2021年にニュージーランドでの開催が決まった次の女子ラグビーワールドカップでの決勝トーナメント進出を目指して、サクラフィフティーンこと、女子15人制日本代表が年明けから新たな体制で動き始めた。

 指揮官に就いたのはカナダ代表HOとして2度の女子ラグビーワールドカップに出場し、指導者として女子のみならず、男子チームを率いた経験のあるレズリー・マッケンジー氏だ。任期は2021年女子ラグビーワールドカップまで。

 昨年から女子7人制日本代表でアシスタントコーチを務めてきており、7人制が来年2020年東京オリンピックを控えていることから、今後も2足のわらじで日本女子ラグビーの強化にあたる。

 「最終目標は2021年ラグビーワールドカップでの決勝トーナメント進出」と語るマッケンジーヘッドコーチは、「15人制にはすごく可能性を感じている」と話す。

すでに、就任が発表された直後の1月20日から、和歌山県内で5日間の15人制代表候補強化と次世代発掘育成の合同合宿を行った。

 「選手がかなり高いモチベーションとラグビー理解を見せて取り組んでくれた。今回の合宿では立ち位置を見定めるのがメインだったが、満足している」と振り返った。

7人制との兼務にも38歳の新指揮官は、「この状況を非常にポシティブにとらえている。7人制と15人制を見ることで、良い意味でのクロスオーバーとなり、選手強化に良い影響があると思っている」と受け止めている。

 現役時代には2006年、2010年と2度のワールドカップへの出場を含めてカナダ代表として25キャップを獲得。ニュージーランドのクラブでもプレーした。指導者としては出身のブリティッシュコロンビア大学女子チームを手始めに、ニュージーランドのワンガヌイやハリケーンズでは育成に関わり、ワンガヌイ・マリスト・セルティックでは男子1部のヘッドコーチも務めた。

女子日本代表とカナダの州代表チームでの対戦経験やサクラセブンズの指導を通して、「15人制と7人制の違いはある」と前置きしながらも、「コンタクト、マインドセット、フィジカリティーが重要」と話し、これらの面で海外強豪と差があることを指摘した。だがそのあと、こう続けた。

「これらの部分で日本は国際舞台で苦戦してきた。ただ、男子15人制日本代表やサンウルブズは、同様の課題を乗り越えている。カルチャー、マインドセット、技術面を磨くことでやっていけると示している。となれば、女子もこれらが不得手だという言い訳はできない。」

 15人制女子代表については3月まで強化合宿を繰り返しながら、選手についての理解を深める一方で、国内の各大会をチェックして人材の発掘も進め、夏には欧州遠征も計画されている。選手の各所属先での普段のトレーニングや国内合宿を通してベースとなる部分の強化も欠かせない。

マッケンジーヘッドコーチは、1月の合宿で選手たちと話し合い、チームのあり方を示すチームコンセプトを1つの言葉に集約した。それが「サクラウェーブ」。

チームを波に見立て、「水が一つの塊になって動くことで、多様にパワーやインスピレーションを生み出す」とサクラフィフティーンの新指揮官。そこから、ほかの国と異なるやり方、独自性をチームに導き出そうという試みだという。

 「カナダやニュージーランドでも指導してきたが、日本の選手はできる限りのことをしようとする取り組みの姿勢が高い。しかも、繰り返し高いレベルで取り組みを続けることができるし、細かいところまで考えが及ぶ。これはスキル習得などに向いている要素。体の大きさでは他国に及ばないが、このようなワークレートの高さはプレーの向上やチームづくりにつながる強みだと思う」と、マッケンジーヘッドコーチは言う。

 日本は2017年女子ラグビーワールドカップのアイルランド大会に出場。15年ぶりの世界に舞台での挑戦だったが、出場12チーム中11位で終了し、決勝トーナメント進出には届かなかった。

 マッケンジーヘッドコーチの下、女子15人制日本代表は2021年大会での決勝トーナメント進出を目指すが、その舞台への出場権を得るための最初のクリアポイントは、来年行われる予定のアジア予選となる。

女子セブンズ日本代表では、マッケンジー氏がアシスタントコーチに入ってから、コンタクトプレーや気持ちの切り替えなどで良い変化が出てきたとする現場の声もある。

女子15人制日本代表の新指揮官がもたらす新たな波に注目だ。