2シーズンぶりのHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ復帰を目指して臨んだ4月上旬の香港での予選大会で、サクラセブンズこと女子セブンズ日本代表は、準決勝でスコットランドに敗れて志半ばに終わった。

開催国として出場が決まっている2020年東京オリンピックでメダル獲得を狙う日本にとって、世界トップレベルと対戦するワールドシリーズは絶好の強化の機会でもあっただけに、主力選手4~5人が負傷で離脱するなどの不運もあったが、来季コアチームへの復帰を逃したショックはチームにとって小さくない。

だが、チームを率いる稲田仁ヘッドコーチは、チームの軌道修正を図る貴重な機会と受け止めている。

「いろいろな要因があったと思うが、ワールドシリーズに出ないで過ごす中、選手とスタッフに少しずつ妥協や甘さのようなものが出て、少しずつチームのスタンダードを下げていたのだと思う。ここでそれに気づいて、選手の意識も変わったところがある」と、稲田ヘッドコーチは振り返った。

香港の大会後、北九州セブンズへ向けて行われた久留米合宿の練習で、互いのプレーに精度や厳しさを求める声が選手たちから出て、互いを高め合う厳しさが戻ってきていると指摘。「変われるチャンスはここしかなかった。これをプラスに換えていく」と、指揮官は言う。

 昨年夏のアジア競技大会と秋のアジアラグビーセブンズシリーズに優勝後、年明けにはフランスでのセブンズでの大会やオーストラリアへの遠征などを実施。2020年東京オリンピックを睨んで、世界トップレベルの相手との対戦を行って強化を図ってきた。セットプレーには手応えを覚えているという。

「遠征で強豪国と対戦を重ねて、ある程度やれるという手応えを得ている部分は間違いなくある。自信を失うのではなく、自分たちが足りなかった部分を受け止める。積み重ねてきた部分に嘘はない」と、稲田ヘッドコーチは語る。

北九州セブンズでチェック

招待参加する北九州セブンズは、日本にとって自分たちの現状と臨むべき世界基準をチェックする絶好の機会になる。

プールで対戦するのは、ニュージーランド、フランス、ロシアで、個の組み合わせは2017年の北九州大会と同じだ。北九州大会で日本が初戦でニュージーランドと対戦するのは3年連続、フランスとも3年連続で同組だ。

ニュージーランドは今季シリーズ前半戦3ラウンド全てで優勝し、総合順位トップを走る。フランスは総合5位で昨年大会では準優勝、ロシアは総合順位で現在7位に付けている。

しかも、3チームともDHLパフォーマンストラッカーの10位内に2人ずつがランクインしている。ロシアはシリーズ総合1位のAlena Mikhaltsova選手と7位の Balzat Khamidova選手、ニュージーランドは2位のMichaela Blyde選手と3位のSarah Hirini選手。フランスは5位にShannon Izar選手と10位にCaroline Drouin選手が名を連ねている。強者揃いなのは間違いない。

稲田ヘッドコーチは、「3年連続で初戦はニュージーランドで、自分たちの成長を図る意味でも重要な試合になる。世界一のチームと対戦して、自分たちがどこまでやれるか。そこに勝つためにチャレンジすることで、自分たちが次へ突き破るきっかけになると思う」と期待している。

さらに、指揮官は「自分たちを次のレベルに引き上げるために、チャンスとしてはこれがラストかと思う。失うものは何もない。恐れずに、思い切りチャレンジして、とにかくアグレッシブにやる。結果はあとからついてくる」と言葉をつづけた。

中村主将、「来年へ向けた光」

香港での苦い経験に、改めて「完璧に近い準備と完璧に近いプレーを突き詰めなければいけない」と痛感したというサクラセブンズ主将の中村知春選手は、「まだ終わりじゃない。大きなターゲットは2020(東京オリンピック)」と気持ちを切り替えている。

昨年夏のラグビーワールドカップセブンズやアジア競技大会も経験して。昨年までとは違う北九州大会になりそうだ。

 中村選手は、「昨年は残留もかかっていて、『どうやって勝つか』も全く見えない状況だった。それに比べると、ワールドカップやアジア大会を経て、どのスタイルが通用して、どこがうまくいけば勝てるかというのが見えてきている」と話す。

高い精度は求められるが、ぎりぎりのところでボールをつなぐラグビーに、日本のスタイルとしての可能性を感じているという。

「一歩ずつ踏んで行くしかない。1ミリずつだが成長はしているかと思う」とキャプテンは言う。

 チームには中村選手や平野優芽選手ら前回のワールドシリーズを経験した顔ぶれのほか、松田凛日選手のように今回が世界の舞台へのデビュー戦となる若手も加わった。

中村キャプテンは言う。

「ひたむきに戦ってもらえれば見えてくるものがある。その気持ちを出してホームでプレーできるか。そこがこの先につながっていく。見ている人に何を届けられるかも、オリンピックを控えたアスリートとしても大事なことだと思う。一人ひとりが何か得るもの、来年に向けて光が見えればいい。」

 サクラセブンズの戦いは、ここからだ。