マドリッドのスタジアムを埋めた15,753人の観衆の中にはフェリぺ6世スペイン国王の顔も見えた。「ロス・レオネス」の愛称で知られるスペイン代表チームはドイツを84−10で破り、この大勝利でスペインはラグビーワールドカップ2019大会出場権獲得へまた一歩近づいた。

スペインのテストラグビー史上2番目の高得点での勝利でラグビーヨーロッパ・チャンピオンシップの最終戦に臨む。土曜日に行われるベルギーとの対戦に勝てば、ヨーロッパ地区1の枠でRWC 2019大会のプールAに進むことになる。

RWC 2019日本大会出場をかけてヨーロッパ・チャンピオンシップを戦い続ける唯一のライバル、ルーマニアは、ベルギーを62−12で破り、ロス・レオネスへプレッシャーをかける。この勝利によってルーマニアはRWC 2019地区代表権ランキング29点で首位の座を維持し、ヨーロッパ地区1枠をかけてあと一戦が残るライバルのスペインを3点で離している。

スペインがベルギーを破れば、ルーマニアはラグビーヨーロッパトロフィー2017の勝者ポルトガルとプレーオフで対戦、その勝者がプールAのプレーオフ勝者枠をかけてサモアと戦うことになる。

ザ・オークスは、1年前に獲得したラグビーヨーロッパ・チャンピオンシップトロフィー維持の数学的可能性はあるものの、トビリシでのジョージア戦で勝利し、ボーナス点を獲得しなければ、「レロス」の愛称で知られるジョージア代表チームをゲームから脱落させることはできない。

ジョージアは、クラスノダールで行われたロシア戦、前半を9−7で終えたが、試合終了時では29−9で勝利、ラグビーヨーロッパ・チャンピオンシップ得点表上5点リードで首位の座を維持した。

ロス・レオネスが力を発揮 

スペインは11トライを決めた上、ペナルティトライが認められ、20年前にチェコ共和国を90−8で勝利を納めて以来のベストスコアを記録した。

ドイツは挑戦的な戦いを繰り広げたが、ほとんどが黒星という結果に終わり、5月19日(土)に行われるポルトガル、もしくはオランダ戦でのシュートアウトで降格か昇格かが決まる。

フルバックのマティエ・ペルションが試合開始後7分間で2本のペナルティキックを決め、RWC 2019トロフィーツアーの一環であるマドリッドでのこの試合、ウェッブ・エリス・カップが駐在する中、スペインの存在感を強めた。

しかし、プレーメーカー、マシュー・ベリエが颯爽な走りでドイツチームを翻弄し、ピエール・バルセレが13分、スペインの最初のトライを楽々と走って決めた。

その後は堰を切ったように攻撃。イグナシオ・コンタルディがインサイドボールを素早く取り、悠々とした走りでペナルティトライへつなげ、フォーク・デゥエはイエローカード。その後、セカンドロー、アニバル・ボーナンが激しい攻勢を走りぬけ、15メートルラインからのトライを決めた。

その後間もなくディウエがシンビンから戻ると、スペインはハーフウェー近くのスクラムからの滑らかな攻撃から、ティボート・アルバレズが5つ目のトライを決めた。

ドイツは前半の終盤でピック・アンド・ゴーを繰り返しスペインのラインを打ち付けたものの、それまでの3試合で最強の相手に4トライのみを許したスペインの固い防衛を破ることができなかった。

後半も同様に進む中、ドイツが後半の半ばで唯一のトライに成功。しかし試合再開からスペインがボールの保有権を持ち続け、10フェーズを経てフランカー、ゴーティエ・ギボアンがついにトライを決める。

入替えのフッカー、フェルナンド・ロペスともう1人の入替えフォワード、ティボート・ヴィセンサンの両者がトライを決め、フルバック、ペルションがコンバージョンキックに成功し、スペインは50点に到達。スクラムハーフ、ジャン・ピオシクが44メートルからのペナルティキックを決めたドイツの初得点に匹敵する得点だった。

ドイツも、スペインの22メートルラインを破る稀な場面をいくつか見せたものの、ターンオーバーされるかボールを奪われるかの結果に終わった。しかし試合開始1時間後、予測不可能なスペインのパスがイライシャ・ガビディの手を通り抜けたチャンスを見事にトライに結びつけることに成功。ウィンガー、ジンザン・へースがそのチャンスを見逃さず、ルースボールを22メートルに持ち込みそのままトライを決めた。

しかしそのトライによってスペインはより確固な攻めを展開、僅か4分間でボーナンとローペスがそれぞれトライを決めた。続いてセバスチャン・アスカラットが2人のタックルをかわし、ブラッド・リンクレーターが20分間のヤマ場で盛り上がりを見せながら試合最後のトライを決め77−10で試合終了。

