6月11日(土)に行われた「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」第2節は、アイルランド代表とアルゼンチン代表の歴史的勝利で熱く盛り上がった。
6月15日(水)、U20チャンピオンシップ、プール戦のクライマックスとなる第3節が行われる。各プールの上位に立つ、無敗のアイルランド代表と開催国のイングランド代表、そしてアルゼンチン代表が準決勝を目指して戦う。試合時間(すべて現地時間)は以下のとおり:
- プールA:アイルランド代表 - ジョージア代表(17時30分 キックオフ)
- プールA: ニュージーランド代表 - ウェールズ代表(17時30分 キックオフ)
- プールB: スコットランド代表 - イタリア代表(15時15分 キックオフ)
- プールB:イングランド代表 - オーストラリア代表(19時45分 キックオフ)
- プールC: アルゼンチン代表 - 日本代表(15時15分 キックオフ)
- プールC: 南アフリカ代表 - フランス代表(19時45分 キックオフ)
プールA: ニュージーランド代表 24-33 アイルランド代表
今年2月のシックスネーションズ大会で優勝したウェールズ代表を倒し、第1戦で番狂わせの勝利を飾ったアイルランドは、好調を維持しニュージーランドを相手に本大会2度目の番狂わせを演じた。
無敗のアイルランド代表はプールステージの最終戦となる対ジョージア戦で勝利を挙げれば、プールAのトップチームとして準決勝進出が決定する。
ビル・ジョンストンのペナルティーゴールが決まり、リードを奪ったのはアイルランド代表だった。前半7分、早くもニュージーランド代表のジョーディー・バレットがトライを挙げ、逆転。
その後、ジョンストンは2本目のペナルティーゴールを決めるが、アダム・マクバーニーがノックオンでイエローカードをもらい、シンビンで一時退場。アドバンテージとなったニュージーランドはペナルティーゴールを失敗するも、ショーン・スティーブンソンのトライで追加点を獲得。
アイルランド代表は一人少ない状態でもしぶとい攻撃を続け、ようやくグレグ・ジョーンズがゴールラインを破った。フィールドに戻ったマクバーニーも34分にトライを決めた。
14−13というスコアで迎えたハーフタイムでは、アイルランド代表が1点差を追っていた。ビル・ジョンストンが肩の脱臼でフィールドを去ったが、交代のジョニー・マクフィリプスが後半開始早々にキックで得点を重ね、スコアをひっくり返した。
試合終了30分前、黒衣のマロ・トゥイマがニュージーランドを再びリードに引っ張り込むが、アイルランドは粘り強くプレッシャーをかけ続け、相手のエラーを誘った。
時間が刻々と過ぎるなか、モールからアイルランドのマックス・ディーガンが見事ゴールラインを超えた。マクフィリプスのコンバージョンも決まり、ニュージーランドは2トライ差の壁に立ちはだかっていた。
早い回復を見せたニュージーランドは1トライ獲得でアイルランドを脅かしたが、マクフィリプスがさらにペナルティーゴールを決め、アイルランドは歴史的勝利をおさめた。
アイルランドのトライスコーラー、マックス・ディーガン選手のコメント
「トライを決めなくてはならないところで、実際に決めに行くことは夢のようだ。上手く言葉にすることはできないが、幸いなことにトライを決めることができた」
「(ウェールズとニュージーランドを連続で下すことは)本当に特別だ。キャンプ地で実力があったことは確認できたし、順調に進歩していた。キャンプ地ではみんなの感情が高ぶっているし、それはしばらく持続することでしょう。今はとりあえず一歩下がって、ジョージア戦に集中しなければならない」
ニュージーランド代表、スコット・ロバートソンヘッドコーチのコメント
「相手はもちろん、自分たちでもハードルを上げてしまった。相手はペナルティーを狙ってくるチームであり、それを上手く回避することができなかった。相手の思い通りのプレーをさせてしまった。アイルランドは称賛に価する。このレベルでニュージーランド代表を下すことができたのは今回が初めてだと思うので、アイルランドを祝福する」
プールA: ウェールズ代表 10-9 ジョージア代表
アイルランド代表を相手に、第1戦目をまさかの黒星で終えたウェールズ代表は、勝利を掴みにマンチェスターシティアカデミースタジアムに登場した。勝利はおさめたものの、10-9というスコアで予想を超える接戦となった。
シックスネーションズの優勝者でもあるウェールズ代表は、前半4分にプロップのレオン・ブラウンがトライを決め、好スタートを切った。しかし、ファンが期待していた連続トライでの快勝はやってこなかった。
第1節では、ニュージーランド代表に大敗したジョージア代表、マンチェスターのピッチに降りかかった雨のなか、プレーを支配することに成功した。
