釜石市の鵜住居(うのすまい)地区に新設されたスタジアムで行われたオープニング記念試合で、トップチャレンジリーグでプレーする釜石シーウェーブス(SW)が奮闘。満員の観客を沸かせた。

 先制は釜石。開始6分で、ゴール前のラックから左へ展開してFBユーゲン・フィサー選手が飛び込んでトライした。

だがその後、トップリーグ強豪のヤマハに9分と13分に植木悠治選手、桑野詠真選手に連続トライを許して逆転されるが、釜石は17分にNO 8の中野裕太選手がスクラムから抜け出して5点を返し、14-10と再びリードを奪った。

ヤマハは前半半ばのデューク・クリシュナン選手のトライで15-14として前半を終えると、後半早々にはラインアウトからモールで押し込む展開で2トライを奪い、SOマット・マッガーン選手のコンバージョンも決まって29-14とリードを広げた。

ヤマハはシンビンを出したものの、途中出場した今季新加入の南アフリカ代表FLクワッガ・スミス選手や矢富洋則選手が突破で釜石ゴールに迫るが、釜石は粘りのディフェンスで阻止。77分にヤマハが再び反則で一人がシンビンとなると、釜石が猛チャージを見せた。

78分にFLケイン・コテカ選手がゴール前のラックから持ち出してトライ。終了間際にもパスをつないで攻め込んでトライにつなげ、24-29で終えた。勝利にはあと一歩及ばなかったが、新スタジアムのこけら落としを盛り上げた。

「たくさん応援してもらって、最後にトライできてよかった」と振り返った釜石主将の小野航大選手は、「これをステップに、シーズンへいい準備ができる」と語った。

試合のハーフタイムには地元の中学生が人気グループEXILE のメンバー、USA さん、TATSUYAさんの2人とともに彼らのヒットナンバーの”RISING SUN”に合わせて踊りを披露。試合中には、釜石のゴール裏で大漁旗を振って地元チームを応援した。

このほかにも、釜石とヤマハの試合に先立って、レジェンドマッチとして日本選手兼7連覇を達成した2チーム、新日鉄釜石と神戸製鋼のOB選手による対戦も行われ、往年の名選手たちがプレーでオープニングデーを盛り上げた。

釜石鵜住居復興スタジアムは、来年のラグビーワールドカップで唯一の新設会場。2011年3月の東日本大震災で発生した地震と津波で甚大な被害を受けた小学校と中学校が建っていた場所に、土地をかさ上げして造られた。当時、児童らは高台に避難をして難を逃れたが、大きなダメージを受けた校舎にあった大時計が、新設スタジアムのメインスタンドに移され、新たな時を刻んでいる。

現在は約6000人収容で、ゴール裏には芝生が広がるオープンスペースがあるが、来年のワールドカップでは仮設スタンドが設けられ、1万6千人規模の競技場に変身する。2019年9月25日にプールDのフィジー対ウルグアイ戦、同10月13日にナミビア対敗者復活予選優勝チームの2試合が行われる。

ヤマハの桑野詠真選手は、「釜石では復興の中心がラグビー。一人のラグビー人として、この試合をできたことをうれしく思う。いつか釜石とトップリーグで試合できる日を楽しみにしている」と語り、ヤマハの清宮克幸監督も、「この場所、この新しいスタジアムでラグビーの絆を深められたことをうれしく思う。これからも復興へ少しでもできることをやっていきたい」と話した。