ハウウェルをかっこよく見送ったオークス

ラグビーヨーロッパチャンピオンシップのタイトルとRWC 2019出場権争いの最終戦へ持ち込むために必要なボーナスポイントを獲得したルーマニア。しかしこの試合はキャプテンとしてルーマニアを率いてきたリン・ハウウェルの最後の試合となった。

ハウウェルは、ルーマニア代表チームの指揮官として6年間活躍したが、次のRWC出場権の行方が未明のうちにアシスタント、ロブ・フォファット、マッシモ・クッチッタと共に引退表明を出した。とは言っても、彼らはジョージアとのタイトル戦の準備期間、コーチとしてチームをサポートする。 

ベルギーのスクラムはルーマニアに歯が立たず、12分経過後、スクラムの後退に対するペナルティトライがスペインに与えられる。

前足ボールをフルに使い、ルーマニアは自由にゲインラインを通過。アンクルタックルで踵を取られたジャック・ウマガが、その直後、壮観に転がり込んで2つ目のトライを決める。

アフリカ出身のフランカーで強力なスクラム、モヤレ・クセロの後ろからナンバー8、ステリアン・バーセアがさらに2トライを決め、バレンティン・カラフェテアヌがコンバージョンに成功し、26−0に引き離した。

ルーマニアのプロップ、イオネル・バディウがハイタックルでシンビンに送られた間、ベルギーは敵の1人欠員を有効に活用。ボールの保有フェーズをいくつか経たのち、「ブラック・デビルス」の愛称で知られるベルギー代表チームのブラインドサイドフランカー、ジリアン・ベノアにボールを渡し、片手でボールを運び、センター、ベンジャミン・コクにパス。コクが選りすぐりのトライを決めて得点。

カラフェテアヌのペナルティが前半終了と共に成功し、スコアは29−5。

後半5分間でモールが崩壊し、またしてもルーマニアに与えられたペナルティトライで更にリード。一方的な試合の流れがその後も続き、素晴らしいブレークと、セカンドロー、ヨハネス・ヴァンヘルデンからクセロにパス、イオヌット・ドゥミトルがディフェンスを破り2本目のトライを決め、48−5に広げる。

64分、バディウが前のミスを償うべく強行突破で50点に到達。プレッシャーに喘ぐベルギーのパックにしびれを切らしたレフリー、サム・グローブホワイトが3本目のペナルティートライをオークスに得えた。グローブホワイトは、タイトヘッド・プロップのジェームス・ピアスにイエローカードを提示、ベルギーは試合終了まで14人で戦うことに。それでもベルギーは諦めることなく、ウィンガー、アービン・マリックが25メートルの素晴らしい角度からダッシュし、トライを決めた。

タイトル獲得が目前のレロス

ジョージアは、クラスノダールでロシアに29−9で勝利を収め、ラグビーヨーロッパチャンピオンシップの栄冠までの大きな前進を果たした。

レロスは、これまでの8年間で7冠を飾るため、長年のライバルで2017年のチャンピオン、ルーマニアとの最終戦で僅か1ポイントが必要となった。

いつものようにジョージアは、実力をフルに発揮できないまま勝利を勝ち取っていた。降り続ける小雨が両チームにとってうまくゲームを運べない原因でもあった。

しかし、ジョージアの揺るがない固いディフェンスは、ロシアにほとんど隙を与えず、チャンピオンシップ期間中、許したトライは一つだけという結果にヘッドコーチ、ミルトン・ヘイグも満足。

ジョージアの最初の3トライは、何度も試行錯誤して完成させた彼らのローリングモールから決めたものだったが、4つ目はメラブ・クビリカシュビリがうまく重みをつけたキックで飛んだボールをアクアプレーニングしてインゴールへ運んだトライだった。

16分、31分、40分でユリ・クシュナレブが3ペナルティーを与えロシアに9−7でリードされ前半終了。ジョージアの前半唯一の得点は、タイトヘッドプロップ、アントン・ペイクリシュビリが25分後に決めたトライ。

イオセブ・マティアスビリは、再開後6分、ロシアのモールでの攻撃を懲らしめるべくジョージアがリードポジションを維持、試合終了20分前まで10−9の僅差で進む。

うまく成立したモールから、セカンドローのカーレン・アシーシュビリがジョージアの次のトライを66分で決める。7分後、ジョージアがまたもや得意の作戦でトライ。決めたのは入替のミケイル・ガチェキラッツェ。

マティアスビリは3度目のコンバージョンは成功したものの、クビリカシビリがトライを決めた数分後のコンバージョンはゴールをそれた。スクラムハーフのバジル・ロブザンディズが巧みなグラバーキックを使ってトライ。そして、アンザー・シチナバの体から滑り戻ったルースボールにフルバックが十分な下方圧力を与えてトライを決めた。