【東京・11月1日】史上最もワンダフルなラグビーワールドカップとなった日本大会で、あなたが選ぶ最高のプレーヤーは誰?

チェスリン・コルビ(南アフリカ)のような小柄な選手からマロ・イトジェ(イングランド)のような巨漢まで、プレーヤー・オブ・RWC2019にふさわしい選手たちは、さまざまな体型とサイズの持ち主だ。

大会に彩りを添えた極上の7人を選んでみた。

マロ・イトジェ(セカンドロー、イングランド)

ゲームのあらゆる局面において真に傑出した働きを見せた。イングランドを12年ぶりに決勝へと導いたヒーローであり、その活躍は、ラグビー界において比類なきフォーワードとしてのイトジェの評価を一段と高めることになった。10月28日に25歳の誕生日を迎えたイトジェのプレーは、今大会で新たな高みに達し、準決勝のニュージーランドとのゲームで披露した彼のプレーを上回るパフォーマンスを見せた選手はいない。まるで望遠鏡のように伸び縮みするかのような腕が獲得したターンオーバーは大会最多の10本に及び、ラインアウトのボールを22回キャッチ。身体能力を生かしたラックのヒットもほかの誰よりも多い。

「彼はとても厄介だ」とは、オールブラックスのスティーブ・ハンセン監督の特上の褒め言葉だ。「彼はアスレチックかつ賢い選手だ。適応能力があり、見るもの感じるものに対応する能力がある。これからも活躍し偉大なプレーヤーになる可能性を十分に備えている」

福岡竪樹(ウィング、日本)

福岡を「双子のフェラーリ」の相棒である松島幸太朗と切り離して考えることは難しい。プレーヤーオブザマッチに輝いたスコットランド戦での目がくらむような福岡の2トライの活躍は、彼に対する注目度を高めたかもしれないが、同時にそれは少しばかりラグビー界の失望をも招いた。なぜなら、一人のプレーヤーとしての彼の才能を目にする時間はさほど残されていないからである。27歳にして福岡は、家系の血筋を継いで医学部で学ぶことを決意している。

前日本代表監督でイングランドチームを率いるエディー・ジョーンズ監督が南アフリカの往年の名選手、ブライアン・ハバナに匹敵すると評したこともある福岡にとって、国民的なヒーローとなるチャンスは少なくともあと1回残されているようだ。7人制代表がプレーする東京オリンピックがその舞台である。

アルンウィン・ジョーンズ(セカンドロー、ウェールズ)

あなたが世界選抜チームを編成しその主将を選ぶとすれば、ウェールズ代表のレジェンド、アルンウィン・ジョーンズほどふさわしい選手はいない。負傷者が続出し不運に見舞われたウェールズ代表チームをまとめ上げた手腕が光る。またしても接戦を落として悲願の決勝進出を逃した南アフリカとのゲーム後のジョーンズのうつむいた表情からは、34歳にして今大会に賭けてきた彼の落胆ぶりが伝わってきた。70本のタックル成功は今大会で他の誰よりも多い。

「インクレディブル(信じられないほど素晴らしい)アスリート、インクレディブルプレーヤー、インクレディブルリーダー」とアシスタントコーチのニール・ジェンキンズはジョーンズをたたえる。「私は、99パーセントのアルンウィン・ジョーンを知らない。100パーセントのアルンウィン・ジョーンしか知らないんだ」

セミ・ラドラドラ(ウィング/センター、フィジー)

ここで紹介する7人のプレーヤーのうち、ただひとりプールステージで姿を消した。それだけにこの飛翔せんばかりにフィールドを疾走するフィジーの俊足プレーヤーが残したインパクトは強烈で、単純に無視できないものだった。2試合でプレーヤーオブザマッチに選ばれ、4試合合計で400メートルを駆け抜けた。クリーンブレークを8度記録し、計29人のディフェンダーをかわした。インサイドからでもアウトサイドからでも相手を交わすのはもちろんのこと、正面からでも相手を吹き飛ばして突進を続けることだろう。

「セミ・ラドラドラは何というプレーヤーなのだろう」とイングランドのジョーンズ監督は驚きを隠さない。「ワールドカップの場でパワフルかつスピードにあふれ、抜け目のない彼のプレーを見るだけでもぜいたくな体験だ」

ボーデン・バレット(フルバック、ニュージーランド)

究極的には、ワールドプレーヤーオブザイヤー(世界最優秀選手)の栄誉を2度手にしたボーデン・バレットを止めたのはイングランドの「偉大な白い壁」だった。それでもバレットは、フルバックのポジションから持ち前のブレークを披露し、ボールキャリーでゲーム最長となる74メートルを走った。

消耗の激しいウェールズが相手となる3位決定戦で、バレットが東京スタジアムのピッチで78メートルのボールキャリーを達成すれば、オーストラリアのウィング、マリカ・コロイベティの449メートルを抜いて今大会最長となる。今回は優勝を逃したが、偉大なプレーヤーであることに疑う余地はない

 サム・アンダーヒル(フランカー、イングランド)

サム・アンダーヒルとトム・カリーがイングランドのバックローで組んでいる破壊的かつ効率的なパートナーシップを考えると、そのうちの一方しか選ばないのは少し酷な気がする。ともにダイナミックなアスリートで、オーストラリアとの準々決勝ではバックローのレジェンド、マイケル・フーパーとデービッド・ポーコックをしのぐパフォーマンスを見せ、準決勝はニュージーランドの名士アーディー・サベアとサム・ケーンに鋭さで勝った。

2人でここまで計114タックルを浴びせているが、キーラン・リードやジョーディー・バレットといった名選手を容赦なくひっくり返した衝撃の大きさでアンダーヒルがわずかに上回る。準決勝でのアンダーヒルとカリーは、まさにイングランドがオールブラックスを支配する象徴のように思えた。

ピーターステフ・デュトイ(フランカー、南アフリカ)

チームとしてのパワーに関しては折り紙つきのスプリングボクスにあって、その踊るようなフットワークでプールステージにおいて恐らく最も目を引く存在だったのがチェスリン・コルビだろう。ダミアン・デアレンデのピッチ中央でのタックル、スクラムからファフ・デクラークが見せた電光石火のひらめきあふれるプレーも注目に値するが、一番の象徴となれば、スプリングボクスの「機関室の心臓」とも言うべきピーターステフ・デュトイだろう。50タックルを浴びせるなど守備面で傑出しており、ゲインラインを超えるべく強引に突破を図る様は、稲妻が走っているかのようだ。

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