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パシフィックネーションズカップ総括: 「ブリスベン・ドリームと不動の相棒」

9月19日に東京・秩父宮ラグビー場で行われたアサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ。決勝で日本はフィジーを20-15で下し、2019年以来7年ぶりに優勝を飾った。

ブリスベン・ドリーム

決勝のPOMに選ばれたのはFLベン・ガンター。後半18分にトライを決めただけでなく、15-15と同点の後半26分にはフィジーNO8エリア・ヴァーナカイヴァタを仰向けに倒すドミネートタックルを決めた。

195㌢120㌔のサイズはディフェンスでより輝きを増す。「エディーからは“自分の得意な部分を活かしてくれ”と言われています。自分の存在感はディフェンス」。これまでも抜かれたら終わり、という場面で咄嗟に相手を強くつかんでタッチラインの外に押し出す場面は何度もあった。盛り上がった上腕、分厚い胸板は、まるで日本の寺院で観る、邪鬼から人々を守る仁王像のようだ。

現在28歳。25キャップのガンターはタイのバンコクで生まれ、ブリスベンで育った。ラグビーを始めたのは、ブリスベンボーイズカレッジのときだ。卒業後は地元のレッズでのプレーを希望するも叶わず。日本に新天地を求め、群馬県にあったパナソニック ワイルドナイツのセレクションを受けた。だが連絡はしばらく来なかった。入団の知らせを受けたのは、プロ選手になる夢をあきらめてアーミーに入る数日前のことだった。

2016年、19歳で来日して日本のトップリーグに身を置いた。当初は身体も出来ておらず、ラインアウトで跳ぶ技術もなかった。彼をワイルドナイツに入れ日本代表として育てることを決めた飯島均GM(当時)は来日当初、帝京大学との練習試合に敗れ、ベンチで涙していた姿を憶えている。現在、フランカーとしてディフェンスブレイクが世界上位5㌫に入るトッププレーヤーとなったガンターの、それが出発点だった。

「オーストラリアにいたとき、私は何者でもなかった。日本が私にチャンスを与えてくれた。私の故郷は日本です」 

2023年に行われたW杯にも日本代表に選ばれたが、メンバーに入ることはなかった。来年の大会は育った地・オーストラリアだ。同じくブリスベン出身のバックロー・ジャック・コーネルセン、CTBディラン・ライリーら、埼玉パナソニックワイルドナイツで育った3人で「ブリスベン・ドリーム」を披露する。

「不動の相棒」に

パシフィックネーションズカップを終え、エディー・ジョーンズHCと日本代表のサポーターは、13番ディラン・ライリーとコンビを組む12番をようやく固定できそうなことに安堵している。南アで生まれ、オーストラリアで育ったディラン・ライリーはそのスピード、危機管理能力で日本代表BKに欠かせない。だがこれまでコンビを組む12番は定着せず、様々な選手が試された。その中で一気に頭角を現したのが、S東京ベイに所属する25歳の廣瀬雄也だ。

日本代表に選ばれたのは1年前。キャップはまだ10と若いが、今季のジャパンの初戦であるイタリア戦で大活躍。27-10で勝利を挙げる原動力となった。だが次のアイルランド戦で負傷し途中退場。リハビリを経て、パシフィックネーションズカップ初戦のアメリカ戦が復帰第1戦となった。試合は開始2分、ラインアウトからの連続攻撃で、最後は廣瀬が相手を強引にはねのけてインゴールに身を躍らせた。このトライを皮切りに日本代表は開始20分で連続4トライを奪い、63-14と大勝した。SH斎藤直人キャプテンは「最初の20分が出来すぎくらいに上手くいった。そのおかげ」と振り返った。その口火を切ったのが廣瀬だった。決勝のフィジー戦でも先発したが、前半32分に足を痛め退場。表彰式は松葉づえ姿で出席した。

廣瀬は福岡県出身。小学校1年生のとき、玄海ジュニアラグビークラブでラグビーを始めた。福岡は日本でもラグビーが盛んな地域。同クラブは2019年の日本開催のW杯で「ダブルフェラーリ」として名を挙げたWTB福岡堅樹さんも輩出している。父・友幸さんもリーグワン前身のトップリーグ時代、宗像サニックスブルースで活躍。ラグビーが身近にある環境で育った。

182㌢94㌔、ジュニア時代からスピードとフィジカルには定評があったが、ここにきて評価を高めたのがキックマネジメントだ。先のイタリア戦でも、廣瀬の長短のキックが有効的な役割を果たしていた。

「小さな頃からボールを蹴るのが大好きで、キックは自分の得意な部分。それをジャパンでどう活かすか、常にアタックコーチのグレン・ジャクソンと直人さんと話しています。ただFWを当てるだけでは消耗するので、どこで戦うか、後ろからキックを使ってコントロールしていきたい」

今日、キックマネジメントの重要性は増している。キックに長けた廣瀬が12番に入ることで、チームとしてアタックにバリエーションが増し、「伝家の宝刀」ライリーも威力を発揮できる。来年に向け、このコンビが習熟していくのを楽しみに待ちたい。

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