【東京・10月26日】ラグビーワールドカップ2019日本大会の準決勝で対戦するウェールズと南アフリカ。テストマッチの戦績では南アフリカに軍配が上がるが、ここ10年ほどはウェールズがスプリングボクスに対して初勝利を挙げるなど異なる様相を呈している。両者の過去の対決から熱戦となった4試合を振り返ってみよう。

1999年ウェールズ遠征(カーディフ・6月26日)

ウェールズ 29-19 南アフリカ

ウェールズが南アフリカに対して史上初めて勝利を手にした。当時、南アフリカは世界チャンピオン。しかもこのテストマッチは、その数か月後にワールドカップ決勝の舞台となったミレニアム・スタジアムの公式のオープニングイベントとして行われた。

まだ建設工事が終わっていなかったため、収容人数からするとかなり少ない2万9千人の観客と何人かの建設作業員が観戦を許された。ウェールズが南アフリカの首都プレトリアで96-13という屈辱的な敗戦を喫してからちょうど1年が経っていた。

マーク・テイラー(下の写真)が新スタジアムで初めてトライを決めたプレーヤーとして歴史に名を刻んだのだが、スタジアムのアナウンサーはアラン・べイトマンの名をコールした。センターとしてコンビを組んだこの2人は何と、お互いのジャージーを交換してこの試合に臨んだのだった

ウィングのガレス・トーマスが後半にトライを加え、現代表でスキルコーチを務めるニール・ジェンキンズがキックで19得点を挙げて歴史的勝利に貢献した。

「ピッチが完成したのは試合の直前だったと思うよ。だからその試合の前の最後の練習もきちんとできなかったんだ」とフッカーのギャリン・ジェンキンズは振り返る。「まだ桁(けた)の工事をやっていて、プラスチック製の赤いヘルメットをかぶらなければならなかったのを覚えている」

「チームにはインセンティブというか信念のようなものがあって、南半球のチームに対して『戦利品』が欲しかったんだ」

1906年にスウォンジーで両チームが初めて対戦して以来、このテストマッチまでの対戦成績はスプリングボクスの12戦11勝。残りの1試合は、1970年にカーディフでウェールズが6-6の引き分けに持ち込んだゲーム。

ミレニアム・スタジアムで歓喜の勝利を味わってから、ウェールズが南アフリカに対して2勝目を挙げたのは2014年のこと。それまで16連敗を喫することになる。

ワールドカップ2011年大会プールマッチ(ウェリントン・9月11日)

南アフリカ 17-16 ウェールズ

2011年のラグビーワールドカップの開幕戦で、プールDの首位通過を目指す南アフリカの目論見はもろくも崩れ去るかに思えた。

このウェリントンでのゲームは開始早々、前半3分にフルバックのフランス・ステインがトライを決めて南アフリカが先制する。しかし前半途中にジャン・デヴィリアスが、後半開始直後にはビクター・マットフィールドがそれぞれ負傷退場し、ピーター・デヴィリアス監督率いるスプリングボクスに動揺が走った。

主将を務めマン・オブ・ザ・マッチに輝いたサム・ウォーバートンにインスパイアーされたウェールズは、この試合でペナルティーゴール3本とコンバージョンゴールを1本成功させたジェームズ・フックの得点で6-10(ハーフタイム)の劣勢を巻き返す。

ウェールズの最大の見せ場は後半9分に訪れた。ジェイミー・ロバーツが相手ディフェンスをもろともしないパワフルな走りでインサイドセンターのタウルペ・ファレタウのトライをお膳立てしたのだ。

しかし、その当時のウェールズはどういうわけか16-10のリードを守り切れないゲームが多かった。最後の25分でガス欠が起きるのだ。

果たしてこの試合でも、スプリングボクスに逆転を許した。

南アフリカは、ペナルティーを得てもキックによるゴールを狙わず、ボールをタッチに蹴り出す。そしてフォワード陣が何フェーズかにわたって前進を繰り返しゴールラインに迫った後、スクラムハーフのフーリー・デュプレアが走り込んできたフランソワ・ホーハードにショートパスを送る。ブライアン・ハバナに代わって途中出場していたホーハードはそのままゴール下に飛び込んでトライを決めた。試合時間は残り15分を指していた。

