【東京・10月28日】ラグビーワールドカップ準決勝の2試合は、どのチームもなかなかトライが奪えず、キックが勝敗の鍵を握るタイトな展開となった。

イングランド、ニュージーランド、ウェールズ、南アフリカの4チームが挙げたトライはそれぞれ1本ずつ。エースキッカーの存在がゲームの行方を左右し、南アフリカとイングランドのプレースキック戦術が功を奏した。

27日の試合ではハンドレ・ポラードが4本のペナルティーゴール(PG)と、ダミアン・デアレンデのトライに続くコンバージョンゴールを決め、スプリングボクスを決勝へと導いた。

南アフリカとウェールズ双方がトライを奪うチャンスを作り出せない中で、デアレンデが56分にこの試合の初トライを挙げる。両チームはそれまでキックによる得点チャンスをうかがいつつ試合を運んでいた。

ハーフタイムまでに両チームが敵陣22メートルラインの内側に侵入したのはそれぞれ2度にとどまっている。

ウェールズはその「レッドゾーン」に入り込んだアタックを2度ともダン・ビガーのPGに結びつけた。一方で南アフリカは、ドゥエイン・フェルミューレンのノックオンとポラードによるPGという結果だった。ポラードはまた、22メートルラインの外側で得たPGを前半2本決め、南アフリカに9-6のリードをもたらしている。

その後試合は、ウェールズが南アフリカの2度のリードを跳ね返して16-16で終盤を迎える。試合時間が残り5分となった時点で、スプリングボクスはペナルティーを獲得し、それまでキックの精度を欠いていたポラードがここ一番という局面で44メートルの決勝ゴールを決めた(下の動画)。

準々決勝までのポラードのゴール成功率は63パーセントだったが、この日はゴールキック5本をすべて決め、本来の調子を取り戻しただけでなく、チームの決勝進出の立役者となった。

大方の予想通り「蹴り合い」となったこのゲームではまた、リース・パッチェルが長い距離のドロップゴールを試みた。不成功に終わったが、決まっていればウェールズの決勝点になっていたかもしれない。ポラード、ビガー、リー・ハーフペニーのキック成功率は100パーセントを誇り、それぞれが世界でも指折りのプレースキッカーという評判通りのパフォーマンスを披露した。

対照的に、26日の試合でイングランドは「まずトライありき」という戦術で攻撃を組み立てた。試合開始直後のトライ以外はニュージーランドのインゴールを陥れることができなかったが、イングランドはゲームを支配し、オールブラックスにスコアボードの数字を簡単に動かすことを許さなかった。

イングランドは、前半25分までに敵陣の22メートルラインの内側に7度侵入したが、それらのアタックから奪った得点は7点にとどまった。33分のジョージ・フォードによるドロップキックはゴールには至らなかった。

しかしその6分後、フォードは47メートルの距離からPGを決め(下の動画)、イングランドはオールブラックスを10-0と引き離す。

ラグビーの国際試合で10点差を逆転するのは難しい。13点差となればなおさらのこと。後半開始早々、フォードはゴール正面で得たPGを決め、リードを13-0に広げる。

その後、イングランドのラインアウトのミスからニュージーランドがトライを決めて13-7と詰め寄るが、すぐにフォードがPGを加えて9点差とし、後半29分にはさらに44メートルのPGを成功させて(下の動画)19-7と試合を締めくくった。

準決勝2試合は、趣こそ異なるものの、見どころあふれるゲームが繰り広げられた。ゲームに対して正反対のアプローチが展開されたとも言えよう。だが、スコアシートに偽りはない。いずれの試合も最後はキッカーこそがキングだった。

RNS sdg/ar/mi