6月7日(火)にキックオフした「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ2016」は、初日からハイテンポな試合で観衆を盛り上げた。開催国のイングランド代表、前王者のニュージーランド代表、そして強豪南アフリカ代表は1日目を勝利で終え、アイルランド代表とスコットランド代表も初日から番狂わせの勝利を飾った。
プールCでは、前半ハットトリックで活躍した日本代表のアタアタ・モエアキオラが南アフリカ代表を揺さぶった。ハーフタイムにデヴィー・セロンヘッドコーチがジュニア・スプリングボクスに厳しい言葉を掛け、南アフリカ代表は見事な回復を見せ、逆転勝利(59-19)を果たした。
ピンチを逃した南アフリカに対し、シックスネーションズでグランドスラム優勝を果たしたウェールズはアイルランドに敗れた。オーストラリアも同様に、スコットランドを相手に番狂わせの敗戦となった。
昨年の大会を制覇した強豪ニュージーランド代表は、計9トライを獲得し、ジョージア代表に55-0で圧勝した。一方、徐々にペースをつかんだ開催国のイングランドは、48-0でイタリアに快勝。
アルゼンチン代表も試合終了間際のトライ2本で、フランスを24-15で下し、初戦を白星で飾った。
プールA: ニュージーランド代表 55-0 ジョージア代表
前王者ニュージーランド代表は、前半2分で早くも初得点を挙げ、試合のペースを握りしめた。大会初参加のジョージアはバックラインのペースとハンドリングで苦しんだ。
スーパーラグビーのチーフスと今季を過ごし、ラグビー最高峰リーグの経験を持つフルバックのショーン・スティーブンソンがオープニングトライを獲得した。その数分後、ウィングのカレブ・マケネがゴールラインを破り、前半10分前からニュージーランドは積極的にトライを重ねた。
試合序盤のスクラムではジョージアも粘り強く押し返し、ペナルティーを2本勝ち取ったものの、サム・ノックとジョナ・ロウのトライを2本連続で許し、前半残り10分でニュージーランドは既にボーナスポイントを獲得していた。
その後、RWC2015 イングランド大会の優勝者、ボーデン・バレットの弟でもある、ジョーディー・バレットの華麗なキックからロウがトライに成功した。さらに、前半終了前にノックからのアシストでマケネがトライを決め、31-0というスコアでハーフタイムとなった。
ニュージーランドは後半も積極的に攻撃を続け、ロウとマンオブザマッチに選ばれたミッチェル・ジェイコブソンがゴールラインを割り、ベビー・ブラックスはスコアを追加した。
ジョージアも硬い守備で一時的に相手の攻撃を封鎖するものの、試合終了10分前にオタリ・ギオルガッゼがイエローカードで退場となり、ニュージーランド代表は途中出場のマロ・トゥイマとハパクキ・モアラリアバの攻撃でさらに点差を広げた。
トライスコーラーのミッチェル・ジェイコブソンは「みんなのパフォーマンスに満足している。ジョージアが熱心に攻撃してくることを予期していたので、この一週間はそれに対応する準備をしてきた」と話した。
プールA: ウェールズ代表 25-26 アイルランド代表
シックスネーションズでグランドスラム優勝を果たしたウェールズ代表は、第1戦の前半15分で17-0で先制し、本大会でも同じ勢いで白星を集める模様だった。
7分間で3トライを許したアイルランド代表はなかなか相手のテリトリーに入り込むことができなかった。だが、ビル・ジョンストンのドロップゴールが決まり、前半終了のホイッスルがなる前に2トライを収め、アイルランドは徐々にペースを上げた。
17-15と、アイルランドがウェールズを2点差に追い詰めた状態でハーフタイムを迎えた。後半では、試合時間残り30分でアイルランド代表が初めてリードを奪うことに成功したが、試合の行方はいずれにしても予想がつかなかった。
自信が増したアイルランドは強引な攻撃を押し続け、試合終了10分前にストックデールのトライでその努力は報われた。コンバージョンは決まらず、アイルランドは勝利を目掛けて全力を出しきった。
試合終了間際、ウェールズはトライを一本決めることに成功したが、タッチラインからのコンバージョンが決まらず、勝つにはさらにトライが一本必要だった。そのまま必要なトライを挙げることができず、アイルランドに惜敗したウェールズはボーナスポイントを2点獲得しながらも苦汁を飲むこととなった。一方、シックスネーションズでスコットランドに敗れたアイルランドは勝利を大いに祝った。
アイルランド代表、ナイジェル・キャロランヘッドコーチのコメント
「素晴らしい試合だった。序盤は相手に3トライを許してしまい、良いスタートだったとは言えない。17-3でリードされ、苦しい試合を待ち受けていたが、チームはよく切り替えてくれた。前半終了5分前にモールからトライを挙げ、時間が刻々と過ぎていくなか、ポゼッションをキープできたことは大きかった。そこからまた試合に入り込むことができ、前半が終了したときの勢いで後半開始からすぐに流れをつかんだ。相手にプレッシャーを上手くかけることができ、選手たちは落ち着いてた。ウェールズ代表は良いファイトを見せてくれた。わたしたちも最後まで懸命に戦い、重要な勝利を挙げることができた。」
