「率直に言って、こういう終わり方は残念」と、オンラインで取材に応じた大久保ヘッドコーチはそう言って無念さを滲ませた。

新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて3月中旬から中断している今季スーパーラグビーで、オーストラリアのチームだけで7月4日から実施が検討されている国内大会への参戦を希望していたサンウルブズだったが、願いは叶わず。スーパーラグビー最後のシーズンの終了とチームの終焉が決まり、選手たちには5月30日に事情説明が行われたという。

ハードルになったのは、感染防止策の一貫としてオーストラリアが設けている入国制限と、入国後の14日間ホテルの自室から出られない隔離期間で、現地入りできても、十分な練習ができない状況が見込まれた。

オンラインで会見したサンウルブズの渡瀬裕司CEOは、「参戦は現実的ではない」と判断したと説明した。

大久保ヘッドコーチは、「粘り強く交渉を続けてくれていた。厳しい交渉だったと思うが納得している」と話し、最終結論に理解を示した。

2018年、2019年にアシスタントコーチも務めた大久保ヘッドコーチは、「こういう結果になったことで、選手やチームの努力が否定されるものではない」と言及。

感染症の世界的流行で国際間の移動ができずに分断されている現状と、サンウルブズの多国性に触れて、「こんな状況でこそ、国境(国籍)を越えて一致団結して戦うサンウルブズのチームのアイデンティティは、もっと評価されていい」と言葉に力を込めた。

チームを率いた今季、試合を戦えたのは6試合。2月1日に福岡での開幕戦でレベルズに勝利を挙げた後は、3月14日のブリスベンでのクルセイダーズ戦まで5連敗と苦しい戦いだった。

だが、大久保ヘッドコーチは、開幕戦までの4週間を「今でも印象に残っている」と振り返り、短い準備期間にも関わらず、選手たちは「誰一人として時間がないとは言わず、チームが良くなるために努力してくれた」と振り返った。

チームのベースとなっていた千葉県市原市でのトレーニングでは、地元の消防署での訓練も行ったエピソードも披露。シーズン中断後は、選手がそれぞれの国に戻って待機を続ける間、オンライン合同トレーニングを実施して再開に備えていた。

想定外の展開となったが、元日本代表FLでトップリーグのサントリーで監督も務めた44歳の指揮官は、先週末のチームミーティングでは「2~3年一緒にやってきたチームのように感じた。選手には胸を張ってほしいと伝えた」と、チームへの思いを口にし、「個人的にはどんな形でも良いので、(サンウルブズの)名前を残してほしい」と語った。

ファンが作った「どこにもない応援カルチャー」

サンウルブズは、2019年ラグビーワールドカップに臨む日本代表の強化のために発足。準日本代表という位置づけで代表候補選手を起用しながら、南半球のトップチームとの連戦を繰り返すことで、選手たちは国際経験やチームとしての戦術理解を深めていった。トップレベルの国際経験を得る機会が少ない日本選手にとって、貴重な強化の場だった。

渡瀬CEOは、「まだまだ伸びしろのあるチームだったので、こういう形での終了は申し訳ない」としながらも、「2019年ラグビーワールドカップで日本代表が勝つための強化の器としてスーパーラグビーに参戦してきた。その役目は十分果たしたと思う」と評価。

さらに、「我々が想像する以上に多くの方がチーム応援してくれた。どこにもないサンウルブズの応援のカルチャーも作ってくれた」と、ファンの支援に感謝を示した。

一方、来季以降のチーム存続については、渡瀬CEOは「何も決まっていない」とし、これまでに得たファンの存在を認識した上で、日本ラグビー協会を中心に、競技普及の観点からも今後の在り方を検討する必要があるとする見方を披露した。

また、チーム活動の最後にファン感謝イベントを開催したい意向を明らかにし、新型コロナウィルスの感染状況を見ながら、オンラインを含めた実施を検討したいとした。

流選手、「自分の成長に欠かせない経験」

これまでサンウルブズでプレーした選手たちも、自身のSNSを通して次々とコメントを寄せた。

2018年に共同主将を務めた日本代表SH流大選手(サントリー)は、「サンウルブズは日本のラグビーにとって重要なもの」と、その存在意義について思いを綴った。

「スーパーラグビーでの経験は自分の成長に欠かせないものでした」と述べ、「移動は大変だったけど、いろんな国の文化に触れることができる。多国籍のメンバーと過ごすことでたくさんの思い出ができる。そんなところもサンウルブズの魅力」と指摘。そして、「また復活してほしい」という願いを書き添えた。

また、日本代表のNO8/FL姫野和樹選手(トヨタ自動車)も、「サンウルブズでプレーできたことが自分の自信につながり、成長できたと思っています」とコメント。「大好きなTEAM。たくさんの経験をありがとう」と述べた。

初年度から4シーズン連続で参加し、2017年には共同主将も務めた元日本代表CTB立川理道選手(クボタ)は、2016年4月23日の東京・秩父宮ラグビー場で行われたジャガーズ戦で試合終了間際に、チームをスーパーラグビー初勝利(36-28)に導く決定的なトライをマークした。

立川選手は、「スーパーラグビーでの経験は、自分の成長に欠かせないものでした、サンウルブズありがとうございました」とコメントを寄せた。