【東京・10月16日】「メン・イン・ブラック」に対して善戦しながらもあと一歩、勝利に結びつけられなかった「メン・イン・グリーン」。その忍耐が報われたのは2016年、29度目の挑戦だった。その後2018年にも勝利を挙げたアイルランドは、ワールドカップ準々決勝という大舞台でニュージーランドに対し史上3勝目を狙う。

111年間勝ち星なしというのはスポーツの国際試合の中でまれに見る記録。アイルランドがその暗闇から抜け出すまでの記録を振り返ってみよう。

1963年12月7日/ダブリン
アイルランド5-6ニュージーランド

1905年、ニュージーランドとの初対戦では15点差で負けたアイルランド。さらに1924年には6点差で敗戦。1963年に行われた試合では、ついに勝てるかと思われる瞬間があった。5-3でアイルランドがリードしている状況で高く蹴り上げられたボールをフランカーのエーモン・マクガイアがキャッチし、そのままゴールラインへ突進。しかしマクガイアがゴールラインを越えてボールを接地したかどうか、レフェリーが「確認できなかった」ためにノートライとなる。その後ニュージーランドがペナルティーゴールを決め、これが決勝点となった。 

1973年1月20日/ダブリン
アイルランド10-10ニュージーランド

トム・キーナン主将、ウィリー・ジョン・マクブリッジ、マイク・ギブソンらを擁したアイルランドはこの日、勝利が手の届くところにあった。トム・グレースのトライで同点としたアイルランドだったが、バリー・マクガンのコンバージョンキックが風に流され、わずか数インチ外れてしまった。結局、初勝利とはいかなかったが、6度目の対戦で初めて同点に持ち込み、ニュージーランドのグランドスラム(イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズを破ること)を阻んだのは収穫だった。

 1978年11月4日/ダブリン
アイルランド6-10ニュージーランド

その4日前、ニュージーランド代表はアイルランドのクラブ『マンスター』に歴史的敗退を喫していた。「僕らは負けると、ものすごく機嫌が悪くなる」と元オールブラックスのWTBステュー・ウィルソン。ニュージーランドはこの試合で猛烈にプレーし、ロスタイムでトライを決めて勝利をもぎ取った。この試合を含め10戦連続で、相手をノートライに抑えている。

1992年5月30日/ダニーデン
ニュージーランド24-21アイルランド

ニュージーランドのホーム開催ということもあり、圧倒的に劣勢と思われていたアイルランドだったが、予想に反し、後半中盤には21-18とリードしていた。しかしニュージーランドがインターセプトからトライを決めて逆転。インターセプトを許したロニー・カレーはこの瞬間のことを生涯忘れないと話している。

2012年6月12日/クライストチャーチ
ニュージーランド22-19アイルランド

前年の地震で被害を受けたクライストチャーチで震災後初の試合が行われた。途中までアイルランドは10-0でリードしていたがその後追い上げられ、最後は14人となったニュージーランドに得点を許し、敗戦となった。「また最後のハードルが越えられなかった」とアイルランドのブライアン・オドリスコル。

 

2013年11月24日/ダブリン
アイルランド22-24ニュージーランド

この試合でもアイルランドは序盤、優勢だった。前半18分まで19-0とリードしていたのだ。しかし結局、試合終了目前の82分、ニュージーランドはライアン・クロッティーがトライを決めて同点。コンバージョンも決まり、勝ち越した。この結末にアイルランドの選手もファンも「もうニュージーランドには勝てないのではないか…」と落胆した。 

2016年11月5日/シカゴ
アイルランド40-29ニュージーランド

しかしついにその日が来た。62,300人のファンが詰めかけたアメリカのソルジャー・フィールドで、アイルランドは111年待ちわびた初勝利を手にした。しかも5トライを挙げて。さらにオールブラックスの、対ティア1連勝記録を18で止めることができた。アイルランドの名門クラブ、マンスターのアンソニー・フォーレイ監督がその前の月に急死したことも、選手を奮起させた一因だっただろう。アイルランドは前半を17点リードで終え、後半にはニュージーランドの猛反撃にあいながらも攻め続けた。そしてワールドカップ日本大会にも出場しているロビー・ヘンショウの終盤のトライで突き放した。
歴史的な勝利に沸いたアイルランド。ロリー・ベストの「待ったかいがあった」という言葉が全てを言い表している。

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