【東京・10月10日】ロシアとの開幕戦とサモアとの第3戦で、日本は4トライずつをもぎ取った。貴重な勝ち点1のボーナスポイント(BP)を上積みしたことで、13日のスコットランド戦は敗れてもベスト8進出の可能性を残す有利な状況で迎えた。

開幕戦で最初の2トライを生んだのは、タックルを受けながら繰り出すオフロードパス。最初のトライではCTBラファエレティモシーとFBウィリアム・トゥポウ、2つめはCTB中村亮土が体勢を崩しながら巧みにボールをつないだ。

3年前のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)就任以降、攻撃時の変化として真っ先に挙げられるのが、キックを使って「アンストラクチャー」と呼ばれる陣形の乱れた状態を作ること。そして前任のエディー・ジョーンズHC(現イングランドHC)が、ボールを失う可能性があるとして好まなかったオフロードパス、あるいはすぐ横の味方を飛ばすパスの積極的な使用だ。

この新たな選択を、トニー・ブラウン・アタックコーチは「ラグビーという競技自体がめまぐるしく変化する中で、それについていく、先陣を切っていかないといけない。プレーの仕方も変化をつけていかないと」と説明する。「バックフリップだろうがオフロードだろうが、そういう新たなスキルを身につける、そして限界まで挑むことが非常に大事。日本の選手に落とし込もうと思ったのは、一つのスキルに対し勤勉に、誠実に取り組む選手たちだから。絶対にできると思っているし、試合でも成果が出ている。まぐれではない。鍛錬を積んできたからこそ、ああいう形になっている」。チーム戦術として完全に定着したと評価する。

すでに2試合を中止に追い込んだ台風19号が接近し、日本はスコットランド戦の開催可否を試合当日まで知ることができないが「天気予報では晴れで27度。ラグビー日和だ」と笑う。荒れたコンディションも予想される中「強風の中で遂行するのは難易度が高くなるが、キックしようがパスを回そうが、攻守とも精度を高くやっていかないといけない。当日の天候に対応していきたい」と意に介さない。

現役時代はオールブラックスのスタンドオフとして活躍し、日本では2005年に三洋電機(現パナソニック)に加入。コーチとして2015年にハイランダーズのスーパーラグビー優勝に貢献し、来季は監督としての復帰が決まっている。日本にはジョセフHC就任後に加わり、今季はスーパーラグビーのサンウルブズHCを兼任するなど力を注いできた。

世界中が注目するアジア初のW杯。ブラウンは日本の魅力的な攻撃スタイルが将来のスターを引き寄せる重要な要素になることを願っている。「このW杯は日本ラグビーに大きな影響、成果をもたらしていると思う。これだけの観客が試合に足を運んでいることは素晴らしいし、私は過去最高のW杯だと思っている。日本の子どもたちがラグビーをプレーすることを目指してくれたら、それ以上のことはない」と大きな期待を寄せている。

日本中が熱狂に包まれた3試合に続く因縁のスコットランド戦。「日本の戦い方を見ていろいろな刺激を受け、子どもたちがジャパンのやっているスキルにチャンレジしてくれれば、本当に日本ラグビーのためになる。チームもその思いが非常に強い」。両肩にのしかかる重圧、大きな責任も楽しんでいる風情だ。

RNS mn/kf