ウェールズ代表、ジェーソン・ストレーンジヘッドコーチのコメント
「前半の25分間は素晴らしかった。素晴らしいプレーを見ることができ、全ては思い通りに進んでいた。しかし、前半25分過ぎからアイルランドが上手くボールをキープし始め、わたしたちはそれにイラついてしまい、ペナルティーを許した。そこから試合の流れは変わった。4トライを獲得しながらも負けることは非常に悔しいが、試合のなかで強いパフォーマンスが発揮できた場面も十分にあったので、次の試合で活かせれることはたくさんある。次戦を楽しみにしている。」
プールB: イングランド代表 48-10 イタリア代表
決勝進出を目指す開催国イングランド代表が臨んだ、対イタリア代表の初戦では、後半に5トライを収め、見事な勝利でマンチェスターシティスタジアムの観衆を熱狂させた。
前半では、イングランドのジョージ・ノットが先制点を挙げたが、イタリアのルカ・スペランディオが活気あるプレーでチャンスを作り、レオナルド・マンテッリのドロップゴールでイタリアもスコアボードに数字を並べた。
ラインアウトのミスから生まれたチャンスをハリー・マリンダーがつかみ、サム・アスプランドロビンソンにキックパスを送り見事、イングランド2本目のトライに繋げた。さらにペナルティーゴールを追加し、17-3と、イングランドのリードで前半が終了した。
ハーフタイム明け、気を取り直したイングランドは、ジョー・マーチャントが本戦チーム3本目のトライでスコアした。後半20分には、ペナルティーゴールも決まり、イングランドはボーナスポイントを獲得。その後、ジャック・シングルトンが4本目のトライを決め、ザック・マーサーもスコアボードに名をあげた。
だが、ノーサイドのホイッスルが鳴る1分前に、ロレンゾ・マッセッリがゴールラインを突破し、試合最後のトライはイタリアのものとなった。試合終了間際にトライを許したイングランド代表のマーティン・ハーグヘッドコーチは「80分間、最後までプレーし続けなければならない」とコメントした。
イングランド代表、マーティン・ハーグヘッドコーチのコメント
「攻撃力のあるラグビーができ、狙いどおりの意図的なプレーをすることができた。時には正確さに欠けていた。チームとして目指している基準があり、プレーをとおしてそれを表現したい。考えは正しかった、ただ正確さが足りなかった。でもそれは後から来るでしょう。今は土曜の試合に向けて体を休め、気持ちを切り替えなければならない。」
プールB: オーストラリア代表 10-15 スコットランド代表
試合開始早々、オーストラリア代表はシンビンに選手を一人失うも、最初の10分は無得点のまま過ぎた。前半21分、アダム・ヘイスティングズ(元スコットランド・ライオンズの伝説的選手、ガヴィン・ヘイスティングズの息子)がペナルティーゴールを決め、スコットランド代表が先制するものの、オーストラリアも押し返し、イザック・ロッダがディフェンスを豪快に崩し一本目のトライを決めた。
7-3とオーストラリアのアドバンテージでハーフタイムに入るものの、後半5分でマグネイが危険なタックルで2本目のイエローカードとなり、そのわずか2分後にスコットランドのザンダー・ファーガソンがトライを挙げ、逆転。
一人少ない状態でもオーストラリアはプレッシャーをかけ続け、マック・メーソンのペナルティーゴールで、試合時間残り20分でリードを奪い返す。だがスコットランドも粘り強く押し返し、ダーシー・グラハムが全力で疾走、オーストラリア代表ジェームズ・タットルキャプテンのタックルを振り払い、そのままゴールラインを突破。
新しく逆転しようと、攻撃を続けたオーストラリア代表は、サイモン・ケネルウェルがゴールラインを超え逆転に成功したようにも思えたが、テレビマッチオフィシャル(TMO)が、ゴール入りする前にタッチラインに触れていたことで、ノートライと判断された。スコットランドはノーサイドまで粘り、番狂わせの勝利で初日を終えた。
スコットランド代表のトライスコーラー、ファーガソンのコメント
「チームの相性が良い。みんなが同じ目標を目指して、同じ目的に向かって頑張っていることが特に最後の5分で明確だったと思う。スクラムの調子もよく、もちろんミスもいくつかあったが、みんなが努力をしていて、最後のスクラムが勝利に繋がった。大事なところで結果を残すことができた。」
オーストラリア代表ヘッドコーチ、アドリアン・トンプソンヘッドコーチのコメント
「今日のパフォーマンスにはがっかりしている。時には自滅的なプレーもした。ハンドリングエラーも多く、試合開始からテンポが遅かった。さらに、スコットランドのようなチームを相手に、一人少ない状態でプレーするのも決して望ましいシナリオではない。スコットランドの守備も良かった。今は切り替えて次のイタリア戦に集中したい。」
