【東京・11月1日】2度目の優勝を狙うイングランドと3度目の栄冠を目指す南アフリカの顔合わせとなったラグビーワールドカップ2019を締めくくる決勝戦が2日午後6時から横浜国際総合競技場で行われる。

2003年大会以来の頂点を狙うイングランドは、北半球のチームとして唯一ワールドカップ制覇を経験したチームとして、ラグビー界の序列に新たな足跡を残すべく南半球勢からの勝利を目指す。

一方、強力なフォワード陣を擁してイングランドの前に立ちふさがる南アフリカには、エディー・ジョーンズ監督率いるイングランドの野望を打ち砕く底力がある。いずれにせよ、対照的なプレースタイルのぶつかり合いが見られる興味の尽きないゲームとなるだろう。

開催国の日本とっては、初の8強入りを果たしてラグビー伝統国の牙城に風穴を開けた、記憶に残る大会のフィナーレとなる。

イングランと南アフリカ。両者のワールドカップでの対戦は、南アフリカがイングランドを下した2007年のファイナル以来となる。パリでのその試合は、15-6でスプリングボクスに軍配が上がり、イングランドの連覇を阻んだ。

2007年の優勝メンバーのブライアン・ハバナ氏は、南アフリカが再び栄冠を手にすることになれば、母国にとって初優勝を果たし、ネルソン・マンデラ大統領がスプリングボクスのジャージーの袖に手を通した「1995年よりもっと大きなインパクトを与える」と話す。

今大会でフランカーを務めるシヤ・コリシが、南アフリカはもちろん、全チームを通じてワールドカップ史上初めて優勝チームを率いた黒人の主将となることで新たな歴史をつくり、国民の結束を高めることになるからだ。

ジョーンズ監督は、ここ数週間でイングランドを世界ランキング1位へと導くなど鮮烈な印象を残しているが、もちろんそれだけでは、彼自身や選手たちは決して満足することはない。もし横浜で南アフリカに勝てなければ、日本での7週間とそれまでの4年間の準備は失敗だったと評価する向きも多いだろう。

それは、先週末の試合後の反応からも十分伝わってきた。イングランドは下馬評を覆し、3連覇を目指すニュージーランドを圧倒。2003年大会の優勝メンバーのローレンス・ダラーリオ氏に「しばらくの間、あるいはこれまでで最も完璧な試合」と言わしめた。

ただし、主将のオーウェン・ファレルは、試合終了のホイッスルが鳴ると喜びを抑えて敗れたニュージーランドのジョーディー・バレットを慰めた。かつてブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズを指揮したイアン・マクギーチャン氏はその姿が印象的だったと語る。

「(喜んで)拳を突き上げることもなく、これ(オールブラックス戦の勝利)が最大の目標だと思っていたような素振りも見せず、ただ単に最終地点に至る道すがらの一つの重要なポイントを通り過ぎただけ、という認識だけだった。それがとても良かった」

南アフリカは、大会初戦でオールブラックスに敗れており、敗戦を喫したチームが初めてウェブ・エリス・カップを掲げるという点でも歴史がつくられることになる。オーストラリアを準々決勝で破ったイングランドは、南アフリカを下すと南半球の強豪4カ国すべてを1カ月の間に倒したことになる。

プールステージのアルゼンチン(39-10)を皮切りに、オーストラリア(40-16)、ニュージーランド(19-7)を撃破してきた。オールブラックスの選手たちは、点差以上に内容的に完敗だったことを認めている。

イングランドが北半球唯一のワールドカップ優勝国であるのに対し、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカは合わせて7度制覇している。北半球勢2度目となる優勝が、ここ2年6カ国対抗で5位と2位に終わっているチームによってもたらされれば、欧州ラグビーがにわかに活気づくことだろう。その中には、次回の2023年大会開催国のフランスも含まれる。

南アフリカが栄冠を手にした過去の2大会の決勝は、いずれもノートライで決着している。1995年のニュージーランド戦、2007年のイングランド戦ともキックが支配した。今大会で得点王を手にする可能性を残すハンドレ・ポラードは、07年決勝で活躍したエースキッカーのパーシー・モンゴメリーに続きたいところだ。ポラードは「蹴り合い」の末に競り勝ったウェールズとの準決勝で14点をマークしている。

戦術のオプションが限られている感のあるラッシー・エラスムス監督率いるスプリングボクスに対し、ジョーンズは、より幅の広い展開が可能な「オールコートゲーム」で対抗できると考えている。

だがエラスムスは、スプリングボクスの特徴を生かしたクレバーな戦術を駆使して決勝まで勝ち上がってきた。ハーフバックのポラードとファフ・デクラークの戦術的キックを強力なフォワードパックに供給しつつ、後半にフレッシュかつ強力な交代選手をフィールドに送り込んで試合を確実に終わらせている。

今大会で最も守備の堅い2チームの対決となることから、緊迫しつつも慎重な展開が予想される。

対戦成績

42戦 南アフリカ25勝 イングランド15勝 2引き分け

スポットライト

国際審判として最後の試合となるフランス人のジェローム・ガルセスが、ここまで素晴らしいワールドカップとなった今大会のフィナーレの笛を吹く。副審とビデオ判定(テレビジョンマッチオフィシャル=TMO)のサポートを受け、ブレークダウン、スクラムとオフサイドラインなどをどう裁くか。結果だけでなく、世界中に中継されるラグビー界最大のイベントのクオリティーにも大きな影響を及ぼすことになる。画期的な大会の最後にふさわしい舞台は整った。

チームニュース

足首のけがから復帰したチェスリン・コルビは右ウィングで先発する。不安定なプレーを繰り返しているウィリー・ルルーの代役としてフルバックでの起用を望む声も多かった。

南アフリカのバックスリーは、イングランドの同ポジションの3人と比べて身長が低く、空中戦の成否の大きなポイントになるかもしれない。エラスムス監督は、今回も6人のフォワード、2人のバックスをベンチに置いた。

イングランドは、ボールキャリーができるプロップのカイル・シンクラーが脚のけがから回復し、同じくコンディションが懸念された主将のオーウェン・ファレルとウィングのジョニー・メイとともに先発復帰する。

唯一のメンバー交代は、ベンチスタートのメンバー。負傷離脱したウィリー・ハインツに代わって10月28日に日本に到着したスタンドオフのベン・スペンサーが入った。 

スタッツ&トリビア

イングランドチームの平均年齢は27歳と60日。ラグビーが本格的にプロ化した1996年以来、決勝に臨むチームとしては最年少となる。ここまで5試合43失点で、1試合平均8・6失点は今大会最少。南アフリカも大差なく、6試合55失点で平均9・2失点となっている。

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