準備期間は約4週間。短い準備期間も新しいメンバーがほとんどという構成も感じさせないほど、サンウルブズは前半から速いテンポでよく走り、積極的に試合を仕掛け続けた。

 前半9分に相手陣内深い位置で得たラックから展開し、最後はCTB森谷圭介選手がインゴールに飛び込んで先制した。レベルズがPGや2本のトライで点差を詰めるが、その都度、サンウルブズが得点を決めて突き放す展開で、前半を22-13で折り返す。

 さらに、後半早々にはFBジェームズ・ダーガヴィル選手が相手ボールを奪って約50メートルを独走。反撃を期す相手の出鼻をくじくトライで、SOガース・エイプリル選手のコンヴァージョンも決まって、サンウルブズが29-13とリード。フィットネスも良く、優位に試合を進めた。

 チームメイトの好ゲームを受けて、齋藤選手に出場機会が訪れたのは、後半19分だった。

足を痛めたSHルディー・ペイジ選手に代わってピッチに立つ。最初のプレーは敵陣深い位置まで攻め込んで得たスクラム。そこから出たボールを受けると、素早く右へ展開してエイプリル選手のトライにつなげた。

 さらに試合終了2分前には、後半半ばから2トライ2コンヴァージョンで点差を詰めてきたレベルズに自陣ゴール手前まで攻め込まれたところで、斎藤選手はスクラムからラックを繰り返して時間を使う展開に。最後はスタンドの10,426人の観客のカウントダウンの声援を受けながら、レベルズの攻撃を抑えて36-17で最後の笛を聴いた。

 「9点差で(残り時間が)2分ちょっとだったので、落ち着いていけた」と齋藤選手。「最初は緊張していたけど、やっていくうちに楽しくなった」と笑顔を見せた。

レベルズは昨季オーストラリアカンファレンスで2位。昨季チームをけん引したウィル・ゲニア選手とクウェイド・クーパー選手のハーフ団が近鉄ライナーズへ移籍してチームを離れたが、チームはオーストラリア代表8人を擁す。そのうち5人とフィジー代表NOイシ・ナイサラニ選手は昨年のラグビーワールドカップのメンバーだ。

 一方のサンウルブズは昨年までのチームと一変。ワールドカップを戦った日本代表は不在となり、外国籍選手も多くが入れ替わった。最古参は3シーズン目となるジョージア代表HOジャバ・ブレクバゼ選手という陣容だ。

だが大学4年の齋藤選手をはじめ、14番で先発したシオサイア・フィフィタ選手(天理大学3年)、同期で後半交代出場したCTB中野将伍選手(早稲田大学)は、激しさとレベルの高いスーパーラグビーでの戦いに挑む機会を得た。

前日には「緊張していた」という22歳の齋藤選手だが、「(他の)スーパーラグビーの試合に自分よりずっと年下の選手が出ているのを見て、自分にも不可能は全然ないなと思った」という。

そして、デビュー戦となったこの日の試合では、セットプレーに強いレベルズへの対抗策としてボールを積極的に動かすことや、攻守でメンバーに声をかけ、先発メンバーの疲労を感じて「リザーブで入る選手として、勢いづけよう」と心がけたという。

「試合に出させてもらったことはうれしい。全力でやった。勝つために何が必要なのか前日から考えていた」と話す齋藤選手は、デビュー戦の自身の評価を「まずまずかな」とした。

 早稲田大学で主将として大学選手権優勝に貢献。U20日本代表やジュニアジャパンでも活躍し、2018年には日本代表候補に名を連ね、サンウルブズにも練習生で参加した。今回晴れてスコッド入りして、グラウンド内外のすべてに刺激を受け、多くを学んでいると感じていると話す。

目標は2023年のワールドカップ。そこへ向けて、「いい一歩?そうですね。でも、ここからです。まだまだ高みを目指して頑張りたい」と気を引き締めていた。

RWC2019後のラストシーズン

 サンウルブズは、2015年のスーパーラグビー初参戦から昨シーズンまで、2019年ワールドカップを目指す日本代表の候補選手に海外の強豪とのプレー経験を積む場として機能してきた。その効果は、2019日本大会で日本初のベスト8入りに導いたジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチも認めている。

 だが、サンウルブズは今季限りでスーパーラグビーからの除外が決定済み、その最後のシーズンで、若手に経験を積ませる機会を維持しながら、チームとしてインパクトを残そうとしている。

 この日の試合へ向けて「テストマッチのつもりで準備をしてきた」という大久保直弥ヘッドコーチは、アシスタントコーチから昇格。初陣で日本人初のスーパーラグビー指揮官として白星スタートを飾った。

元日本代表でサントリーサンゴリアスも率いた経験のある新指揮官は、「自分たちのやるべきことをやり切ってくれた。30点獲りに行こうといっていて本当に36点取った。すばらしい」と選手たちのプレーを評価した。

 斎藤選手ら若手についても「このプレッシャーの中で、引き続き成長してくれれば」と期待を寄せる。

前半19分にラインアウトからのモールでチーム2トライ目を決めたブレクバゼ選手は、「ハードワークと4週間で準備してきたことを出せたことが勝因」と話し、若手の登場に「彼らは経験を詰めるし、チームは彼らからエネルギーを得ることができる」と喜び、望ましいシーズンのスタートだと話す。