「もちろん、非常にうれしい結果だ」

大分での初の日本代表テストマッチで、シックスネーションズでプレーを続ける欧州の強豪から白星をマークして、ジョセフ日本代表ヘッドコーチは喜びを隠さなかった。そして、まず評価したのは選手のメンタルの強さだった。

前半15分に1トライ1コンバージョンで先制を許したものの、その3分後にすかさず切り替えし、この試合で今季代表戦初合流のNO 8アマナキ・レレイ・マフィ選手(NTTコミュニケーションズ)がトライ。SO田村優選手(キャノン)のコンバージョンも決まって追いついた。その10分後にはWTB福岡堅樹選手(パナソニック)が足を活かして5点を加え、日本は均衡を破った。

前半終了前にイタリアに1トライ1コンバージョンで17-14まで点差を縮められ、後半11分にはPGで追いつかれたものの、日本はそこで崩れなかった。

6分後に、キックが好調の田村選手が冷静にPGを決めて再びリードを奪うと、その後はイタリアを無得点に抑えた。一方で、WTBレメキ ロマノ ラヴァ選手(ホンダ)とFB松島幸太朗選手(サントリー)がラインを越えて突き放した。

 

今回のテストマッチ3連戦を前に、ジョセフヘッドコーチは選手たちに「サンウルブズでの経験を活かしてほしい」と話していた。

日本で開催する2019年ラグビーワールドカップへ向けて、日本は代表候補選手を中心に構成するサンウルブズでスーパーラグビーに参戦。参加1年目に1勝、2年目2勝で、今季も試合終盤に失速する傾向もあり、なかなか勝ち星を挙げられずにいたが、5月に入ってレッズ戦、ストーマーズ戦に連勝をマーク。自信を感じられるプレーで、ようやく結果が伴う形になってきていた。

2足のわらじでサンウルブズでも指揮を執るジョセフヘッドコーチは、世界強豪チームと定期的に戦いを続けることで、たとえばFW陣がスクラム経験を重ねて経験値を上げる効果などを指摘していた。それが「セットピース型」と分析していたイタリア戦で、勝利という結果に結びついた。

 

2足のわらじで得た成果

「あらゆるプレッシャーをかけてきた」というイタリアに対して、ジョセフヘッドコーチは選手の精神面での成長をたたえた。

「ラグビーでは80分間何が起こるか分からないが、何があっても立ち向かっていく、その精神が勝敗を分ける。選手たちはそれを乗り越えた。いままでサンウルブズや日本代表では見られなかった努力だ」と称賛した。

「これまでサンウルブズの結果やパフォーマンスでいろいろと言われてきていたが、当初からサンウルブズについては、そのすべてが日本代表のテストマッチのためのものだ。選手たちがスーパーラグビーでのプレーを活かしてくれた」と語り、その言葉に満足と安堵をにじませた。

代表チームとサンウルブスの兼務について、「もっと近くで選手を見ないといけないと思ったので引き受けた。チャレンジはフィールド外でもあるが、こうして成果が出ていることを見れば、判断は間違っていなかったと思う」と語った。

 

 チームの充実度は、日本代表キャプテンのリーチ マイケル選手(東芝)も感じていた。2015年ワールドカップでも主将を務めたリーチ選手は、「勝敗は試合前に決まっていた」と振り返った。

 試合当日の朝食会場で、リザーブでの出場だったSH流 大選手(サントリー)やSO松田力也選手(パナソニック)が試合状況を想定したプレー選択の確認を行っていたのを見て、

「いろいろな状況を想定して考えあっている。素晴らしい準備ができていると思った」という。

 日本とイタリアは第2戦を6月16日(土)に神戸で迎える。

 イタリアのコナー・オシェイヘッドコーチは「まだハーフタイム。来週こそは、やりたいラグビーをして勝利したい」と話し、キャプテンを務めたHOレオナルド・ギラルディーニ選手は、「今日はチャンスをものにできなかったが、僕らにはハイレベルの試合に勝てるだけの才能のある選手がいる。ハードワークを続けて来週に備えたい」と話している。

 リーチ選手は言う。

「来週の試合はとても大事。相手も必死で来るはず。そこで勝てれば、すごく自信になる。しっかり準備して臨みたい」。