「ここからは違うレベルの戦いになる」

 ワールドカップメンバー発表会見で、そう話していたジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチの言葉通り、2度世界制覇を経験している南アフリカは、日本が今年対戦してきた相手とは全く異なるレベルのパフォーマンスを見せつけた。

 元南アフリカ代表FLのラッシー・エラスムスヘッドコーチの下、先月のラグビー・チャンピオンシップに優勝し、現在、ワールドカップのプール初戦で対戦するニュージーランド戦へ向けて調整中だが、プレースピードとパワー、フィジカルの強さで序盤から日本にプレッシャーをかけた。

 前半7分、スクラムから展開してWTBチェスリン・コルベ選手が先制トライ。22分には日本のハイパントをキャッチするとWTBマカゾレ・マピンピ選手につないでトライ31分にはスクラムを押して相手を引き付けてからオープンに素早く展開し、最後はマピンピ選手が連続トライをマーク。39分にはSOハンドレ・ポラード選手がPGで3点を加えて、前半を22-0で折り返した。

 日本は試合開始早々、WTB福岡堅樹選手がふくらはぎを痛めて交代を余儀なくされ、攻め手の一つを失った。前半15分過ぎにはスクラムからつないで、SO田村優選手がゴール目前に迫るが、相手のタックルを受けてボールを失い、トライチャンスを逃した。

 その後も相手のプレッシャーを受けてミスが出て、ハイパントへの対応も相手に上回られて苦戦が続いた。

それでも粘る日本は、60分に相手のハンドリングミスを突いて、CTBラファエレ ティモシー選手がタップで前半交代出場のアタアタ・モエアキオラ選手につなぎ、そこからアウトサイドでパスを受けたWTB松島幸太朗選手が、走り抜いてトライを決めた。

その後、日本は攻めてラックを重ねても、ゴール前で堅く守る相手の守備を崩すまでには至らない。2015年ワールドカップ初戦で日本に逆転勝ちを許して以来の顔合わせに、雪辱を果たすという思いもあったかもしれない。

 先月ワールドラグビー・パシフィック・ネーションズカップで3戦全勝で優勝した日本は、77分には南アフリカ出身のFLピーター・ラブスカフニ選手の力強いゲインをきっかけに22メートル内へ攻め込むが、最後に右アウトサイドへのパスが乱れてトライチャンスを逃した。

 一方、南アフリカは52分にマピンピ選手がこの日3つ目のトライを決めて、ハットトリックを達成した。その20分後には、南アフリカはリザーブスタートのフランソワ・ロウ選手がイエローカードを受けてシンビンとなるが、チームは数的不利を感じさせない動きを続ける。

73分に、南アフリカは自陣の深い位置でコルベ選手が日本のパスをインターセプト。そのままフィールドを駆け抜けて、この試合自身2トライ目を決め、終了直前には日本選手に2人でプレッシャーをかけてボールを奪うと、リザーブ出場のハーシェル・ヤンチース選手が走り切って5点を加えた。

 南アフリカ代表のエラスムスヘッドコーチは、「ニュージーランド戦への調整に試合をしておきたかった。いい方向の進んでいると確認できた」と話し、満足そうな表情を見せた。

 日本のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、「とても強い南アフリカを相手に、2、3回トライチャンスを作ったが、ミスから痛い失点をしたが、ワールドカップへ向けて必要な試合だった」と話した。

 リーチマイケル主将は、「思っていたような結果ではなかったが、多くを学ぶことできた。大会最後にティア1のとても強い国と対戦して、彼らの強さが改めて分かった。ワールドカップの準備として、非常に良かったと思う」とし、「負けたので、この2週間で自信を取り戻すことが大事になる」と話した。

 ラグビーワールドカップ2019は9月20日に開幕。プールAの日本はこの日の開幕戦でロシア代表と対戦し、9月28日にはアイルランド代表、10月5日にはサモア代表、10月13日にはスコットランド代表と戦う。

 プールBの南アフリカは、9月21日にニュージーランド代表、9月28日にナミビア代表、10月4日にイタリア代表、10月8日にカナダ代表と対戦する。