サンフランシスコのAT&Tパークで行われるラグビーワールドカップセブンズ開幕まで残り僅か2週間。ニュージーランドの男子、女子チームがタイトルを守ろうと挑む本大会が始まる前に、セブンズワールドカップのこれまでの6大会を振り返ってみましょう。

 1993年:ハリマンがイングランド番狂わせ勝利へ

台湾やラトビアなど多くの国々が出場した第一回RWCセブンズ大会は、スコットランドの大規模な改築を終えたマレーフィールドスタジアムで開催されました。ラグビーネイション、フィジー、イングランド、オーストラリアそしてアイルランドが厳しいプール戦を勝ち抜いて決勝トーナメントへ進みました。

ウィリー・オファヘンガウエが、最後の攻めでトライを決め、アイルランドチームの心を挫き、印象的なオーストラリアの勝利を21−19で決める一方、イングランドのデイブ・スカリーがメサケ・ラサリの前進を力強いタックルで阻止。「大会の瞬間」と表現されることになるこのタックルは、ラサリの走りにストップをかけただけでなく、ボールを奪ってそのままトライを決め、イングランドを21–7の勝利へと導きました。

決勝ではイングランドのアンドリュー・ハリマン主将が全力疾走でデビッド・カンペーズを躱しオープニングトライを決めます。オーストラリアのスコアラーはカンペーズとマイケル・リナー。しかし21–17という結果で勝利を飾ったのはイングランド。即席チームであったにもかかわらず、メルローズカップの初獲得チームとなりました。

雨に濡れた寒さに包まれたマレーフィールドで祝ったのはイングランドの他、準優勝チームのアルゼンチン、そして3位の日本。アルゼンチンはスペインを19–12で、日本は開催国スコットランドを33–19でそれぞれ破りました。

 

1997:セレビが約束を果たす

セブンズの生誕地はスコットランド。しかし香港はセブンズの魂の故郷です。ということから1997年、香港セブンズ21年目にして第2回RWCセブンズ大会が香港で開催されたことは自然なことでした。

Rugby World Cup Sevens: Serevi reflects on his double victory
Fiji legend Waisale Serevi reflects on his two Rugby World Cup Sevens titles

プール勝利チームの中で最も素晴らしかったチームと言えるのはフィジー。どの相手チームにも1点も与えず、205点を獲得して大会の準々決勝に進みました。フィジーの前進の中心はセブンズの名手ワイサレ・セレビ。大会中の117点を獲得。そのうちの26点は準々決勝の韓国戦56–0の試合で獲得したものでした。

フィジーの次の対戦相手はサモア。イングランドに21–5で敗れたサモアを38–14で破ります。一方、ジュースト・ヴァンダーウェストフイゼン率いる南アフリカはニュージーランドのワールドカップ4連覇を阻止。

決勝戦は、4万人の観客が固唾を飲んで見守る接戦の末、フィジーが24–21で勝利を飾るという、セブンズ史上最も素晴らしい試合となりました。セレビは約束通りメルローズカップをフィジーに持ち帰りました。「セブンズはフィジーのラグビープレーヤー全ての人生の一部です。ラグビーワールドカップ・セブンズは私にとって、そしてフィジー人みんなにとってとても大切です。」とセレビは語っています。

トンガは香港を40–19で破り準優勝。一方3位の座を射止めたのは日本を40–28で破ったアメリカでした。

2001:ニュージーランドチームに活気

2001年1月にアルゼンチンのビーチリゾート、マル・デル・プラタで開催された第3回ラグビーワールドカップ・セブンズには、常連出場チームに加え、新たにケニア、チリ、ロシア、そしてジョージアの4カ国が大会デビューを果たしました。

フィジー、南アフリカ、ニュージーランド、そしてオーストラリアの前回優勝国がそれぞれプールを勝ち抜き、準々決勝戦ではアルゼンチン、カナダ、イングランド、そしてサモアが参戦。

オーストラリアもいいチームを作って参戦。フィジーもルペニ・カウカウが2試合で7トライを決め世界の舞台に存在感を示しました。一方ニュージーランドは主将エリック・ラッシュがイングランド戦中に足を負傷。代わりにジョナー・ロムが率いてイングランドを破り、オーストラリア、フィジー、アルゼンチンとともに準決勝進出。

地元ファンの熱心な応援にもかかわらず、アルゼンチンは準々決勝で南アフリカを破った時の力が出せず、ニュージーランドに31–7で敗れます。一方の準決勝では接戦が繰り広げられ、オーストラリアが14–0からの逆転で2年ぶりにフィジーを破りました。

フィジーは全勝してプール予選を通過。トンガ戦で危うく白星を逃しかけたもののオールブラックスも全勝で通過。南アフリカは初戦で新参者のチュニジアに敗れたもののその後挽回し、イングランドも予想不可能なプールをフランスとサモアに僅差で勝利。

