18日、準々決勝のスコットランド戦に臨むオーストラリア代表のバーナード・フォーリー(26)は、今大会、華麗なプレーでチーム躍進の立役者となっている。彼の最大のファンである父のマイケルさんは、息子の応援を欠かさない。準々決勝には、トゥイッケナム競技場まで足を運び、息子に声援を送るという。

マイケルさんは息子の応援に熱心なあまり、心臓切開手術後に息子のプレーを見ようと病院をこっそり抜け出したことさえある。だが、このマイケルさんのたくらみが良策になるとは誰も想像しなかっただろう。

将来有望な万能選手だったフォーリー少年は、シドニーのレッドフィールド・カレッジのメンバーとして14歳以下の試合に出ていた。

「父はその時入院していたが、僕がプレーする試合はすべて見に来ていたし、僕の指導もしていた。心臓障害のために、切開手術を受けたが、病院が、僕の試合の日に外出を許可しなかった。父は母に頼んでこっそり病院を抜け出し、僕のプレーを見にきたんだ」とフォーリーは回想した。

「僕はこの試合で体にキックを受けた。そのうちに呼吸がきつくなり、気分が悪くなりだした。試合の後、父を病院に送っていった際、僕は『ついでに診察を受けたら?』と勧められたんだ」

「検査の結果、僕の腎臓が破裂していたことが分かった。尿が真っ赤になっていて、とても怖かった」とフォーリーが振り返った。マイケルさんの無断外出で、命拾いをしたといえるかもしれない。

病院に行かなければ、悲惨な結果を招いたかもしれない。腎臓の裂傷は重く、再びラグビーができない状況になる危険もはらんでいた。フォーリーは「12カ月間もコンタクトスポーツを避けなければならなかったし、ラグビー場にも行けなかった。でも人生そんなものさ」と肩をすくめた。

フォーリー少年をスポーツ場から遠ざけるのは不可能に近いことだったろう。母がやきもきする一方で、ラグビーへの欲求を日に日に増していった。「僕はあらゆるスポーツをやって育ってきた。週7日、スポーツに打ち込み、家族はうんざりしていたからね」と笑った。

キックは確実さに欠け、攻撃力もチームメートのクエイド・クーパーほどではない、といわれて臨んだ今大会だったが、献身的な家族の支えがあり、フォーリーは破竹の勢いで存在感を増していった。

オーストラリアの攻撃を組み立てていく中で機械のように正確に、鋭いプレーを繰り広げ、オーストラリアの正SOのポジションを確保したことは間違いないだろう。

だがフォーリーは、自分の成長はクーパーとの研さんによるものと信じている。「クエイドはその場の成り行きに任せてプレーするのを好む優秀な選手だ。彼には想像させられるばかりだし、彼は挑戦者でもある。だからこそ彼は世界屈指のSOであり、僕は彼のような選手のそばにいたから、大きく成長できた」と話す。

「ポジション争いではない。われわれは、ともに努力し、互いにアイディアのキャッチボールをするという関係だ」とフォーリーは続けた。
今大会は19回のキックのうち外したのはわずか2回という高い成功率を誇るフォーリーは、18日のスコットランド戦で両親ら家族が見守る中、魅了するプレーを続ける覚悟だ。

「父は高いレベルでラグビーをしたことはないが、ラグビーが好きだった。彼を抑えつけておくことはできないよね」とフォーリーははにかんだ。

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