1月6日から東京都内で始まった5日間の合宿には、先月発表になったトレーニングスコッド9人を含めた五輪代表第2次候補スコッドから、負傷で不参加になった1人を除いた27人が参加。オリンピックでの試合会場となる味の素スタジアムからほど近い多摩地区にあるグラウンドで、連日ハードなトレーニング内容に汗を流した。

 今回のメンバーには、副島亀里ララボウラティアナラ選手(コカ・コーラ)や小澤大選手(トヨタ自動車/日本ラグビーフットボール協会)、松井千士選手(サントリー)、藤田慶和選手(パナソニック)ら馴染みの顔ぶれに加えて、4年前のリオデジャネイロ・オリンピックで4位に入った日本代表チームの主将を務めた桑水流裕策選手(コカ・コーラ)も今回から名を連ねた。

 チームを率いる男子セブンズ日本代表の岩渕健輔ヘッドコーチは、「いつも五輪の状況をイメージしながらやっている」と話す。

 合宿の中日にはメンバー内で3チームを編成して紅白戦を実施。午前1試合、午後1試合、そして夕方にトレーニング時間を設け、1日でブレイクを挟んで1、2試合を行う大会本番のスケジュールを想定した設定にし、選手のリーダーシップを促すために、準備やウォームアップの内容などを選手の自主性に任せて行った。

 岩渕ヘッドコーチは、「戦術はもちろんだが、最終的にはメンタル面の安定がプレーに非常に大きな影響を及ぼすので、練習でもいろいろな負荷をかけながらやっている」として、1試合14分の試合時間で、選手が自主性を持って冷静に戦えるためのトレーニングの一環と説明。さらに、「1試合目が良くても2試合目が落ちたり、ということでは大会で結果を出せない。続けて安定したパフォーマンスを選手に求めている」と話した。

 男子セブンズ日本代表は、昨年7月の五輪代表メンバーの第1次候補選手発表後、本大会と同じ期間に試合会場を使った練習など、シミュレーション合宿も行った。

 8月下旬から9月末までの1ヵ月にはアジアセブンズシリーズ全3戦に出場し、第2戦中国ラウンドこそ3位だったが、第1戦韓国ラウンドと第3戦スリランカラウンドを制して、女子セセブンズ日本代表とともに総合優勝。11月にはオセアニアセブンズに参戦し、プール戦でニュージーランドに勝利するなどで3位に入った。

 しかし、12月に始まった今季のHSBCワールドラグビーセブンズシリーズでは、思うような結果はまだ出せていない。12月5日からのドバイでの開幕ラウンドは4戦全敗で最下位に沈み、1週間後のケープタウンでの第2ラウンドでもプール3戦全敗だったが、最後に15位決定戦でウェールズに勝って、ようやく今季初勝利をマークした。

 昨季、シリーズ残留を果たせなかったため今季はゲスト参加という事情はあるが、今夏のオリンピックでのメダル獲得を考えると、芳しい結果ではない。男女セブンズ日本代表を担当する日本ラグビーフットボール協会の本城和彦強化委員長も、「惨敗」と厳しい評価だ。

だが指揮官は、この2ラウンドで多くの選手を起用し、「オリンピックまでに選手の層をもう一度上げて、競争を高めながらやりたいと思っているので、前向きな結果だと思っている」と振り返る。

そして、4年前のリオデジャネイロ・オリンピックでの4位という成果を引き合いに、「7人制はパフォーマンスをコンスタントに発揮するのが非常に難しい競技。だからこそ我々にもチャンスがある」と言葉に力を込めた。

5月末をめどにメンバー絞り込みへ

 今後は、チームは1月25、26日にニュージーランドのハミルトンで行われるワールドシリーズ第3ラウンドと、その翌週の2月1、2日にシドニーでの第4ラウンドに出場する。

 また、来季のワールドシリーズ出場権を懸けて昇格大会に臨むが、今回から予選方式が変更。ワールドラグビーセブンズチャレンジャーシリーズとして2月にチリとウルグアイで開催される大会に出場し、2大会の上位8チームが4月上旬に香港で行われる同プレーオフ大会に進出し、優勝でコアチーム入りを目指す。

 その後は4月25、26日に東京で開催されるアジアセブンズインビテーショナル2020に日本代表候補選手らによるチームで出場。そのほかにも、いくつかの大会に参戦する可能性があるという。

 指揮官は、これらの大会や毎月予定されている合宿を通してチーム強化を図りながら、選手の絞り込みを行い、本大会のメンバー12人を決定する前に、5月末をめどに候補選朱第3次スコッドを発表する意向を示している。

岩渕ヘッドコーチは言う。

「五輪開幕まで200日を切って、日に日に緊張感も高まってきている。今回のラグビーワールドカップは、今まであまりラグビーに馴染みのなかった方々にも見ていただく機会になった。オリンピックでは多くの競技の中の1つとしてプレーする。より一層、自分たちが存在感を出さなくてはいけない」

東京オリンピックでの男子セブンズ競技は、7月27日から29日まで行われる。なお、女子競技は7月30日から8月1日までで、いずれも東京の味の素スタジアムにて行われる。

男子7人制日本代表第2次オリンピックスコッド:

小澤大(日本ラグビー協会/トヨタ自動車)、桑水流裕策(コカ・コーラ)、合谷和弘(日本ラグビー協会/クボタ)、後藤輝也(NEC)、坂井克行(豊田自動織機)、ジョセ・セル(日本ラグビー協会/北海道バーバリアンズ)、副島亀里ララポウラティアナラ(コカ・コーラ)、トゥキリ ロテ(日本ラグビー協会/近鉄)、トロケ マイケル(日本ラグビー協会/NTTコミュニケーションズ)、橋野晧介(キヤノン)、羽野一志(NTTコミュニケーションズ)、林 大成(日本ラグビー協会)、彦坂匡克(トヨタ自動車)、藤田慶和(日本ラグビー協会/パナソニック)、ポーク コリン雷神(日本ラグビー協会/リコー)、松井千士(サントリー)、本村直樹(ホンダ)、山内俊輝(日本ラグビー協会/リコー)、吉澤太一(コカ・コーラ)

男子7人日本代表制トレーニングスコッド:

石垣航平(コカ・コーラ)、石田吉平(明治大学)、大石力也(NEC)、加納遼大(明指示安田生命)、津岡翔太郎(コカ・コーラ)、中川和真(キヤノン)、中澤健宏(リコー)、野口宜裕(セコム)、ヘンリー ブラッキン(NTTコミュニケーションズ)