ラグビーワールドカップ2019は、フィールド上でのアクションの数々が印象的な大会だったかもしれませんが、実はこの大会を史上最もインパクトのある大会にしたのはフィールド外での出来事の数々でした。これは決して大袈裟な表現ではありません。EYの直近の報告書が説明しているように、43億ポンドという記録的な経済効果を生んだこの大会はスポーツ面、社会面、そして経済面においてラグビーワールドカップ史上最も大きなインパクトを与えた大会となりました。

アジア初のRWC、Japan 2019は、世界で最も人口の多いアジア大陸全域にとって真のゲームチェンジャーであったことが証明された。ワールドラグビー イヤー・イン・レビュー2019 で明らかにされた新たなデータでは、この大会によってアジアの新規ラグビー参加者225万人(日本だけでも118万人)が誕生したことがわかっている。ワールドラグビー のサー・ビル・ボーモント会長は、「大会にとっておそらく最も重要な「トライ」だった」と表現している。

RWC 2019での「ブレイブ・ブロッサムズ」の大変素晴らしいパフォーマンスもさることながら、大会の恒久的なレガシーを構築するためワールドラグビー 主催している Get Into Rugby 及び Impact Beyondプログラムも、日本とそれ以外の国々において新たな世代の熱狂的ラグビーファンを惹きつけるきっかけとなった。

アジアのU18女子代表チーム50パーセント増加

ワールドラグビー のGet Into Rugby(GIR)プログラムは、世界中の老若男女がラグビーをトライ、プレー、ステイできるようにするという唯一のゴールを掲げて作られたものだ。このプログラムは、ラグビーを安全に、楽しく漸進的な方法で学んでもらうため、世界中で加盟協会やリージョナルアソシエーションがプログラムパートナーと連携し2,010カ所で実施している。

2019年の1年間、世界中でGIRプログラムに参加した210万人のうち、45パーセントの参加者がアジアでの参加だった。参加者数においても上位10カ国のうち5カ国がアジアの国 − インド、日本、UAE、パキスタン、そして中国だった。これらの結果はRWC 2019の集大成であるだけでなく、GIR、そしてImpact Beyondが大会開始に向けて何年も前から取り組んできた基礎準備の賜物と言える。

ラグビーを始めた新規参加者がラグビーに参加し続けること(ステイ)もGIRの重要な目標の一つだ。国の年齢別代表チームに入るGIRプログラムの卒業生が増え続けている事実はまさにこのことが理由になっており、GIRにとっても励みになっている。特にU18女子の年齢層の成長が最も期待される。

直近のRWCサイクル(England 2015 から Japan 2019までの間)におけるアジアのU18女子代表チームの数は50パーセント増加した。これらのプレーヤーの90パーセントがGIRプログラムでスキルを磨いていた。

そしてこのインパクトはアジアに限ったことではない。フィジアナ・セブンズチームの現役メンバーのうち2名はGIRの卒業生だ。オセアニア・ラグビーセブンズ選手権大会2019にバヌアツ代表チーム(太平洋諸島国として初めて本大会に出場)として出場した2名も同様だ。ケニア・ライオネスのスコッドにおいては、これまでの3年間で18名のプレーヤーがGIRの卒業生だった。

2019には多くのGIR卒業生が国際ラグビーの一員となった一方、このプログラムを通じて各国が自分なりの成長を遂げた。第1回GIRタグフェスティバルの開催国となったソロモン諸島の国、セントルシアでは学校対抗ラグビー大会を開設し、200人以上の児童が参加した。またアフガニスタンでは学校のカリキュラムにGIRが組み込まれた。

恒久的なレガシー

GIRと共にImpact Beyondプログラムもゲームの世界的普及というワールドラグビー の使命における中心的な柱であり、未来世代をラグビーに惹きつけ取り込んでいくため、ラグビーワールドカップやオリンピック大会など最も有名なワールドラグビー 主要イベントと並行して実施している。

RWC 2019の開催前の段階からImpact Beyondの主要目的は一貫して日本とアジアにおけるラグビーの可能性を引き出すことだった。ワールドラグビー のImpact Beyond報告書には、このプログラムの取り組みによって、日本においてだけでも6000校以上の小学校でタグラグビーが導入され、769,000人以上の児童がタグラグビーを体験した。

このプログラムによるインパクトが及んだのは日本だけでなく、RWC 2019開催までの間に合計22のアジアのラグビー協会がImpact Beyondに参加した。パキスタンでは237,000人に上るプレーヤーが、また中国では180,000人、インドでは106,000人のプレーヤーが、またバングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ネパール、スリランカ、そしてインドネシアでも数え切れないほどのプレーヤーがラグビーを初体験した。アジアにおける新規参加者の43.1パーセントが女子・女性であったなど、また一段と進歩した。

19カ国を訪問したRWC 2019トロフィーツアー、アジア全域の若いプレーヤーにRWC 2019のスリルを直に味わってもらう交流プロジェクト、そしてランドローバーなどのRWC 2019パートナーが企画したジョニー・ウィルキンソンやブライアン・ハバナなどの英雄と触れ合うユースプログラムなど、あらゆるImpact Beyondイニシアチブによってこのような力強い成長を遂げることができた。

ラグビーは、人格形成につながるその価値を誇るスポーツ。また、Impact Beyond 2019プログラムの一環として、RWC 2019の慈善団体パートナー、チャイルド・ファンド のPass It Back(パス・イット・バック)に200万ポンドの寄付を行って世界のラグビーファミリーの力強い結束を見せた。この寄付金によって、厳しい環境で暮らす25,000人のアジアの子供達が困難を乗り越えられるよう、ラグビーを取り入れたカリキュラムを通じてライフスキルを学ぶ。

世界中でラグビーが発展するため、またラグビーにおける男女、人種、年齢、また身分などにおける多様性を広げていくために、Impact Beyond も Get Into Rugbyもこれまでと同様、今後も重要な役割を果たしていく。東京オリンピック開催が視野に入ってきた今、日本、そして世界中でラグビーの認知度や感動を高める、これまでにない更なる大きなチャンスがやってきた。

ワールドラグビー 、イヤー・イン・レビュー2019の完全版はここからお読みいただけます。>>