2020年東京オリンピック世代や次世代の選手発掘と強化育成を意図して昨年に続いて開催された沖縄セブンズは、日本にとってチーム強化と選手育成の点で願ってもない実戦の場となった。

 日本はHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズでプレーする選手を中心とした日本選抜Aと、15人制代表の経験がある選手やセレクションを通して選出された日本選抜Bの2チームを編成。他6チームはオーストラリア、アメリカ、カナダ、ロシア、フィジーで、各国ともに今後のワールドシリーズ第3戦北九州大会(4月21-22日)や今夏のラグビーワールドカップセブンズ・サンフランシスコ大会(7月20-22日)へ向けた育成と強化の機会として、代表選手と候補選手の混成チームで臨んだ。

稲田ヘッドコーチは、「全ての基準を上げるための非常に重要な大会になった」と振り返る。

16歳の松田選手が7トライ

 2月24日のプール戦で日本選抜Aはアメリカに24-26、ロシアに15-20、フィジーに36-21で1勝2敗の3位だったが、アメリカ戦は終盤にバティヴァカロロ・ライチェル海遥選手のトライと田中笑伊選手のコンバージョンで24-19とリード。第2戦のロシア戦も終盤、バティヴァカロロ選手の同点トライで15-15と迫りながら、どちらの試合も終了間際に相手に得点を許して勝ち星を逃した。

 しかし、フィジー戦では16歳の松田凛日選手が今大会初のフル出場で5トライをマーク。初戦のアメリカ戦での先制を含めた2トライと併せて、今回の選抜チーム最年少ながらもプール戦3試合で7トライの活躍を見せた。

これはオーストラリア代表キャジー・ステープルス選手の今大会最多トライ(9本)、アメリカ代表ナタリー・コスコ選手の8トライに次ぎ、イングランドのジェス・ブリーチ選手と並ぶ3位タイの成績だ。

 松田選手について稲田ヘッドコーチは、「スピード、パワーともに高いポテンシャルを持っている。今後正しいトレーニングと経験を積んでいけば、将来的に世界レベルで活躍できる選手になる可能性は十分ある」と評価している。

 また、昨年の大会に松田選手と共に練習生として参加した大竹風美子選手は、ラグビー歴は約1年ながらも既に今年のワールドシリーズ第2戦シドニー大会で代表デビューを果たし、今大会でも躍動。19歳の大竹選手は2トライながらも全6試合に出場して、高校では陸上部だったという足と170センチ-67㌔という恵まれた体躯を使ったプレーを見せた。

 日本選抜Aチームは準々決勝ではプールA 2位のカナダと対戦して5-10で敗れ、5位決定戦準決勝での日本選抜Bとの26-0勝利を経て、5位決定戦へ進出。アメリカと再戦を19-15で制して5位に入った。

 一方、日本選抜Bはプール戦でオーストラリアに5-31、カナダに12-31、イングランドに10-26で敗れてプール4位になり、準々決勝でロシアと対戦。原わか花選手と室越香南選手のトライで12-0のリードを奪うが、逆転を許して17-21で敗れ、日本選抜Aとの5位決定戦準決勝に臨んでいた。フィジーとの7位決定戦では室越選手のトライで先制したがリードを保つことはできずに10-26で敗戦。1勝を挙げることはできずに8位で大会を終えた。

大会は決勝でイングランドを29-7で下したカナダが優勝。3位決定戦でロシアに45-14で勝ったオーストラリアが3位に入った。

北九州大会へ「もう一段上に上がりたい」                            

 日本選抜2チームのプレーについて稲田ヘッドコーチは、「選抜Aはボールキープなどアタックで通用する部分があったが、ディフェンスでは相手を倒しきることや、ボールを奪いに行く激しさ、最後に勝ち切る強さが課題」と見る。

一方、選抜Bについては、「ボールキャリーやサポートでのスキルといったベーシックな部分のミスから失点を重ねた」としながらも、「初めて国際レベルの大会を経験する選手もいた。世界で勝つために必要なことを認識した」として、この大会の経験が今後へのステップアップに繋がると期待している。

 今後、ワールドシリーズ第3戦の北九州大会へ向けて、女子セブンズ日本代表は合宿を重ねて強化を図る一方で、3月22~23日にはアメリカ・サンディエゴへの遠征でアメリカ、カナダとの試合も予定している。

4月の北九州大会で、日本は昨シーズンの年間王者のニュージーランド、今シーズン第1戦ドバイ大会で準優勝して現在総合ランク5位のアメリカ、同6位のフランスと同じプールBで戦う。他は総合1位をキープしているオーストラリア、スペイン、アイルランド、今回招待チーム参加の中国がプールA、今季第2戦シドニー大会3位のカナダ、同ドバイ大会3位のロシア、イングランド、フィジーがプールCという顔ぶれが揃う。

 世界の舞台で結果を出すために、「フィジカル、スキルともに世界一の成長率で伸ばすことが必要」と話す稲田ヘッドコーチ。北九州大会までに「トレーニング、栄養、リカバリーなどのベーシックな部分をもう一度見つめ直して最高の質にすることで、チームとしてもう一段上のステージに上がりたい」と話している。

 HSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ第3戦北九州大会は、4月21日(土)、22日(日)に福岡県のミクニ・ワールドスタジアム北九州にて開催される。チケットはこちらへ。http://rug.by/Kitakyushu

Photo credit: inamine / JRFU