1987年に始まったラグビーワールドカップで史上最大の番狂わせと言われる一戦がある。1995年のイングランド大会で、9月19日にブライトンで行われた日本代表対南アフリカ代表の試合だ。

2度のワールドカップ優勝経験があり、世界ランク3位の南アフリカに対して、8大会連続出場ながらも過去1勝しか挙げたことがない日本は、世界ランクも大会前に10位から15位に後退。当時日本代表を率いていたエディ・ジョーンズヘッドコーチ(現イングランド代表)が「小人が巨人と戦うようなもの」と表現した組み合わせだったが、桜の戦士たちは果敢なプレーを披露する。特に70分以降は緊迫感溢れる展開となった。

 「ブライトンの歓喜」と呼ばれるスポーツ史に残る名勝負が、5月3日(日)日本時間20:00(英国時間12:00)からRugby World Cup Facebook またはWorld RugbyのYouTubeチャンネルでライブストリーミング配信される。

4年をかけた周到な準備

 大会初戦となる南アフリカ戦の2日前、試合メンバーを発表したジョーンズヘッドコーチは「真っ向勝負する準備はできている。多くのサプライズを起こしたい」と話した。

南アフリカ代表が2度目の優勝を遂げた2007年にテクニカルアドバイザーを務めていたジョーンズ氏が、日本代表指揮官に就任したのは2012年。以後4年間でワールドカップ8強入りを目標に1日4部練習もこなすハードなトレーニングを重ね、日本代表のフィジカルとスクラム、パスワークなどを徹底的に鍛えてきていた。それだけに、指揮官の言葉には選手たちへの期待と自信が滲んでいた。

主将を務めたFLリーチマイケル選手も「取り組んできた練習に自信がある」と準備には手ごたえを感じていた。

 先発にはリーチ主将をはじめ、この試合で自身の持つ日本代表最多キャップを95に更新するLO大野均選手、HO堀江翔太選手、LOトンプソンルーク選手らFW陣に、SH田中史朗選手とSO小野晃征選手のハーフ団、WTBには松島幸太朗選手と山田章仁選手を用意した。また、試合前日にはCTBクレイグ・ウィング選手の負傷により、立川理道選手が先発に繰り上がった。

 一方の南アフリカ代表は主将のCTBジャン・デビリアス選手、日本戦で111キャップ獲得の世界的WTBブライアン・ハバナ選手、4大会連続出場のNO8スカルク・バーガー選手とLOビクター・マットフィールド選手、“ビースト”の異名を持つPRテンダイ・ムタワリラ選手ら、パワーと経験を備えた主力を日本との初戦に揃えてきた。

リザーブにもバーガー選手と共にトップリーグのサントリーでプレーしていたSHフーリー・デュプレア選手、2019年大会でも大活躍だったSOハンドレ・ポラード選手の名が並び、先発の総キャップ数でも日本の603に対して880と圧倒していた。

70分からの攻防

 日本代表は試合開始から南アフリカ代表の波状攻撃を受けるが、低いタックルを繰り出し守備で健闘。FB五郎丸歩選手のPGで先制する。

 しかし、南アフリカ代表はFLフランソワ・ロウ選手のトライでほどなく逆転。リーチ選手のトライで再び日本代表がリードを奪うが、相手もすかさず反撃して試合はシーソーゲームの展開に。前半は日本代表が2点を追う形で折り返す。

 後半も一進一退の展開が続くが、素早い攻撃とハードな守備を続ける日本代表は、五郎丸選手が精度の高いPGを次々と成功させて、南アフリカ代表にプレッシャーをかけ続ける。

7点ビハインドの68分、五郎丸選手がトライを決め、コンバージョンを成功させて日本代表が29-29と追い付く。約3万の観衆で埋め尽くされたコミュニティスタジアムに沸き起こる「ニッポン」「ジャパン」のチャント。

残り時間は10分。そこから試合は息をもつけない展開を見せる。そして、最後の最後に日本代表の選手たちが自ら下したプレーの選択…。

 この試合で1991年大会以来となるワールドカップでの2勝目を挙げた日本代表は、中3日で迎えた第2戦でスコットランド代表に敗れたものの、サモア代表とアメリカ代表に勝利。スコットランド代表と勝利数で並んだが勝ち点で2及ばずに3位となり、3勝を挙げながらノックアウトステージへ進出できない大会史上初のチームとなった。

 一方の南アフリカ代表は、日本代表戦でワールドカップ出場6大会で通算5敗目を喫したが、サモア代表、スコットランド代表、アメリカ代表のすべてにボーナスポイント付きの勝利を挙げ、首位でプールを突破。最終的には、優勝したニュージーランドに準決勝で敗れて3位決定戦にまわり、アルゼンチンに勝利して3位となった。