前半30分、ジョージア代表のスクラムハーフをつとめるゲラ・アプラシッジェが1本目のキックを失敗したが、数分後には今大会チーム初の得点を挙げることに成功。前半の終盤ではペナルティーゴールを決め、7-6とジョージアはわずか1点の差でウェールズを追っていた。
後半14分、ジャロッド・エバンズのペナルティーゴールが決まりウェールズが点差を少し広げた。しつこく尾を追い続けたジョージア代表は積極的にチャンスを作り、試合時間残り13分でゲラ・アプラシッジェが3本目のペナルティーゴールを決め、点差はまたもや1点差に縮まった。1節目の対アイルランド代表戦に続く、2度目の番狂わせを待ち受けていたファンの期待で満席の会場は熱く盛り上がった。
途中出場でフィールドに立ったダニエル・ジョーンズは一本目のキックをミスし、ウェールズ代表はピンチに追い込まれたようにも思えた。だが、ウェールズにとっては、運良く後半残り5分でのアプラシッジェのペナルティーゴールが惜しくも失敗に終わり、ウェールズは僅差で逃げ切った。
ジョージア代表、イリア・マイスラッゼヘッドコーチのコメント
「選手の士気を高めるためにも、今回の試合では全力を尽くすことが大切だった。素早い回復と効果的なタックルを中心に、守備を強化することを心掛けた。ブレイクダウンでの選手の数を減らし、その分ディフェンスに置いた。攻撃に関しては、改善しなければならない点がある。次戦に向けて攻撃面での修正につとめたい。第1戦から向上しなければならなかく、実際に向上することができた。ジョージアのファンの皆さん、そして自分たちの自信のためにもパフォーマンスを上げる必要があった」
「第1戦での問題点は、チーム一体として準備をする時間が足りなかったことだ。フランスでプレーする選手が多く、彼らは大会の2週間前にトレーニングに合流した。なかには1週間を切った時点で合流した選手もいる。大会前の練習試合に参加しなかった選手も多い。それにしても、対ニュージーランド代表戦では思い通りのプレーをすることができ、今日もそのような場面がいくつかあった。」
プールB: オーストラリア代表 38-10 イタリア代表
AJベルスタジアムでイタリア代表と戦ったオーストラリア代表は前半の連続ミスで10−7でリードを許したが、後半にはスコアをひっくり返し、ボーナスポイント付きの逆転勝利で準決勝進出の可能性を残した。
前半、濡れたボールのコントロールに苦闘し、なかなかリズムがつかめなかったオーストラリアは、レオナルド・マンテッリのペナルティーゴールでイタリアに先制を許した。オーストラリアの動揺を見計らったアズリー二は、さらに27分にトライで得点を重ねた。
フォワードのピックアンドゴーから上手くスペースを作り出したオーストラリア代表は、前半30分過ぎにサイモン・ケネルウェルのトライでようやく足場を得ることができた。コンバージョンを決めたマック・メーソンは、さらにハーフタイム明けにペナルティーゴールを決め、オーストラリアは同点に追いついた。その後、ノーサイドのホイッスルが響き渡るまで、オーストラリアは控え選手をうまく使いこなし、試合を支配、4トライを挙げ見事勝利をおさめた。
オーストラリア代表、アドリアン・トンプソンヘッドコーチのコメント
「前半、イタリアは非常に良いプレーをしていた。相手は若いチームで、来年に目を向けている。シックスネーションズでも良い戦いをしていた。わたしたちも、試合の重要性を認識していたので、少し緊張していたと思う。」
オーストラリア代表のトライスコーラー、メーソン選手のコメント
「序盤は、コンディションのせいもあり、不注意なプレーが少し目立った。前半はイタリアが支配していたが、後半は流れをつかみ返すことができた。もちろん(対スコットランド代表戦で)敗れたことにがっかりしていた。負けるために、はるばるとオーストラリアから来たのではない。それでもみんなは気持ちを切り替えて前に進むことができ、今日の試合に勝つことができた」
プールB: イングランド代表 44-0 スコットランド代表
今年2月に行われたシックスネーションズでは、スコットランドに敗れた開催国のイングランド代表、マンチェスターシティアカデミースタジアムでリベンジの勝利を挙げ、会場の観衆を盛り上げた。5トライ獲得したホームチームにとって、圧倒的な勝利となった。
好スタートを切ったイングランドは、序盤からスコットランドを圧し、7分間でペナルティーゴールを3つ決めた。22分には、ジャック・ウォーカーキャプテンがモールからのトライを挙げ、コンバージョンも決まり、テンポは完全にイングランドのものとなった。
前半のペナルティーキックを2本ミスしたスコットランドは、得点のチャンスを逃し、そのままハーフタイムを迎えた。
ハーフタイム明けから活気を見せたイングランドは、後半開始からまもなく2トライを獲得、リードを広げた。ボーナスポイントに結びついたトライは、モールからゴールラインを突破した途中出場のジャック・シングルトンが決めたものだった。試合終了間際に、同じく途中出場のマックス・マリンズがディフェンスをかわし、タッチダウン。イングランドは44−0というスコアでスコットランドを撃破した。
