収益について

2020年10月、MI Associatesによる独立報告書が発表され、開催権を獲得した幸運な国にもたらされる真の価値が明らかになりました。データを分析した結果、男子ラグビーワールドカップの開催は総額29億ポンドの経済効果を生み出し、訪問者による開催国での直接消費額は11億ポンドに達することが分かりました。

開催国が享受できる莫大な利益に加えて、ワールドラグビーは、男子ラグビーワールドカップの経済的成功により、このスポーツの発展と成長に向けた記録的な額の投資が可能となり、ラグビーを可能な限り多くの人々にとって身近で楽しい競技にすることが可能となります。2020年から23年の間に、ワールドラグビーは5億6500万ポンド以上をこのラグビーに投資する予定です。

地味なスタートを切った男子ラグビーワールドカップの歴史ですが、今ではFIFAワールドカップとオリンピックに次ぐ第3のスポーツイベントとみなされています。EY社がまとめた報告書では、RWC2019は約43億ポンドの経済効果を生み出し、ラグビーワールドカップ史上最も経済的に成功した大会であったことが報告されています。

女子ラグビーワールドカップに関しては、1991年にウェールズで開催された第1回大会は、今日とは比べ物にならない僅かな額の財政支援を提供され、非常に少ない予算で運営されました。分析によると、現在、女子ラグビーワールドカップを開催することは2,100万〜2,900万ポンドの経済効果があると言われています。

女子ラグビーは、世界のスポーツ界で最も急速な成長を遂げている競技の一つであり、ラグビー伝統国と新興国共に驚くべき成長を遂げています。女子ラグビーへの関心が高まるにつれ、ラグビーワールドカップへの参加を希望するステークホルダーも増えてきています。

観客動員数

男子ラグビーワールドカップの第1回大会と第2回大会の間には36年の隔たりがありますが、観客動員数という点では異次元的違いがあると言ってもいいでしょう。第1回大会でのでフランスがオーストラリアを破った、ラグビーワールドカップ史上最も素晴らしい試合として印象的な準決勝が行われたコンコード・オーバルのような小さな会場は、今日のラグビーワールドカップでのチケットの需要を踏まえると、もはや過去のものとなってしまいました。

現在ではスーパーサイズの会場が普通となり、例えば2023年に開催されるフランス大会で、イングランドが日本と対戦する会場、スタッド・ド・ニースには、RWC1987年大会でこの2チームが対戦したときのように、5,000人程度の物見遊山の観客とは全く異なり、34,615人収容の会場が満員の観客で埋め尽くすされることは間違いありません。

2023年フランス大会の組織委員会は、前回の日本大会よりもさらに高いレベルの大会を目指しています。アジアで初めて開催された前回のラグビーワールドカップは、台風19号の影響でプール戦3試合が中止になるなど、ロジスティック面での課題があったにもかかわらず、様々な記録を塗り替え、観客へのアピールという点ではこれまでで最もインパクトのある大会となりました。

大会全体で99.3%のチケット完売率を記録し184万枚のチケットが売れたほか、公認ファンゾーンには113万人が訪れ、24万2,000人の訪日客が開催国日本の、素晴らしい「おもてなし」を満喫し、ラグビーワールドカップは再び世界のスポーツイベントの頂点に立つことができました。

一方、スタッド・ジャン=ブーアンの2万人近い観客の前でイングランドがトロフィーを掲げた2014年のフランス大会の成功を以って、「RWC 2017大会が女子ラグビーの人気を大きく高めるゲームチェンジャーとなる」というワールドラグビーのサー・ビル・ボーモント会長の予想は大胆なものでした。

しかし、彼の予想は的中し、アイルランドで行われた大会では、17日間の大会期間中、試合を観戦しに45,412人の観客が集まりました。この数字は、開催国が8位という不本意な結果に終わったことを考えれば、なおさら素晴らしいものです。

ニュージーランドがイングランドを41-32で下して5度目の優勝を果たした決勝戦会場、ベルファストのキングスパン・スタジアムには17,115人の観客が詰めかけましたが、ダブリンで行われたプールステージの17,516人よりも数百人少ない数でした。

2022年に開催される次回のラグビーワールドカップは、熱狂的なラグビー大国、ニュージーランドでの開催となり、大会組織委員会はまたたくさんの記録を塗り替える大会にすることを確信しています。

デジタル/テレビ視聴者

1987年にラグビーワールドカップの物語が始まった頃は、インターネットはまだ初期段階で、ソーシャルメディアも存在していませんでした。また、大会が独自のTwitterアカウントを持つようになったのは2009年のことでした。しかし、ラグビーワールドカップはデジタル時代に対応し、ツイッターのフォロワー数は100万人、インスタグラムのフォロワー数は約75万人、フェイスブックのフォロワー数は455万人と、かつてないほど多くの人の目に触れるようになりました。

2019年の男子ラグビーワールドカップ日本大会で展開した「ワールドラグビー」と「ラグビーワールドカップ」のソーシャルプラットフォームで提供した、試合、また試合以外の動画コンテンツは21億回以上再生され、この数字はラグビーワールドカップ2015で達成された数字の約6倍にあたります。

大会の公式プラットフォームで4,500万回の視聴、ワールドラグビーのソーシャルメディアコミュニティに5万人の新しいファンが加わりラグビーワールドカップ2017大会はこの観点からも大成功を収めました。

テクノロジーの進化により、ファンは様々な方法でスポーツを楽しめるようになりましたが、テレビの視聴者数はイベントの人気を測る重要な指標であることに変わりはありません。

