アジア大会は2006年から3連覇してきている日本だが、今大会で狙う4度目の金メダルには、これまで以上の思いがある。念頭にあるのは2年後の東京オリンピックだ。

 「東京オリンピックには、ホスト国だが、アジアチャンピオンとして出なければいけないと思っている。しっかり金メダルを取って帰ってきたい」。男子セブンズ日本代表を率いる岩渕健輔ヘッドコーチはそう言った。

日本は、昨秋にはアジアシリーズを制して今年7月のラグビーワールドカップ・セブンズ2018に出場し、今年4月にはHSBCワールドラグビーセブンズシリーズ2018-2019への出場権も獲得している。

だが岩渕ヘッドコーチは、総合ポイントでシリーズ優勝した昨年のアジアシリーズで、日本が優勝したのは3大会中1大会だったことを指摘。アジア各国のレベルアップを注視する。

「日本がトップというつもりは全くない。韓国も中国もスリランカも香港も、相当手強い。香港は15人制RWC 2019出場のチャンスが残っているが、それ以外の国は2020年東京オリンピックに集中して、国を挙げて7人制の強化をしてきている」と、指揮官はライバルらの伸びを警戒する。

また、大会初戦で対戦するインドネシアは今大会の開催国。過去の対戦はあるものの、現在の日本チームとしては対戦経験がないため、映像分析はできても「肌感覚はない」と岩渕ヘッドコーチ。「自分たちのゲームに集中して、しっかり力を出すこと」が肝要だと説く。

主将を務める小澤大選手(トヨタ自動車/日本ラグビー協会)も、「各国のレベルが上がってきているが、その分、日本もレベルは上がってきていると思う。自分たちでしっかり準備してきたことを1試合1試合で出したい」と力強く語り、今大会準備への手応えのほどをうかがわせた。

不測の事態を想定した練習

千葉県成田市での大会事前合宿では選手同士で対戦相手の分析を行い、スタッフの分析と情報やイメージのすり合わせなどを行う一方、ジャカルタの暑さや交通事情、突然のスコールの可能性などを考慮して、水をかぶりながらのプレーや、練習場への送迎バスが到着しない、試合時間の変更など、さまざまな状況を用意したという。

 小澤主将は、「いろいろ想定して“トレーニング”したが、日本で柔軟に対応できたので、向こうに行ってどんなことが起きてもパニックにはならないでできると思う。いい準備になった」と言う。

岩渕ヘッドコーチは、「選手たちは『なにも信じられない』と言っている」とニンマリ。「余裕も出てきてタフになってきていると思う。なにも心配していない」と選手の適応力アップに期待している。

 プレー面でも、7月のラグビーワールドカップ・セブンズでの収穫をもとに、課題や長所の向上に取り組んだ。

 指揮官はワールドカップを振り返り、「オリンピックまでちょうど2年。我々にとって何がアドバンテージで何を改善しなくてはいけないかがはっきりした」と語る。

今大会へ向けて、キックオフでボールを獲りきるためのプレーの改善や、大会最終日3日目の最終戦でも相手に走り負けなかったフィットネスを伸ばす練習などを続けたという。

 「最終日まで、相手のパフォーマンスが落ちても、うちは落ちずに上げていける。収穫と同時に強みとして、今度のアジア大会でも出していきたい」と岩渕ヘッドコーチは言う。

期待される4連覇について、小澤主将は「そういうプレシャーもかなりあるし、アジアで1位にならなくてはいけないというプレッシャーもあるが、良いプレッシャーに変えて、自分たちが準備してきたことを1試合1試合で出したい」と意気込みを口にした。

オリンピックを想定

 今回のアジア大会の男子競技では12チームが4チームずつ3グループに分かれて8月30日(木)からの2日間でグループ戦を行い、上位8チームが2日目後半の準々決勝へ進出し、9位以下は順位決定リーグ戦にまわる。

日本はグループBで開催国インドネシア、マレーシアと8月30日(木)に、2006年大会4位のチャイニーズ・タイペイと31日(金)に対戦する。

 グループAは2010年、2014年大会準優勝の香港、中国、タイ、パキスタン、グループCは1998年と2002年大会連覇の韓国、スリランカ、アラブ首長国連邦(UAE)、アフガニスタンの組み合わせだ。なお、準決勝、決勝は9月1日に行われる。

 アジア版オリンピックとも言われるアジア大会は、競技日程や真夏の暑さ、選手村宿泊やグラウンド使用、チームに帯同できるスタッフの人数などで他のラグビー大会とは異なる要素が少なくない。同じ総合競技大会である2年後のオリンピックへ、良いシミュレーションの機会であることは間違いない。

 岩渕ヘッドコーチは、「総合スポーツ大会として、いろいろな制約がある中で戦わなくてはいけない。オリンピックの時と同じ。単なるシミュレーションということでなく、オリンピックという意気込みで臨みたい」と語っている。

 男子セブンズ競技グループ分け

グループA―香港、中国、タイ、パキスタン

グループB―日本、マレーシア、チャイニーズ・タイペイ、インドネシア

グループC―韓国、スリランカ、アラブ首長国連邦(UAE)、アフガニスタン

会場:ゲロラ・ブン・カルノ・ラグビーフィールド

男子セブンズ日本代表メンバー:

大石力也(NEC)、小澤 大*(トヨタ自動車/日本ラグビー協会)、加納遼大(明治安田生命)、坂井克行(豊田自動織機)、副島亀里ララボウラティアナラ(コカ・コーラ)、ツポウ テビタ(パナソニック)、トゥキリ ロテ(近鉄)、橋野晧介(キャノン)、林 大成(日本ラグビー協会)、松井千士(サントリー)、本村直樹(ホンダ)、秦 啓祐(NTTドコモ)

注:*はキャプテン