ウェールズが番狂わせを起こすチャンスは残されてはいたが、右サイドのタッチラインから5メールほど入った位置からのペナルティーキックをフックが外すなど好機を逸し、南アフリカが逃げ切った。

ワールドカップ2015年大会準々決勝(トゥイッケナム・10月17日)

南アフリカ 23-19 ウェールズ

2011年大会で大接戦を演じた両チームにとって、その4年後のワールドカップでの再戦はことさら意味を持つものとなった。トゥイッケナムでの準々決勝という舞台設定も申し分なかった。

4年前と同様、イングランドのウェイン・バーンズがレフェリーとして笛を吹いた。そしてボクスとレッドドラゴンズは74分間、壮絶な死闘を繰り広げた末、最後はナンバー8のドウェイン・フェルミューレンが個人技でフーリー・デュプレアのトライを演出し決着をつけた。

このゲームは2つの異なるスタイルの対決となった。ボクスが強力なフォワード陣のパワーを前面に押し出す一方、ウェールズはボールキャリーを最大限活用し、相手ディフェンスをワイドに散らす戦術を展開した。

南アフリカのスタンドオフ、ハンドレ・ポラードが5本のペナルティーキックとドロップゴールを成功させたのに対し、ウェールズのスタンドオフ、ダン・ビガーも負けじとペナルティーゴールを3本、ドロップゴール、コンバージョンゴールをそれぞれ1本ずつ決めた。

ウェールズは終盤まで19-18のリードを保ってはいたものの、決定的な瞬間を作りだしたのは南アフリカだった。

スプリングボクスのスクラムがブラインドサイドに展開するべくスペースを作ると、フェルミューレンがスクラムハーフのロイド・ウィリアムズとウィングのアレックス・カスバートの注意を引き付け、バックフリップのパスを主将でスクラムハーフのデュプレアに送る。それを受けたデュプレアの勢いは、相手をかわしてインゴール左隅に飛び込むには十分なものだった。

「フーリー(デュプレア)にキスしたい気分だよ」とは、ハイネケ・メイヤー・ヘッドコーチの試合後の弁。

「コーチの役割は過大評価されている。際立ったキャラクターでなおかつプレッシャーに強い選手を選べばそれで十分だ。あのトライは、純粋に天才によってもたらされたものだよ」

2017年ウェールズ遠征(カーディフ・12月2日)

ウェールズ 24-22 南アフリカ

2015年のトゥイッケナムでのワールドカップ準々決勝は、両チームのテストマッチここ6試合で唯一、南アフリカが勝利を挙げたゲームとなっている。

近年の両チームの対戦は、接戦の末に僅差で勝負がつくことが多い。ここで紹介する2年前のゲームもスリリングな展開となったが、ウェールズが試合開始からペースをつかみ、南アフリカのディフェンスのミスも重なって前半30分までに21-3とリードした。

前日に居住条件を満たしてウェールズ代表の資格を得たばかりのニュージーランド生まれのセンター、ハドレー・パークス(写真)が2本のトライを決めてテストマッチデビューに花を添えた。

 スコット・ウィリアムズがウェールズのもう1本のトライを挙げた後、反撃に転じたスプリングボクスが後半に19点を連取し逆転に成功。ウォーリック・ゲラント、ハンドレ・ポラード、ジェシー・クリエルがトライを奪った。

しかし、フルバックのリー・ハーフペニーが後半24分にペナルティーゴールで決勝点を奪い、ウェールズは痺れる展開の末に勝利をものにした。

「結婚式の日以外にあんなにナーバスになったのは初めてだった」とパークスは試合を振り返る。

「(ピッチに向かう)トンネルの中でアンセムを口ずさんだ時ほど緊張したことはなかった。リース(パッチェル)が1行1行歌うのを録音して、それから彼が全部歌うのを録音した。そんな風にして覚えたんだ」

パークスは、27日のワールドカップ日本大会準決勝のスターティングラインアップに名を連ねている。

 RNS ig/am/ajr/sw/mi