ニュージーランドとイングランドがフランスとスコットランドにそれぞれ余裕の勝ち星を挙げる一方、フィジーはアルゼンチンとの戦いに全力を尽くして22–14で勝利。オーストリアも僅差で南アフリカを破りました。

準決勝戦でニュージーランドがオーストラリアを破ったことで、サドンデス戦、イングランドのウェッブ・エリスカップとメルローズカップの同時2冠を許さないためにも、フィジーはワイサレ・セレビによる延長時間でのスコアが欲しいところでした。

フィジーは驚くべきパワーと強さで試合を運び、ニュージーランドを29–19で破ってRWCセブンズの優勝を勝ち取りました。同じスタジアムで8年前にメルローズカップを掲げたセレビ主将にとって夢のような結末となりました。「僕にとってワールドカップは特別な存在です。2度の優勝を香港で勝ち取れたことはまさにボーナスです」と述べました。

強いハーフが活躍したサモアがポルトガルを29–7で破って準優勝。イタリアはカナダを7–5で破り3位に輝きました。

2009:ウェールズの番狂わせ勝利

国際オリンピック委員会が賛成投票しラグビーセブンズを再びオリンピックに迎えることで決議する7ヶ月前、第5回RWCセブンズがドバイで開催されました。本大会は、初めて男子と女子のトーナメントが行われた大会として重要な意味をもっていました。

開幕から激しい戦いが繰り広げられ、大会の前半でも印象深いパフォーマンスの数々や予想外の展開がありましたが、最も思い出深かったのは準々決勝トーナメントでの素晴らしいパフォーマンスでした。

女子トーナメントでは、USAとニュージーランドが順調に勝ち抜いて行きましたが、南アフリカがスペインを驚かし、オーストラリアがジャイアントキリングとしか思えない戦いをイングランドに挑みました。

優勝候補のニュージーランドは1回のコンバージョンでUSAに差をつけ、オーストラリアも1回のトライで南アフリカを破り、タスマン海を隔てた両チームが第1回女子セブンズワールドカップの栄冠をかけて決勝戦でぶつかり合うこととなりました。延長戦のサドンデス36秒でシェリー・マッチャムがトライを決め、オーストラリアの名が優勝杯に刻まれました。

男子トーナメントでも、ウェールズが2001年のチャンピオン、ニュージーランドを15–14で破り、イングランドも延長で接戦を繰り広げた末サモアに敗れ、南アフリカはアルゼンチンに敗れました。しかし最も容赦ない対戦は、前回優勝チーム、フィジーがケニアに大敗した対戦でした。

ウェールズのポール・ジョンが準決勝でサモアを破り、アルゼンチンがケニアに12–0に勝利。接戦が続いた決勝戦。12–12で残り時間1分となりましたが、アレッド・トーマスがトライを決めて、勝算80–1のウェールズがチャンピオンの座に輝きました。

2013:ニュージーランド、2度の喜びを満喫

観客席8万人を誇るモスクワのルズニキスタジアムがメインスタジアムとして繰り広げられた2013年のRWCセブンズ大会。フィールド・オブ・プレーで展開した印象的なプレーの数々とともに、ラグビーが世界中に広がり続けていることを認識させてくれた大会でした。

 ロシアは女子トーナメントのプール予選ステージで開催国としてのストーリーを展開。日本戦での勝利とフランス戦での引き分けに続き、イングランド戦では17–15で番狂わせ勝利を収めてプールの上位に。しかし準々決勝ではカナダに惜敗。一方カナダはびっくり袋のスペインに勝利しカナダはそのまま勝ち進みます。

RWC Sevens 2013 Highlights: New Zealand win big on day three
RWC Sevens 2013 Highlights: New Zealand win big on day three

 最終的には、第1回女子セブンズシリーズのチャンピオン、ニュージーランドがモスクワに到着。決勝戦ではポーシャ・ウッドマンとケイラ・マカリスターが素晴らしいプレーを見せ29–12で勝利を収めました。

 男子トーナメントは大半が型通りに展開。プール戦で最も驚きだったのは、ウェールズが2冠王のフィジーを破ったことでしたが、準々決勝でぶつかったニュージーランドには勝つことができませんでした。同じく準々決勝ではフィジーが僅差で南アフリカを破り、イングランドが1トライでオーストラリアを破りました。ケニアは延長時間で得点しフランスを破りました。

 

雷雨に見舞われた残りの勝ち抜き戦は、オールブラックスがフィジーを17–0でリードしたところで安全の為試合を一時停止。再開後もスコアは変わらないまま試合終了。

イングランドはケニアを12–5で破るものの、決勝戦ではニュージーランドにうまく立ち向かえず苦戦。33–0でニュージーランドが楽勝しました。

RWCセブンズ史の次の章はどのような展開を見せるでしょうか?

7 月 20〜22 日、 www.rwcsevens.com 、また #RWC7sを使って @WorldRugby7s からその後のアクションをフォローしましょう。