RWCでのウェールズ

 1987年の第1回大会で3位に入って以降、ウェールズは惜しいところまで行くが何かが足りないという状況が続いています。

 ウェールズは好不調混在の時期がしばらく続いた後、2011年大会で再びベスト4へ進出しましたが、前回4強進出時の3位を超えられず、依然、銅メダルがワールドカップでの最高成績です。

 のちにトリプルクラウンを達成する優秀な人材を抱えたチームは、Clive Rowland監督の下、ウェリントンでのアイルランド戦で1987年大会を13-6の勝利でスタートしました。Mark Ring 選手がこの試合唯一のトライを決め、Jonathan Davies 選手がDGを2本マーク。Paul Thorburn選手がPGで加点しました。

 続いて29-16で白星を重ねたトンガ戦でGlenn Webbe選手がハットトリックを決めると、ワールドラグビー殿堂入りのLeuan Evans選手が、プール最終戦のカナダ戦で4本のトライを決めてチームは圧勝(40-9)しました。

 準々決勝のイングランド戦はまとまりのない試合になったものの、Gareth Roberts選手、 Robert Jones選手、John Devereux選手がそれぞれラインを超えて、ライバル対決を制しました。しかし、準決勝ではニュージーランドがレベルの違いを見せつけます。第2列のBob Norster選手を負傷で欠いた上、彼の代わりに出場した Huw Richardsの退場でチームは14人で戦うことになり、大会を制することになるニュージーランドに対抗できず、6-49で敗れました。

 それでも、ウェールズはオーストラリアを22-21で下して見事に3位で終了。Adrian Hadley選手が終了直前にトライを奪い、Paul Thorburn選手がタッチライン際から素晴らしいコンヴァージョンを決めて、チームを勝利に導きました。

 その後、スター選手の多くがラグビーリーグへ鞍替えして変換期を迎えたウェールズは、1991年と1995年の2大会でプールステージ突破に失敗します。

 1991年大会を間近に控えてRon Waldron監督辞任という激震に見舞われ、ウェールズの世界挑戦は大会開幕を待たずに実質的には終わったも同然となり、カーディフでの大会初戦で西サモアに13-16の屈辱的な負けを喫してしまいます。

 歴史は1995年大会でも繰り返され、Waldron 監督の後任だったAlan Davies監督が南アフリカ大会の開幕を数か月後に控えた時期にチームを去ったのです。

 オーストラリア出身のAlex Evans氏が暫定監督として着任して、ウェールズはブルームフォンテインでの初戦で日本に57‐10で勝利。代表デビューしたGareth Thomas選手がトライゲッターとしての才能の片鱗を見せてハットトリックを決めました。しかし、続くニュージーランド(9-34)とアイルランド(23-24)には敗れて、早々に大会を後にしました。

そして、「偉大なる救世主」として知られるGraham Henry監督の時代を迎えます。ニュージーランド人指揮官は自信を取り戻させると、パリでのフランス戦やカーディフでの南アフリカ戦という、1999年大会へ向けた強化試合で注目すべき勝利を挙げて、チームへの期待感も高まりを見せていました。

 開催国のウェールズは、アルゼンチンと日本から勝ち星を挙げて手堅い滑り出しを見せますが、サモアに負けて連勝記録が10でストップ。ミレニアムスタジアムで迎えた準々決勝で、オーストラリアに9-24で敗れて、ウェールズの1999年大会は終わりを告げました。

 2003年大会はウェールズにとってワールドカップでの転機と言えるものになりました。ニュージーランドと、この大会で優勝するイングランドを相手に、ウェールズは才知あふれるパフォーマンスを披露。彼らのエキサイティングなラグビースタイルで、最強チームを困らせることができると証明したのです。

 Steve Hansen監督の下、ウェールズはシックスネーションズでの全敗を受けてのワールドカップでしたが、プールステージでカナダ、トンガ、イタリアからなんとか白星を挙げて、準々決勝進出を確定し、復活の兆しを見せます。

 プレッシャーから解放されると、ウェールズはプール最終戦でニュージーランドに対して自分たちのラグビーで戦って相手を押し込む場面も見せるなど、最終的には37-53で敗れたものの、オールブラックスを相手に堂々とした試合を披露しました。

 

HOF 122 Shane WIlliams

準決勝ではShane Williams選手がイングランドの意表を突く頭脳プレーを見せますが、イングランドはMike Catt選手のキックとFW戦で優位に立って反撃。ウェールズは、ブリスベンでの試合を17-28で落として敗退しました。

