日本の最初のトライは、0-3で迎えた前半開始4分だった。日本代表FLアニセ サムエラ選手がキックチャージからトライ。田村優選手のコンバージョンも決まって7-3と逆転すると、日本ラグビー史上過去最多となる43,751人の観客で埋まったスタンドは大歓声に包まれた。

 だが、その後はニュージーランドが日本の隙を突いて、15分から29分までの14分間にHOデーン・コールズ選手、SOリッチー・モウンガ選手、CTBンガニ・ラウマペ選手がトライで反撃した。

 日本2本目のトライは前半33分。ゴール前のラックからパスを受けたNO 8ツイ ヘンドリック選手がステップを踏んで持ち込み、インゴールで押さえ、田村選手のコンバージョンも決まって12-24と迫った。

SHテトイロア・タフリオランギ選手とラウマペ選手にトライを許して再びニュージーランドに点差を広げられたが、14-38で迎えた前半終了間際、日本はラインアウトからモールで押し込み、左に展開するとCTBラファエレ ティモシー選手が左隅に飛び込み、TMOにより5ポインターが確認された。

 後半には52分にWTBヘンリー ジェイミー選手が田村選手のキックパスを受けてインゴールに飛び込んで5点を加えた。

 だがその後はニュージーランドが攻撃を畳み掛け、WTBワイサケ・ナホロ選手、CTBマット・プロクター選手、そしてハットトリックのラウマペ選手、WTBジョージ・ブリッジ選手が次々とラインを越えて加点した。

日本の5本目のトライは70分、中央のラックから出たボールをつなぎ、WTB福岡堅樹選手が左サイドを駆け上がり、相手選手をハンドオフで振り切ってボールをつなぎ、最後はラファエレ選手がこの日2本目となるトライを決めた。

ニュージーランドとは1995年と2011年のワールドカップを含めて過去3度テストマッチで対戦していたが、日本が奪ったトライは3試合で3つ。それがこの日は1試合で5トライを奪った。

ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチは、「結果にはがっかりしているが、自分たちチームの意気込みや意図に失望しているわけではない。オールブラックスに対してトライが獲れたことはいいこと。成長の証だと思う」と話し、評価した。

 その一方で、ミスを連発する脆さも露呈した。試合開始早々に、日本は反則を続けてニュージーランドにPGで先制を許し、日本はトライを奪っても、その直後にあっさりとトライを許す展開。ニュージーランドがベンチスタートの6人を含めて初キャップ選手8人という若手主体の編成とはいえ、オールブラックスには相手のミスを逃さない鋭さがあった。

ニュージーランドは前後半でそれぞれ5本ずつトライを決めて、日本にダブルスコアで勝利。最多得点はモウンガ選手で、1トライ1PG、7コンバージョンで22得点を挙げた。

 福岡選手は「アタックでいい部分も出せたが、ディフェンスではブレイクダウンなど課題が多かった」と振り返り、FL姫野和樹選手はオールブラックスが「やってくることはシンプルだが、その精度が高い。僕自身もチームも、やりたいことをさせてもらえなかった」と話した。

「簡単に許すトライが多すぎる」という日本のリーチ主将は、「世界のきびしさがよくわかった。自分たちは練習できびしくやっていたつもりだったが、これ以上厳しくやらないとならないと改めてわかった」と話した。

ニュージーランド代表のスティーブ・ハンセンヘッドコーチは、「日本は現在、自分たちに合うラグビーを構築しているところだと思うが、良いトライをいくつか決めていたし、FWプレー、特にスクラムはすごく良いと思った」と述べた。

  日本代表のジョセフヘッドコーチは、「オールブラックスはこういう試合を毎回できる。一瞬でも相手がミスをすればそこから得点に結びつける力がある。そのチームに対してここまでできたことはうれしく思う。とはいえ、ワールドカップで戦うレベル、ティア1の国に勝つためには、まだまだ強化を進めていかなければならない」と話した。

 日本はテストマッチシリーズ残り2戦をイングランドで行う予定で、11月17日(土)に英国トウィッケナムにてイングランド代表と、同24日(土)に英国グロスターでロシア代表と対戦する。