プールC: 南アフリカ代表 59-19 日本代表
昨年のRWC2015イングランド大会で南アフリカ代表を下し、大会最大の番狂わせをもたらした日本代表の勝利は、本戦でもファンと選手同様に脳裏を横切ったにちがいない。あの歴史的勝利を再現することができるのか。前半では、日本代表のアタアタ・モエアキオラがハットトリックを決め大活躍、南アフリカのファンに息をつかせなかった。
ジュニア・スプリングボクスのゼーン・デイビッズがオープニングトライを獲得し、試合序盤は南アフリカ代表の思い通りの試合になるようにも思えた。しかし、自陣22メートルライン内でターンオーバーを許すなど、南アフリカは日本を抑えるのに苦闘している様子だった。
だが、マンチェスターシティスタジアムの舞台で輝きを魅せたのは、日本代表のアタアタ・モエアキオラ選手だった。「アジアラグビーチャンピオンシップ2016」で日本代表デビューを果たしたモエアキオラは、ディフェンスを突破し、金井大雪からのクロスフィールドキックを見事なトライに繋げた。
アタアタ・モエアキオラはそこでは止まらなかった。わずか11分間でハットトリックを決め、前半31分には19-14というスコアで日本代表がリードしていた。会場の観衆が目を疑うなか、試合の流れは日本のものとなった。呆気にとられた南アフリカ代表は前半終了前に、JTジャクソンのトライで重要な追加点を挙げた。
しかし、RWC2015イングランド大会と同じ結末を許したくないジュニア・スプリングボクスは、ハーフタイム明けには一転していた。
ジェレミー・ワードキャプテンが2トライを挙げ、スコアは逆転。その後、暴れる南アフリカ選手を止めることができず、日本は連続でトライを許し、59-19と大敗を喫した。
南アフリカ代表、デヴィー・セロンヘッドコーチのコメント
「数ヶ月前の写真を見たせいか、前半では選手たちは緊張していた。熱心になりすぎた部分もあり、前半のスクラムは不調だった。少し落ち着く必要があった。ハーフタイム中はチームに厳しい言葉を掛けたら、後半からは正しいところに注意を払うようになっていた。後半では3、4回チャンスを作ったが、実行が悪く、得点に繋げることができなかった。ワールドカップでスコアするチャンスがあるときは、どうにかして得点に繋げなければならない。後半のパフォーマンスには非常に満足している。」
日本代表、中竹竜二ヘッドコーチのコメント
「今日の試合は、激しく、攻撃的に最初から仕掛けていくことを決めていた。前半は良い戦い方ができた。選手たちも自信を持ってプレーしていたが、後半でミスが続き、簡単に(得点を)取られてしまうことで相手に主導権を渡してしまった。このチームでは初めての試合だったので、まだまだ試合を修正する力が不足していると感じた。これからチーム一丸となって、さらなるレベルアップをして、フランス代表戦勝利に向けて良い準備をして頑張っていきたい。今試合の前半のような戦い方を後半も続けられるようにしたい」
プールC: フランス代表 15-24 アルゼンチン代表
AJ ベルスタジアムで行われたフランス代表対アルゼンチン代表戦の大半はフランスが有利な立場にあった。だが、試合終了8分前、ロス・プミータスが2トライ獲得し逆転勝利を果たした。
2016年チャンピオンシップの初得点を挙げたのは、ユースオリンピックゲームズにも出場したアルゼンチン代表のドミンゴ・ミオッティ選手だった。ハーフウェイラインからのペナルティーゴールで初得点を奪ったものの、本大会の初トライはフランスのものとなった。
前半10分、積極的な攻撃を続けていたアントワーヌ・ドュポンがチップキックでディフェンスをかわし、そのままボールを取り返してゴールラインを割った。コンバージョンはミスに終わったが、互いにペナルティーゴールを決め、8-6でフランスのリードでハーフタイム入りとなった。
時間が刻々と過ぎるなか、フランスはペナルティートライで点差を15-6に広げるが、アルゼンチンも粘り強く押し返し、ペナルティーゴールを2本決めた。終盤のプレッシャーは増す一方だった。
途中出場のラウタロ・バザンベレズがゴール入りし、わずか3分後に同じく途中出場のバウティスタ・スタビレブラビンがフランスの懸命なタックルを跳ね返しタッチダウン、ロス・プミータスは勝利を奪った。
アルゼンチン代表、ニコラス・フェルナンデスロベヘッドコーチのコメント
「前半では、スクラムで苦闘した。最後はラッキーだったのかもしれないが、フランスを倒そうと懸命に戦い、決断力とスキルを発揮した。選手たちは今日の勝利を誇りに思い、喜んでいる。少し休んだら、次は南アフリカ代表戦に向けての準備に取り組む。この大会で、前にも対戦したことのある相手です。向こうは日本代表を倒したばかりなので、自信を持って試合に臨むでしょう。」