 2007年大会では1991年大会と1999年大会の暗い影が見受けられるものになりました。サモアに負けまいとするフィジーが発奮。ナントでの戦いに38-34で勝ってウェールズを早々の敗退へ送り出しました。

 ウェールズはこれらの亡霊を4年後のニュージーランド大会で振り払います。66‐0でのフィジー戦の勝利はウェールズの歴代ワールドカップ戦の中でも国民を魅了する素晴らしいものになり、大きな成果を手にします。

 プール戦は初戦で南アフリカに1点差で敗れ、ニュージーランド大会は黒星スタートになりました。しかし、サモアとの厳しい対戦を凌ぎ、Scott Williams選手がワールドカップでハットトリックを決めた同国史上4人目の選手になる活躍を見せて、ナミビアに81‐7で勝利します。

 そしてフィジーを一蹴すると、準々決勝でのアイルランド戦へ駒を進め、24年ぶりのワールドカップの試合開催となった「風の町」ウェリントンへ向かいます。その試合でShane Williams選手、Mike Phillips選手、Jonathan Davies選手がトライを決めて、22-10で順当に勝利を収めました。

 Shaun Edwards指揮の下、ウェールズは2011年大会では他国が羨む守備力を備え、オーストラリアとの3位決定戦前までの6試合で失点をトライ5本と56ポイントに抑えます。

 しかし、そのウェールズも、準決勝のフランス戦で前半18分にチームを牽引してきた主将のSam Warburton選手がレッドカードで退場になると、チームは残りのメンバーで果敢に挑んだものの、8-9で試合を落としてしまいました。

 2015年大会は、Warren Gatland監督率いるチームにとって歓喜と苦悩が混在する大会になりました。「死の組」と呼ばれたプールBに振り分けられたものの、ウェールズはランク外のウルグアイとの初戦で快適なスタートを切ります。スローな立ち上がりから、ウェールズは南米チームに対して50得点を重ね、Cory Allen選手がハットトリックをマークしたものの、大会絶望となる負傷で会場を後にしました。

 

 トウィッケナムでのイングランド戦では、終盤にLloyd Williams選手のフィールドを横切る素晴らしいキックからGareth Davies選手がトライを決め、Dan Biggar選手がキック全てを成功させる23得点を叩き出して、ウェールズは28-25で勝利を収めます。続くフィジー戦にも勝って、8強入りを確定させました。

 プールAの1位を決めるプレーオフでウェールズはオーストラリアと対戦し、オーストラリアに6‐15で後塵を拝し、連勝記録も11でストップします。

 そして、南アフリカとの8強対決で、Biggar選手が再びチームを牽引するパフォーマンスを見せて、ウェールズは前半を13‐12で折り返します。しかし、スプリングボクスも後半に入ると反撃。南アフリカSH Fourie du Preezが残り5分にブラインドサイドを突いてラインを超え、ウェールズの希望を挫いたのです。

 栄光へもう少しで手が届くところまで来ていながら、ウェールズはまたしてそれを手にできずに終わりました。

RECORD BREAKERS

 Dan Biggar選手が2015年大会のトゥイッケナムでのイングランド戦で23得点を決めて、Neil Jenkins選手の記録を破って1試合最多得点記録を更新。

HIGH

ブロンズ世代。ウェールズは1987年大会で共同開催国のオーストラリアを破って3位になり、世界のラグビー界を驚かせたが、これが現在でも同国のワールドカップでの最高成績。ウェールズがトップの国際試合でオーストラリアに再び勝利を収めるのは、それから18年後のこと。

LOW

 2011年大会のフランスとの準決勝で、前半15分を待たずに発生したSam Warburton選手のVincent Clerc選手への危険なタックルは、不快極まるものでした。

 西サモアが1991年大会のカーディフでの試合に16-13で勝利したのは、ウェールズには赤面の事態。全サモアでもなかったのに、とメディアは皮肉も。

こんなコメント

 「結局、南アフリカは南アフリカらしいことをやった。彼らは1回のチャンスを活かして結果に結びつけたんだ」。2015年準々決勝で南アフリカに負けて、Warren Gatland監督のコメント。

驚きの数字

 2015年大会のトゥイッケナムでのイングランド戦でDan Biggar選手が決めた75分のPGはウェールズの勝利を呼び込み、同国のワールドカップ大会通算1000得点を記録しました。

ラグビーワールドカップ2019大会のプール組み合わせ抽選会は、2017年5月10日に日本の京都で行われます。

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