日本は今年7月には2017年の女子ワールドカップ以来2年ぶりのテストマッチでオーストラリア女子代表と2連戦を実施。結果は5-34、3-46の2連敗に終わり、今年1月からチームを率いるレスリー・マッケンジーヘッドコーチの下、新体制での初勝利はお預けになったが、チームは自分たちの現状をチェックして立ち位置を確かめた。

 キャプテンを務めたPR南早紀選手(横河武蔵野アルテミ・スターズ)は、2015年5月の代表デビューから、その遠征で2キャップを加え、現在14キャップを保持。新たな体制になって選手も多く入れ替わり、今回11月の遠征スコッド32人中、7人(バックアップ2人を含む)がノンキャップという若いチームで、二桁キャップ保持者は9人と少数派だ。2017年アイルランド大会を経験した顔ぶれは12人という構成で、そのうちの一人である南選手は23歳ながら、強いリーダーシップを発揮する存在になっている。

福岡出身の聡明なプロップは、今秋日本で行われたラグビーワールドカップ男子日本代表や世界トップチームの活躍を目の当たりにして大きな刺激を受け、自身とチームのステップアップ、女子ラグビーを含めた日本ラグビー全体の注目度アップを期待する。南選手に話を訊いた。

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―現在チームが取り組んでいることは?

 チームのベースづくりが一番でしょうか。今年1月からチームで合宿を重ねてきました。今は7月のオーストラリアとのテストマッチ2戦で出た課題を克服しつつ、自分たちがワールドカップへ向けて戦っていくための土台を少しずつ積み上げていっているところです。

―メンバーも2017年ワールドカップから入れ替わり、7月の遠征は2年ぶりの対外試合でもあった。難しさや手応えは?

 スコア的にも結果としてはやられてしまいましたが、自分の中では自分たちの可能性を感じました。今後、予選からワールドカップ本戦へ向かうことを考えると、自分たちの伸び代を感じました。

―伸び代を感じたのはどういう部分?

 日本の女子は体が小さくて不利なところがありますが、ディフェンスのタックルでは前に出ることで相手にプレッシャーをかけることができましたし、ハードワークすることで数的優位に立って少しずつゲインをしていく場面も見られました。そういうところを伸ばしていけば、必ず世界の強豪国とも戦っていけると感じています。

―課題は?

 あの遠征では13人が初キャップで、経験値では他国に劣っています。テストマッチの試合経験もですが、ラグビーの経験値、ラグビーの理解をみんなで高めていくことは必要です。

―そのギャップを埋めるための取り組みは?

 「前回より次の合宿をクオリティの高いものにしよう」とチームで話しています。合宿終盤にはチームがすごく良い状態になっていくので、次の合宿はそのレベルからスタートしたい。それをゼロにしてしまうと成長が途切れてしまうので、各自で復習してくることをチームのみんなで共有しています。各合宿で新しい選手が加わっても、同じレベルで合宿や試合に臨めるように、声掛けもしています。

私たちは若いチームで初キャップの選手もすごく多い。2017年の時とは違うチームとして一から文化を作っていかなくてはなりませんが、徐々に、みんなで作り上げていければいいと思っています。

―どんなチーム文化に?

 男子代表チームがワールドカップで見せたように、勝てばたくさんの方の応援を得て注目度も変わってきます。勝てる強いチームというのは最大の目標ですが、強さの中にも仲間同士の絆があるように、選手でもスタッフでも繋がりを大切にしたいです。

―7月の遠征を踏まえて、今回の遠征にはどう臨みたい?

 既にテストマッチ2試合で負けているので、勝ちにいきたいという思いがありますが、それ以上にこの遠征が、チームが成熟して強くなるためのステップになればと思っています。

 海外で試合をするということは、現地の食事や生活、文化に触れながらの戦いです。2021年のワールドカップはニュージーランド開催で、その予選もおそらく海外だと思うので、海外の環境の中で自分のコンディションを整えて、チーム力や組織力を上げていくことがチームに必要だと思います。

―イタリアとは2年前のワールドカップでも対戦したが?

 あの時は、中3日や4日での予選3試合を終えてみんな心身共に疲れている状態だったので、それが結果(0-22)に出たと思います。今回はまずスコアしたい。イタリアも新しいチームだと思いますが、自分たちも変わって進化しているところは示したいですね。

―リカバリーも改善点?

今は、これまで以上に自分の体と向き合えていると思うので、2017年よりは成長していると思います。それに、チームに信頼関係が築けていれば、きつい状況でも仲間を信じることや互いに協力し合うことができるので、そこは強化していく必要があります。お互いに指摘し合える環境や信頼関係を築いて、選手全員の知恵を絞ってチームを作り上げていきたい。

―今回のラグビーワールドカップ日本大会は刺激に?

 はい、影響大です。自分があの場に立ったらと考えるだけで、すごくワクワクすると思いました。あの場でしか味わえない感覚があったと思うので。

大会の試合は何回も見て、常にチェックしています。日本は他国に比べて体が小さくて、平均体重でも落ちますが、その中でアイルランドなどティア1の強豪国からペナルティを取ったところはすごいと思いますし、自分もこうありたいと思いました。

 今回のラグビーワールドカップをきっかけに、ラグビーを知った人や初めて競技を見た人もたくさんいると思います。女子ラグビーやウィルチェアラグビーもあるので、男子ラグビーと一緒に、いろいろなラグビーを多くの人に知ってもらい、日本ラグビー全体が盛り上がってほしいです。

―男子とダブルヘッダーでの試合開催を望む声もあるが?

 以前は何回か、男子の試合の前に女子の試合をやったこともあったんですが、最近減ってきているので、またそれを復活させてほしい。組織が違うのでいろいろな問題があるとは思いますが、いろいろな構想や夢をみんなで語って、それを広めていきたいと思います。

 世界では、各国で女子ラグビーの人口が増え続けていると感じています。男子ほどテストマッチの数は多くないですが、どんどん増やして、ワールドカップ以外に国際試合の機会がたくさん増えるといいと思います。

―現在の世界勢力図の中で日本の位置づけは?

 トップ4がすごく強いですが、それ以外は入れ替わってもおかしくないと思っていますし、ゆくゆくは自分たちがトップ4に食らいつくようなチームになろうとしています。そのために、強いチームになる、常勝軍団になっていくことがどういうことなのかを、日本ラグビー、女子ラグビーとして考えてくことも必要だと思っています。