「チームと日本ラグビーにとって、エディにとって、すごく大事な試合だった」
 10番でフル出場し、4本のキックすべてを成功させて9得点を挙げた日本代表HO李承信は、試合後に言った。
 日本代表で第2次体制のジョーンズヘッドコーチの下で2027年ラグビーワールドカップへ向けてチームづくりを開始した昨季、日本代表の戦績は5勝7敗。昨夏のパシフィックネーションズカップでは準優勝したが、イングランドやフランス、イタリアなど世界ランキングの上位陣との対戦には大差で敗れ、黒星が並んだ。
 2年目の今季、チームの底上げを念頭にU23代表で遠征を実施するなど若手育成にも注力。この日の試合にも先発したPR紙森陽太とパリオリンピック代表でもプレーしたWTB石田吉平の2人に加えて、リザーブに6人のノンキャップ選手を起用。成果と結果が欲しい一戦だった。
 日本は試合序盤からハンドリングエラーやペナルティが続いて攻撃のリズムを作れず、前半16分にFB松永拓朗のトライと李のコンバージョンで7-7と同点にしたが、直後に松永が負傷退場。代わりに入った中楠一期が前半20分にイエローカードを受けて数的不利になるなど苦戦した。
 ウェールズは前半4分のCTBベン・トーマスが先制トライ。7-7とされた直後の20分と22分には、ペナルティトライとWTBトム・ロジャースのトライで、19-7で前半を折り返した。
 だが、後半は違った流れになる。
 「後半はポゼッション主体に変えて、どんどん自分たちのテンポとスピードでアタックする形にした」と李。日本は暑さの中でも動きを落とさず、粘り強く積極的なプレーで疲れの見える相手にプレッシャーをかけた。
 後半19分には中楠がデビュー戦で初トライ。李のコンバージョンで14-19とすると、後半24分に李がPGを成功させて2点差。そして後半30分、後半途中出場で代表デビューとなったハラトア・ヴァイレアが、ゴール前のラックから持ち出して日本が逆転に成功。李が2点を加えてリポビタンDチャレンジカップ2025第1戦に24-19で勝利した。日本のウェールズとの通算対戦成績は2勝13敗となった。

2013年以来

日本のウェールズ戦勝利は、ジョーンズヘッドコーチ第1次政権当時の2013年6月以来。そこから2015年イングランド大会へチーム作りを進め、日本は本大会で南アフリカ代表に勝利する大番狂わせを演じた。
 「2013年のようになることを期待したい」と話していたジョーンズヘッドコーチはウェールズとの第1戦の後、「前後半で全く違う展開になった。前半はウェールズがテリトリーとポゼッションを保持していたが、後半は我々がそこを上げることができて、チャンスに仕留めることができた」と指摘した。
 ジョーンズヘッドコーチは、「とてもタフな試合だったが、若いチームはこういう試合に勝てたことで自信を深め、さらにハードワークをして成長できる」と述べて、神戸での第2戦を前に前半の落球の多さや後半のサポートの遅れなどを修正したいと話した。
 日本代表のリーチマイケル主将は、「後半、相手より走る自信があった。事前準備、練習の成果が出た。後半は日本らしいプレーができた」と胸を張った。
 日本とウェールズの第2戦は7月12日に神戸にて行われる。
 リーチ主将は、「日本代表は勝ち続けることが大事。反省点を修正して、しっかり勝ちたい」と言った。

ウェールズ、連敗ストップならず

ウェールズは2019年ラグビーワールドカップでキャンプ地だった北九州での一戦に臨んだが、前半はペナルティトライを含めて3トライを決めるなど優位に試合を運びながら、後半は無得点に抑えられて逆転負け。この結果、2023年10月ラグビーワールドカップから続く連敗は18となった。
 今年2月から暫定ヘッドコーチとして指揮を執るマット・シェラットは、「前半はよかったが、後半はセットピース、空中戦など重要な場面でボールを獲得できず、ディシプリンも良くなかった」と話し、「日本は良いチームで、後半の反撃も想定内だったが、ディフェンスが目立った」と話した。
 キャプテンのHOデヴィ・レイクは、「我々が試合をコントロールしている部分が多かったので、負けは非常に残念」と失望を隠さなかったが、「プレーの精度。22メートル内でのチャンスに精度を欠いたプレーで得点チャンスを逃していたので、そこは修正したい」と話し、第2戦での雪辱を期している。