イングランド代表、マーティン・ハーグヘッドコーチのコメント
「結果には満足しているが、まだ修正しなければならない点が残っている。繰り返し敵陣22メートルライン内に入ったにも関わらず、ディシプリン不足か、何らかの理由で、得点に繋げることができなかった。それでも試合に勝てたことを喜んでいるし、素晴らしい終わり方だったと思う。自陣のラインから攻撃に出たことも非常に良かった。ただ、もう少し正確さを上げなければない」
プールC: フランス代表 46-14 日本代表
第1戦でアルゼンチン代表に破れ、苦汁を飲まされたフランス代表は、AJベルスタジアムで7トライゲームを披露し、日本代表を圧倒した。
円滑な走りで大活躍し、マンオブザマッチに輝いたダミアン・ペノーは自らのトライに加え、得点に繋がるアシストでフランス代表を今大会初の勝利に導いた。
しかし、試合開始から7分、フランスのディフェンスをかわし、先制点を獲得したのは日本代表の高野蓮だった。
その後、アンソニー・ベロが3点奪い返し、さらにペアト・マウヴァカが試合初のトライを決め、逆転。わずか1分後、マティウ・トンギのブレークから、バプティスト・クイヨがゴールラインを割った。
後半では、タックルをかわし、アウトサイドのブレークからゴールラインを割ったクレモン・オーベニュがスコアボードに名を挙げた。
テビタ・タタフのトライで、日本代表は一時的に相手の攻撃を封鎖したが、フランス代表は即座に反撃に出た。途中出場のスクラムハーフ、アントワーヌ・デュポンがリスタートから直接ゴールラインを突破。押し返すことができないまま、日本代表はその後も3トライを許し、打倒を狙って臨んだ試合はやがて大敗に終わった。
フランス代表、クレモン・カステ選手のコメント
「それなりに上手くいったと思う。序盤は苦しかったけど強い守備で相手を抑えることができ、チームとしての団結力が良く、非常に良いパフォーマンスができたと思う。あと2トライぐらい決めれていれば最高だったと思う。結果には満足している」
日本代表、ファウルア・マキシ選手のコメント
「結果には満足していないが、良いスピリットでプレーをすることができたので、チームを誇らしく思う。下を向かす、次戦のアルゼンチン代表に向けて前に進む。今日の試合で欠けていた部分を修正することにつとめる」
日本代表、中竹竜二ヘッドコーチのコメント
「これまでにない小さなエラーが多く、そこを修正できなかった。やっている選手たちも手応えは相当感じていたと思うが、スモールエラーをどうチームとして修正していくというところではまだ力が足りなかった。
前半リードした後、しっかり守り切るあたりとか。連続でミスをしてしまうあたりとか。ゲーム全体のアンダースタンディングのところ」
プールC: 南アフリカ代表 13-19 アルゼンチン代表
無敗で2節目を終えたアルゼンチン代表は、大会史上初めて南アフリカ代表を下し、歴史的勝利の祝杯を挙げた。
南アフリカの反則が生み出したチャンスを、ドミンゴ・ミオッティが14点に結びつけ、アルゼンチンを準決勝進出に一歩近づけた。
互いにペナルティーゴールを決め、6−6で同点のまま前半が終了しようとしていた。ところが、南アフリカ代表のスクラムハーフをつとめるジェームズ・ホールがイエローカードをもらい、試合の行方が変わった。
攻撃を続けたロス・プミータスはTMO判断でトライを一本取り消されたが、華麗なラインで防衛を切り裂いたトマス・マラノスが、ゴールラインに走り込み、コンバージョンも決まり、アルゼンチンのリードでハーフタイムとなった。
後半では、南アフリカもトライを取り消され、その後もチャンスを逃さなかったアルゼンチンはペナルティーゴールを連続で決め、リードを広げた。
後半24分、反撃に出た南アフリカはモールからのトライとコンバージョンで点差を6点に縮めた。プールCで無敗の両チームが激闘を繰り広げるなか、試合の行方はどっちに転がってもおかしくなかった。
だが、流れをつかみ返した南アフリカ代表は、アーンスト・ヴァンリンをシンビンに失い、それと同時に逆転勝利の可能性は徐々に散り去った。
アルゼンチン代表、ニコラス・フェルナンデスロベヘッドコーチのコメント
「選手たちのプレーに満足している。思い通りのプレーができた。フランス戦ではセットピースに苦闘したが、今日は上手くいったので満足している。アルゼンチンはパッションが全てだ。今日はその情熱が勝敗を分けた。勝ち負け問わず、わたしたちの目標は変わらない。チームには、常に自信を持ってプレーし、パス回しをするよう伝えている。わたしにとっては、それがラグビーなのだ」
南アフリカ代表、ジェレミー・ワードキャプテンのコメント
「ディシプリンの欠如が目立った。20分14人でプレーしたことは、今日の試合で大きな代償になった。勝ちに来たのでがっかりしているが、アルゼンチンはパッションと良いプレーで、相手にとって正当な勝利だった」