【東京・10月31日】3連覇の望みがついえたニュージーランドと悲願の決勝進出がかなわなかったウェールズ。3位決定戦を制しラグビーワールドカップ日本大会を勝利で終えるのはどちらだろうか。11月1日午後6時に東京スタジアムでキックオフを迎える。

敗戦後一週間も経たないうちに、痛んだ体と心を奮い立たせて、本来は避けたかったはずのこの試合に臨むことは簡単ではない。

しかし、ニュージーランド出身の2人の名将のラストゲームとなれば、意味合いは違ってくる。それぞれのラグビーの歴史、国の誇りを胸に、去り行く英雄の花道にふさわしいパフォーマンスで今大会を締めくくられるか。勝敗がどう転ぼうが、試合後の涙は避けられそうにない。

ニュージーランドのスティーブ・ハンセン、ウェールズのウォーレン・ガットランド両監督は、2017年のブリティッシュ・アンド・アイリッシュ・ライオンズのニュージーランド遠征(写真)でも対戦した。数字の上では、ニュージーランドとウェールズという2つのラグビー強国を率いた指揮官の中で、それぞれ最も優秀な成績を残してポストを退くことになる。

この試合ではまた、オールブラックスの一員として2011、15年両大会で優勝を経験し127キャップ目を刻むキーラン・リード主将、15年大会でともに頂点に立ったベン・スミスとソニービル・ウィリアムズ、ライアン・クロティ、マット・トッドがテストマッチから引退する。

ウェールズではロビン・マクブライド・フォワードコーチとショーン・エドワーズ・ディフェンスコーチに加え、主将のアルンウィン・ジョーンズがオールブラックスの名選手たちとともに国際試合の舞台から去る。143キャップは、イタリアのセルジオ・パリセを抜きラグビー史上単独2位の大記録だ。

ウェールズは1953年の勝利以来、66年にわたってニュージーランドに対し30連敗中。この不名誉な記録を終わらせるチームの主将がジョーンズとなれば、これ以上ふさわしい選手はいないだろう。ただし、敗戦直後のオールブラックスは、相手に猛攻を浴びせることでも知られている。

イングランド戦の敗北がニュージーランド代表のワールドカップの歴史の中で最も屈辱的なものの一つであることを考えると、ウェールズは相応の覚悟を持って試合に臨んだ方が良さそうだ。

準決勝で敗れた直後は、3位決定戦には出たくないと話していたウィリアムズが、ものの10分も経たないうちに気持ちを新たにし、やる気に満ちた姿勢を見せていた。これこそオールブラックスである。

さらに、デーン・コールズが公の場で涙に暮れるなど、ハンセン監督や選手の率直な感情があふれ出た異例とも言える今週のオールブラックスの姿からは、金曜の夜のこの一戦にすべてをぶつけて勝利を目指すこと以外に、傷つけられた誇りを保つ方策はないことがうかがい知れる。

ここ数か月、運に見放されているかのようなウェールズにとっては、気の遠くなるような試合かもしれない。6カ国対抗でグランドスラムを達成し、世界ランキングでも一時、1位に上り詰めて臨んだ今大会では、負傷による戦線離脱が続いた挙句に、準決勝の南アフリカとのゲームでは、試合時間残りわずかのところで決勝点を許した。決勝に手が届くところまで行ったという事実だけでも快挙と言えるかもしれない。

「ウェールズのプレー人口(の少なさ)を考えれば、いくつも上の階級のチームと戦っていた」とは、ガットランド監督の準決勝の後のコメント。「指導者としての成功は勝つことだけではない。チームとしてどれだけ期待以上に勝ち続けられるか。それは間違いなくできた」

ウェールズを率いて残した輝かしい12年のキャリアを勝利で終えられるか。それとも元ウェールズ監督でもあるハンセンがオールブラックスでの通算成績を107戦93勝にまで伸ばして花道を飾ることができるか。目の肥えたラグビーファンならずとも、なかなか見られない名監督同士のテストマッチ最後の対戦となる。

対戦成績

34戦 ニュージーランド31勝 ウェールズ3勝

スポットライト

ここまで今大会最多の6トライを挙げているウェールズのウィング、ジョシュ・アダムズ。簡単ではないが、2トライを挙げるとジョナ・ロムー(1999年)、ブライアン・ハバナ(2007年)、ジュリアン・サベア(2015年)と1大会最多トライ記録保持者として肩を並べる。

チームニュース

負傷者が続出しているウェールズは、ガットランド監督が出場登録メンバー9人を入れ替えるなど、厳しいチーム事情を抱えている。一方、ニュージーランドは先発7人を変更。ウィングのリコ・イオアネやベン・スミスを先発で起用するなど、ハンセン監督にはまだ駒が残されている。 

スタッツ&トリビア

ニュージーランドにとっては、ワールドカップで経験する4度目の3位決定戦となる。1991年大会はスコットランド(13-6)、2003年はフランス(40-13)を下しているが、1999年は南アフリカ(18-22)に敗れている。ウェールズは1987年の第1回大会でオーストラリア(22-21)を下している。

両チームの対戦は、ニュージーランドの3戦3勝。直近の対戦は2003年で、オールブラックスが、当時ハンセン監督の指揮下にあったウェールズを53-37で破った。1987年大会準決勝ではニュージーランドが49-6で大勝し、ウェールズにとっては現在もワールドカップ最大の敗戦となっている。

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