がラグビーワールドカップを見たのは初めてだったと回答。ラグビーワールドカップを2019年で最高のスポーツ大会と感じた人は、日本では70%、全体でも46%で、ほぼ2人に一人の支持を得た。

1987年に始まった4年に一度のラグビー界最高峰の大会は、これまでラグビー伝統国と呼ばれる地域で開催され、今回は初めてアジアで開催された。

大会9回目にしての新たな試みではあったが、調査に応じた一般の78%がラグビー伝統国以外での開催はラグビー競技の将来にとってポジティブなものと受け止めており、83%の人は将来の日本での主要ラグビー大会開催を前向きにとらえている。ラグビー伝統国ではない日本での開催をきっかけに、多くの人々の認識が変わったことが示されている。

 

好記録続出の2019日本大会

これ以外の数字でも、日本国内各地のファンゾーンには大会中にのべ120万人が訪れ、大会45試合のチケットセールスでは99.3%販売という、好記録を打ち出した。

大会中のテレビ視聴率では、日本代表が8強進出を決めたプール戦最後のスコットランド戦では瞬間最高視聴率53.7%を記録。実に5480万人が観たことになり、平均でも39.2%と高い数字をはじきだした。

世界でも、2019年大会は8億5700万人が視聴して大会歴代最高をマーク。4年前のイングランド大会から26%の増加となった。

中でも、南アフリカがイングランドに勝利した11月2日の決勝戦は、日本との時差がありながらも、ライブ中継の平均視聴では4490万人という過去最高の数字を記録。イングランド大会から83%の伸びを見せ、大会全体の平均でも63%の増加だった。

ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は、「2019年日本大会は素晴らしい大会の一つであり、この最新の調査により、大会開催は開催国にとって重要な価値をもたらすことが示された」とコメントしている。

 

新たなレガシー事業の展開へ

大会の試合チケット販売の好成績を受けて、3月10日に東京都内で行われた日本大会組織委員会の最後の理事会では、60億円台の実質的な黒字となる大会収支が報告された。

このプラス分はラグビー競技発展のための基金として日本ラグビー協会に引き継がれ、レガシー事業に充てられる。

具体的には、建て直しが予定されている秩父宮ラグビー場内への大会記念ミュージアム設立、地方自治体によるラグビーによる地域活性化活動、日本およびアジア諸国の競技の発展振興のための活動の3つが挙げられている。

また、地域活性化については新たに自治体連絡協議会が発足。試合開催やチームキャンプ地などを中心に全国で131自治体が参加している。協議会は橋渡し役として、競技の普及や地域振興、教育活動など、加盟各自治体でのラグビーに関わる活動をバックアップし、ラグビーの盛り上げを図るという。

大会組織委員会の嶋津昭事務総長は「頑張って、信じられないコラボをやってのけた」と話し、関係者に労いの言葉を送った。

大会成功について嶋津事務総長は、「日本代表が頑張ってくれたが、それだけではない。ラグビーというスポーツ、ラグビーの持っている魅力が日本人に評価されたということだと思う。心の中に浸み込んだと思うので、将来のラグビーの発展につなげてほしい」と話し、今後の競技の発展に期待を寄せていた。