日本で開催されたRWC 2019は、ワールドラグビーの放映権を持つパートナー放送局のネットワークを通じて、世界中の8億5,700万人以上の人々がラグビーの試合を観戦しました。前回のイングランド大会に比べて26%の増加を記録し、これまでで最も高い視聴者数を記録した大会となりました。

アジア初の開催となったラグビーワールドカップ2019年大会では、伝統的にラグビー中継が盛んなフランスやイギリスとの時差があるにもかかわらず、ライブ中継の累積視聴者数は5億100万人を記録し、2015年大会の4億7,900万人から5%増加しています。

2019年大会において日本国内のテレビ中継で最も視聴された試合は、横浜で行われたプールAの対戦、日本代表「ブレイブ・ブロッサムズ」対スコットランド代表の忘れられない対決でした。ピーク時には日本全国で5,480万人が視聴し、開催国、日本が初めて準々決勝に進出するという歴史的な出来事を目の当たりにしました。

南アフリカがイングランドに勝利した決勝戦の試合は、平均視聴者数4,490万人を記録し、ラグビーワールドカップの決勝戦の中で最も視聴された試合となりました。英国での放映権を持つITV社は、厳しい時間帯にもかかわらず、土曜日の朝のピーク時に1,280万人の視聴者を獲得し、79%の占拠率を記録しました。

女子ラグビーワールドカップのテレビ中継は、大会の初期の段階においては控えめに言っても形ばかりのものでしたが、2017年大会になると110カ国以上がアイルランドからのライブ映像を放映しており、いかに関心が高まっているかがうかがえます。1,536時間という総中継時間は、前回の2014年を130%上回り、カナダで開催されたRWC 2006の9倍以上にもなりました。

イングランドに敗れた "Les Bleues "の準決勝戦はフランスの国営放送局「France 2」が放映し、300万人以上が視聴しました。イングランド対ニュージーランドの決勝戦は、イギリスのITVが放送。ピーク視聴者数は265万人を記録し、女子ラグビーワールドカップ決勝戦の単独視聴者数としては最高を記録しました。

レガシー

ラグビーワールドカップは、4年に一度競技場で行われるだけの大会ではなく、開催国や地域全体で生まれるレガシーという点でも重要な役割を担っています。これは、日本で開催されたRWC 2019に向けて実施した「Impact Beyond」プログラムの大成功にも表れています。

アジアラグビーは、ワールドラグビーおよび日本ラグビーフットボール協会と共同でプロジェクトを立ち上げ、4年間のラグビーワールドカップ大会サイクルで100万人の新規ラグビー参加者を創出するという目標を掲げましたが、「プロジェクト・アジア100万人」の最終的な数字は、その目標をはるかに上回る225万人に達しました。

Impact Beyondプログラムには22のアジアラグビー加盟協会が参加し、2016年以降、アジア地域全体で約63種類のプロジェクトが実施され、新規参加者の43.1%が少女や若い女性という結果を生みました。

日本では、新たに118万人がラグビーに参加し、6,000校以上の小学校で769,000人の児童がタグラグビーを体験し、14,000人以上のタグティーチャーが研修を受け、タグラグビーのレッスンを継続的に開催しています。

また、ラグビーワールドカップ2019の主要なチャリティパートナーであるChildFundの Pass It Backプロジェクトを支援するために、ラグビーファミリーから200万ポンドを超える寄付が誓約されました。この寄付により、ChildFundは、ライフスキルとラグビーを統合したカリキュラムを通じて、アジアの恵まれないコミュニティに住む2万5千人以上の子どもたちの生活を改善することができました。

第1回女子ラグビーワールドカップがもたらしたインパクトとそのレガシーは、管理者からプレーヤーまで、現在、ゲームにおいて影響力のある地位に就いている人たちの面々にも表れています。

組織委員会の委員長を務めたデボラ・グリフィンは、2010年にイングランドがRWCを開催した際にも組織委員会に参加し、その後、ラグビーフットボール協会理事、またイングランドラグビーボードの委員を務め、ワールドラグビー理事会で最初の女性理事の一人として選ばれました。RFUでの活動を通じて、イングランド女子チームのプロ契約の導入や、15人制ラグビーのプレミアトーナメントの創設でも重要な役割を果たしました。

ワールドラグビーの殿堂入りを果たしたキャロル・イシャーウッド、ギル・バーンズ、ライザ・バージェスアンナ・リチャーズ、ジゼル・マザー、エマ・ミッチェル、キャンディ・オルシーニ、ナターシャ・ウォンなどは、第1回女子ラグビーワールドカップで活躍した選手たちで、コーチングや運営陣、あるいはその両方で影響力のある役割を担っているプレーヤーの一例です。

女子ラグビーワールドカップの注目度が高まっていることは、プレーヤー参加者数と観客数の両方で増加傾向にあることにも反映されています。RWC2017の成功を受けて、大会終了後から2019年6月までの間に世界の女性プレーヤーの人口は28%増加し、270万人のプレーヤーが新たに登録しています。

試合観戦への関心もそれに劣らず見事な規模で高まっています。2017年に開催されたラグビーワールドカップで5回目の優勝を果たして以来、初めてのテストマッチでプレーしたブラックファーンズは、シドニーでのオールブラックス対ワラビーズのダブルヘッダーの一部として行なったこの試合で、28,842人の観客の前でオーストラリアを下しました。

フランスは長年にわたりホームで10,000人以上の観客を前にプレーしてきました。イングランドも、2020年3月に行われた女子6カ国対抗戦でウェールズを66-7で破り、トゥイッケナム・ストゥープでのこの対戦では地元のファン、10,974人を動員する記録を打ち立てました。