2015年の前回大会で、日本はプール戦で2度の大会優勝経験のある南アフリカを含めて3勝を挙げながらも勝点差で1歩及ばず、初の8強進出を逃した。それから4年、桜の軍団はジェイミー・ジョセフヘッドコーチの下、イングランド大会で達成できなかったベスト8入りを目標に歩みを進めてきた。

日本は、2018年秋のテストマッチではフランスとアウェイで23-23の引き分けを演じ、昨秋にはイングランドに相手のホームで15-35と敗れたが、前半は世界4位(当時)を圧倒するプレーで15-10とリードを奪うなど、テストマッチを経るごとにチームは成長を見せてきた。

そして、今季初のテストマッチシリーズとなった先月末からのワールドラグビーパシフィックネーションズカップでは、フィジー(34-21)、トンガ(41-7)、アメリカ(34-20)に3戦全勝で優勝。世界ランクでも自己最高タイの9位に浮上した。

日本代表のワールドカップメンバーの発表は8月29日だが、主将を務めることが確実視されているFLリーチ マイケル選手(東芝)は、ここまでのチームの準備状況に自信を示している。

 

選手主導の強み

 「4年前に比べたら、今の状態の方がいい。ゲームプランやフィジカル面、メンタル面がすごく向上している」とリーチ選手。「自主性が大きく違う。選手主導のミーティングで、連係がかなり強い。4年前に学んだことが今、活かされている」と語る。

 リーチ選手によれば、4年前は当時のエディ・ジョーンズヘッドコーチらコーチ陣に「言われたことを一生懸命やっていた」が、今のチームでは「コーチ陣はある程度のことを提示して、細かくやっているのは僕ら選手」だとして、選手だけでのミーティングで自由に話し合って「ゲームプランをクリアにし、お互いに要求している」のだという。

ゲームプランと柔軟性をプラス評価した、先日のパシフィックネーションズカップは成果の一つだろう。

 リーチ選手は自分自身の状態についても、「今の方がデカイし、パワーもタックルスキルも上がってきている」としている。

2008年の代表デビューからここまで62キャップを獲得し、自身3度目のワールドカップへ向けて着実に前進している様子だが、代表チーム強化の一環として編成されたウルフパックの活動では負傷で出遅れた。

今年10月に31歳になるリーチ選手は、「怪我をした時は正直、不安はあった」と振り返ったが、しかしそれも1試合1試合、出られる試合が増えるようになって解消されたという。そして、パシフィックネーションズカップでは、初戦のフィジー戦は前半途中でベンチスタートし、トンガ戦、アメリカ戦には先発でフル出場し、チームの勝利に貢献した。

「この3試合で自分の調子も上がってきている。あとは、ワールドカップのメンバーが決まって、(9月6日の)南アフリカ戦に出るチャンスがあれば。そこで、トップに近い状態に持っていきたい」と語る。

 2大会連続での主将という役目にも「慣れた感はある」として、ジョセフヘッドコーチとも「本当にいいコンビだと思っている」と語る。だが、前任者の影響が自身に残っていた影響で、新指揮官の手法や考え方に慣れるまでに時間がかかったという。

「最初は正直、2人の間でゴチャゴチャあった。お互いに曲げられないところもあって。どのタイミングか分からないが、2人でうまく同じページを見られるようになった。今はすごくいい感じでコミュニケーションを取っているし、なんでも相談する」と話している。

 

目標は「毎試合勝つ」

 大会の代表メンバー31人の発表を目前に控えて、チームは8月19日(月)から網走合宿での練習をスタートさせた。参加選手は41人だ。

2004年にクライストチャーチから札幌山の手高校の留学生として来日し、日本でのラグビー生活をスタートさせた北海道での合宿だが、リーチ選手は「全てにおいてが勝負。自分と周りとの差をつけないといけない」と生き残りをかける。

 そして、近づく大会を前に「すごく緊張している」と言う。

「自国開催の影響もあるし、負けるとしたら、自分たちでやろうとしていることができないことが敗因になると思う。そこで緊張している。だから、この合宿は本当に大事。細かい作業をさらに細かくして徹底的にやらないと」と、気を引き締めている。

チームの成長に自信を得ているからこその思いでもある。

「サンウルブズの影響も大きいし、ティア1の国とやって相手との差も感じてきた。いつもやられていたフィジーやトンガにも勝った。フィジカル的にも上がっているし、走ることも戦術も相手に上回っている」

プールAの日本は9月20日の大会開幕戦でロシアと対戦し、その後、9月28日にアイルランド、10月5日にサモア、10月13日にスコットランドと戦う。5チームの中で上位2チームが準々決勝に進出できる。

 「対戦相手の映像は見ていない。ワールドカップになったら全く違うチームになっている可能性もあるし、1試合1試合を大事にしたい」と、リーチ主将。

 大会での目標については、「優勝を狙えるくらいまでにチームを作り上げる」とした上で、「毎試合勝つのが大事」と語る。

「1試合1試合に勝ってベスト8に行って、そこで勝ってベスト4に行くというアプローチ。このチームはベスト8になったことがないが、それが終わりではない。勝って行くことが目標」と説く。

 そしてこう言った。

「日本のチームは強い、日本人は強い、すごいチームだなと思ってほしい。1試合1試合でプロセスを大事にして準備を大事にすれば、結果は出る」

 ラグビーワールドカップ2019日本大会開幕まで、あと1ヵ月だ。